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裏表のない服は “神業” で支えられている!?│裏表のない服 メーカーインタビュー vol.1

コンプレックスに悩むのはやめにして、みんなが笑顔で暮らせる社会をめざしたい!そんな想いから生まれた、オールライト研究所のプロジェクト第1弾「裏表のない世界」。

ここまでモニターインタビュープランナーインタビューをお届けしてきましたが、今回はメーカーインタビューを2回に渡りお届けしていきます。

トップバッターは、裏表のないポケットTシャツダブルガーゼパンツを担当した繊維商社の岡田さんと田中さん。さて、今回も普段は聞けないような裏表のない話をお届けします。

左:田中さん、右:岡田さん

岡田さん(繊維商社/営業)
プランナーに生地や新製品を提案したり、プランナーからの要望を社内デザイナーや工場に伝えるなど、コミュニケーション全般を担当。入社10年目。

田中さん(繊維商社/デザイナー)
岡田さんからバトンを受け取り、プランナーと二人三脚でファッションアイテムを形にしていくデザイン担当。

パンツで作っちゃうんだ

ー 裏表のない服に限らず、普段からプランナー「はな」とお仕事をされているとのことですが、いつもどのように役割分担されているのでしょうか?

岡田)いつもは、基本的にプランナーの「はな」さんから企画のご依頼をいただいて、僕の方でまず素材を選定・提案させていただいています。素材決定以降のデザインまわりは、田中にバトンタッチする流れですね。その後は、はなさんと田中でやりとりしてもらう、というのが簡単な役割分担です。

ー 裏表のない服を作るという話を聞いた時に、お二人はどんな印象を受けましたか?

岡田)そうですね、どういう意図なのかな?と。まず、理解するのにちょっと時間がかかったかなという感じです。基本は、お洋服はもちろん生地にも裏表があるので、工場にも「こっちが表で、こっちが裏」というように指示して作っているので、その概念がバーンと崩れましたね(笑)。

田中)あと、リバーシブルはよくあるんですけど、「裏表が全くない?どういうことなんだろ?」という疑問はありましたね。

裏表前後のないポケットTシャツとダブルガーゼパンツの着用写真 ©︎felissimo

ー 工場の方にはどのようにお伝えしたのでしょうか?

田中)あえて最初はコンセプトを伝えずに、手探りな感じで。まずは「表裏がなく、前後もない」という仕様を伝えました。工場さんは素直に「はい、分かりました!」という感じで取り組んでくれました。

ボトムスで裏表がないというのは特にレアなケースなので、「パンツでやっちゃうの?」というのは現場で疑問が生まれていた可能性は高いと思います。

裏表前後のないダブルガーゼパンツ ©︎felissimo

ー なぜ「パンツでやっちゃうの?」と感じたのでしょうか?

田中)そもそも世の中にリバーシブルのパンツってなかなかないな、という印象があって。仮にあったとしても、結構シンプルなパンツになるのかなと思うんです。でも、今回作ったパンツは大きなポケットが両脇にパーンとアクセントとして付いていて、それを裏にした時にどうなるの?という想像が生まれそうで。

裏にした時にもポケットがちゃんと同じ場所に付いているので、ポケットを縫い合わせる時に結構難しいんですよね。表のステッチが裏には出ないようにとか、出てもおしゃれステッチ風に見えるようにするとか、技術的なことなんですけど。パンツは企画としても実験的だったのでは?

はな)そうですね、今回は全てが実験的でした(笑)。

ポケットの縫い付けが神業!

ー 最終的にポケットの仕様はどう着地したのでしょう?

田中)ポケットは表裏両側の全く同じ場所に配置しているんですけど、同時にミシンをかけられるベストポジションにしてあるんです。そうすることで、片方のポケットを縫い付ける時にもう片方に縫い目が出ないようにしました。

具体的には裏側のポケットのサイズを何mmかだけ変えて、縫い目が目立たないように工夫しています。一見ダブルステッチのようで、実は逆側(裏側)のポケットの縫い目なんですよね(笑)。工場でミシンを踏む方は、テクニックが必要だと思います。

一見ダブルステッチのように見える縫い目

ー 神業ですね!

岡田)ぶっちゃけると、実は製品としての不良率が高くなっちゃうのかなと思いますね。

田中)それが、今まさに製品が出来上がってきているんですけど、すごく綺麗に仕上がってきているそうですよ。うちの生産管理の担当者から聞きました。

一同)おお〜!

岡田)よかった!

はな)よかった〜!

田中)シンプルなんですけど、凝った縫製テクニックが必要なので心配していたんですけど、Tシャツも含めてすごく綺麗に出来ているそうです。昨日ちょうど聞きました。

ー ひと安心ですね〜、よかったです。ポケットの他にも、特徴的な試みはありますか?

田中)股の部分でしか生地を継いでないのも特徴ですね。縫い目を減らすことで裏表がよりなくなり、心地よさもアップさせています。一般的には、前後の布を股の部分と脚の外側で継ぐところを、股の部分だけで継ぐように作っているんです。時間がかかるので、その分コストもかかる仕様になってますね

一般的には前後の布を股の部分と脚の外側で継ぐが(左)、今回のパンツは股の部分だけで継ぐように作っている(外側に継ぎ目がない)(右)

ー そういった仕様は、他にはどんなボトムスで採用されるのでしょうか?

田中)例えば、高級なボトムス等の布はくラインのものづくりで、縫い代をなくすために股の部分だけで継がれていることがあります。なので、今回のようにカジュアルデザインのボトムスで、しかもダブルガーゼという素材でこの仕様は珍しくて、実験的だと思いますね。すごくケアされているというか、特別感を感じます。

できるだけストレスフリーにするために

ー 実は珍しい組み合わせなんですね。生地の選定そのものはどうでしたか?

岡田)これまでプランナーの「はな」さんとお仕事させてもらってきた経験の中から、二人で「あの生地なら行けるんじゃないか」「こっちはダメだな」と考えた結果たどり着いたのがこの生地なんです。どっちも綿100%なので、合繊・化繊のように敏感肌の方でもちくちくするようなことはないと思います。一番の基準は、表と裏で大差がないかどうかでした。

プランナーインタビューではTシャツの折り伏せ縫いが山場だったと聞いたのですが。

はな)最初の方のサンプルではオーバーロック(縫い代の切れ端をかがり始末する環縫いの一種)を外側に見せて着る仕様にしていて、肩の継ぎ目とかを折り伏せ縫いするのは難しかったという話ですね。

田中)脇には折り伏せ縫いすることが多いんですけど、肩のような短い距離ではあまりすることがなかったんですよね。折り伏せ縫いは特殊なミシンで行うんですけど、この短い距離でかけるのはこだわりの高級ラインの仕様です。

さらに、肩は折り伏せ縫いしながら襟元をくるっと巻いてあるんですけど、この部分の縫い代もできるだけ減らしてノンストレスでいきたいねと言う話を「はな」さんとしてたんです。どうしても襟元は縫い代が重なる部分なので。今触ってみて、そんなにストレスには感じないですよね?

ー 一度試着させてもらったのですが、襟元は全く気にならなかったですね。まさかそんなに手がかかっている部分だとは思いませんでした。

田中)それはよかったです!襟元には、5枚程縫い代の生地が重なって縫い付けられているんですけど、それを1枚でも減らしたいねと言う話をしていたので。でも、こればっかりは物理的に仕方ありませんでした。こういう細かいところでも苦労しましたね。

ひとつの素材から、たくさんの意味を生み出せる

ー このプロジェクトについて社内で反響はありましたか?

岡田)納期管理の担当者にコンセプトを話した時は「え、どう言うこと?」と言う反応でした(笑)。でも製品に同梱するカードやWEBサイトを見て、ああこういう世界観なんだ、すごいなと。みんな喜んでいましたね。

同梱カード

田中)正直お洒落でびっくりしました(笑)。やっぱり物だけ作っていたときは手探りというか、裏表前後がないっていうのが何となく掴みづらかったんですけど、WEBページや校正紙を見た時は本当にびっくりで。

岡田)どうしても介護・福祉とかの制服をイメージしてしまうと言うか。

田中)そう、もうちょっと作業的な表現のページになるのかなって思っていたので。「お、こうきたか!」「おしゃれ!」って。すごく表現がうまいなと、アイキャッチも強いし。ハンディキャップがあるなし関係なく見入ってしまう校正上がりで、反響がいいとお聞きした時はやっぱりなと思いました。きっと工場の方もこのカードを見て納得したんじゃないかなと(笑)

はな)何度もサンプルをあげていただいて、本当にありがとうございました!涙

ー このプロジェクトに携わって、ちょっと考え方が変わったところはありますか?

田中)今回の裏表のない服は、素材はよくあるコットン(Tシャツ)とダブルガーゼ(パンツ)だけど、製品としての意味は色々あるというか......素材はひとつでも、そこからたくさんの意味合いが生まれるんだなと感じました。

お洒落なパンツだけど、股上がすごく深いから前後どちらで着てもおかしくないとか、そういった発想を今回の企画で新たに得られたなと思います。Tシャツのポケットの位置もそうですけど、発想をひとつ変えるだけでボーダーレスに着れる物を作れるんだ、と思えるきっかけになりました。

岡田)みんながボーダーレスに着れるお洋服というのは、これまで着目してなかった部分なので......正直ビジネスチャンスでもあるとも感じております。営業としては(笑)

ー なるほど、持続性の面でもビジネス視点は欠かせないですよね。今回もすごく興味深いお話をたくさん伺えました!本日はありがとうございました。

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