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清丸さんインタビュー「言葉と歌詞作り」

みんな幼い頃は自分の感覚を信じて生きているのに、無意識のままにその自信をなくしていってしまう。他人の目や大人の考えを感じ取る力があればあるほど、いわゆる常識みたいなものが体の中に浸透して、自分だけの感覚が鈍っていってしまうんだと思う。
そこをなくさずに、またなくした部分は思い出したりして、上手に自分の感覚を音楽や言葉に使っている清丸さんが、どういったことを意識して生活しているのか、また感覚型の清丸さんがどんなものに影響を受けているのか、今回は特に気になった彼の特別な言葉の考え方を中心に質問をしました。

具体的には、清丸さんの言葉の捉え方や比喩が上手な理由、歌詞づくりの考え方や軽い状態に体を持っていくための心がけなど、聞いています。

(以下、K=清丸さん、H=私(文中はーちゃん))

得てして、ライト。
繰り返される言葉の中の新種生物。

H:清丸さんが自分の感覚を言葉にするときに、私の選ばないところから言葉を持ってくるなとか、比喩が上手だなってよく思うんだけど、どういうものから影響を受けたとかある?

K:いろいろありそうなんだけど、一つは、言葉遣いでハッとする瞬間が小さい頃からあって。習慣じゃん言葉って。
だから慣れていて留まらず流れてしまう言葉がある一方で、不意にフックのある知らない言い回しが出てきたときの、わ!って新種の知らない生物に出会った感じにどきっとする。

この間のインタビューでも話したんだけど、小学生のときに走っちゃいけない廊下を走っていて、用務員のおじさんに「そうやって急いでいる時は得てして怪我をしやすいからね」と言われてさ。得てして、得てして…とはって。その瞬間に立ち止まってしまうほど惹きつけられているわけではないけれど、なんか残る。

初めて野球チームの練習に参加した時に「じゃあお前ライトな」と言われて、ライト、ライト…って立ち止まって、「あっちだよ、あっち」って言われたり。
全然知らない使われ方に出会った時のワクワクする感じ。
あとは、漫画ドラえもんののび太が男の子なのに「かしら」を使うとか、ゆいさんが「だけど」を「だけれど」って言う、そういう表現とか。

広げると言葉だけではないんだけど、毎日繰り返される同じものと、繰り返しがあるからこそその中で引き立つ異物。そのコントラストにわくっとくる。

H:じゃあ言葉以外でも、日々の中で違和感のあるものに出会った時に、グッと心に残って覚えていたりするんだ。それを自分で取り込んで使ってみたりとか。

K:そうそうそう。あとさ、千枝子さん(舞さん唯さんの母)がさ、Allrightのバザーの時に持ってきた寄木細工みたいなのを俺が崩しちゃって、それを一生懸命直してたら、「オホホ」って言いながら「もう無手勝流ね。」って。ムテカツリュウ、、!笑

H:笑

K:あと例え話とかは、何故かわからないんだけど、、人に上手に説明してなるほど!って言ってもらいたいっていう欲望がずっとあって。

H:へえ〜

K:だから、自分にね頭の中でずーっと説明してんのよ。

H:それは自分が楽しかったことを共有したいとかそういう気持ちからってこと?

K:人が今わからないって言っていることをこういうことなんです!って説明して、あ〜なるほどって言わせたい。ああそういう感じねって言う着地が気持ちいい。

H:不思議、、な人。笑

K:確かにコーヒーを入れるときの中に入れる水の流れがなるべく一定であることと、電気楽器のための電力がなるべくノイズなく一定で出力されている方が良いってことは同じだ…って。
そういう類似を見出すのが面白い。なんだ、全部一緒じゃんって思う時がすごい、、

H:そっか。笑  自分の知らない世界でも、根底で通じている部分を見出すと一気に身近になるもんね。

歌詞づくりの言語感覚

H:ちなみにそういう言葉の考え方は歌詞を考えるときと同じ思考?それとも歌詞はまた別の回路があったりするの?

K:近いかも、、かなりつながっているかも、しれない。
あんまり意識したことなかったけど、
でも今歌詞かけるなってテンションのときは一番軽い気持ちのときで。
なんか今いい感じの会話の場になっているなってときも軽い感じ。自分も言葉を挟んでいくことが躊躇なく、それが大きな邪魔になるでもなく。なんとなくみんなが居心地よくしている。
ちょっとシリアスな話題だとそうはならないじゃない、ちょっと言葉に詰まっちゃったりして。
歌詞を書くときは大体ひとりだけど、同じように詰まってるときは、細かいところにフォーカスしすぎて言葉にまとまらない、何か、小さすぎて。
そこに頭がいっちゃってる時は、歌う言葉としては何も出てこなくて。
ま、なんでもいいんだけどねってときの方が実は筆が進んだりする。
そういう時と、軽く喋れている時の、言語感覚は一緒…!

さっきさ、はーちゃんが台所で「洗うマンになるぞ」って言ったときも、
俺が「洗ウーマンだ」って言い直したじゃん。(※ランチ後)
あれ!あれが俺の中での歌詞づくり。
ただ言葉をおもちゃとしてさ、はーちゃんは女性だからウーマンが適応できて、洗うと。。笑

H:それを大真面目に解説しているのが面白いね。笑

K:仕上がりの品質は置いておいて、ああいうときにああいいぞいいぞって思う。笑

軽い状態に持っていくのに

H:あとはさ、体のバイオリズムとかもあるしさ、すごい歌詞を書かないといけないのに、体的にはそういう調子ではない、でも心だけでも持っていかないといけない場合もあると思うんだけど。
そういう時に、心身のベストな時まで全くやらない!ってして待つのか、
でもどうしても今日やっておかないとって時は、、その軽い状態を作るのに何かやったりすることはある…?

K:う〜ん、最近は、まずいっこは散歩かな。ほんとに歌詞に詰まっている時はずーっと歩いてて、3時間くらい歩いちゃうこともあるくらい。
あともういっこは風呂。

H:そういう時はずーっと考えるの?それともなるべく取り払って空に近いの状態にするの?

K:それはそん時そん時に寄って波があるから、それに合わせて。
全部忘れた方がいいなって時は、お風呂入りながらひたすら漫画読んだり、
宇宙を考えたり、なるべく忘れようとしてそうしようとしてる時もあるけれど、そのうち、お!って時にテキストアプリを開いて、とりあえずメモしてみたり。
なんか、最近の感覚だと、歌詞作りとかは特にそうで、常にはい!って出せたら一番いいけど、コンディションによってそうじゃない時は何かが詰まっちゃってる。詰まっちゃってるものを一気にポコンと抜くのはしんどいから、少しずつ砕いて、もうこれは最終的に歌詞に使わないだろってワードも一旦出しておいてってして。
でも、そういうコンディションの時は、砕いた詰まりをまた流すまですごく時間がかかるんだよね。けど、その時間って絶対時間じゃなくて。12時間必要ですってよりは、ギュって縮める手段がある。少し寝て次の日の朝の気分で書いてみるとか。そうやって日が経ったことにするために、時間を圧縮?するみたいな。

ちょっと出して、切り替えて、別のこと考えて、違う自分でちょっと出して。っていう往復をずっとやっていると、なんだか行けるかもってなる。

昨年は、トーゴーの日までに、5曲分くらいささっと歌詞を書かないといけなくて、もう無理だよ〜って思ってたけど、もう明後日だぞってなったら、とりあえず一言だけでも追加しとこうみたいな。あとで使わなくてもいいから。でも大枠ではそれを達成したい、今日無理だ〜って思っても、やっぱり明後日までには達成したい、から、そのせめぎ合い。

…なんの話ししてたんだっけ。笑

H:言葉の話から、歌詞を書くのに軽い状態を作るのは〜って話。笑
ね、でもみんなきっと悩んでることだよね。

K:うん、これが戦いかなって思っているところもあって。
もう一個突き抜けちゃうと、本当に動物みたいになっちゃうかもしれない。
みんな大なり小なり戦ってるんじゃないかな。

H:確かに。逆にいつでも作れます、生み出せます、っていうビンビンの状態の人は、何かを失ってそうだよね。

K:片岡鶴太郎とか?笑

H:そう、そういう感じ。人里から遠く離れたところに住んでいそうだもん。笑


(松浦葉月)

次回へつづく。かも。

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