見出し画像

マリ=アントワネットゆかりの地ヴァーチャル・ツアー~鹿島先生のヴェルサイユ講義の補助線として~

第3回 コンシェルジュリ、ドゥボーヴ・エ・ガレ

仏文学者の鹿島茂先生がコロナ禍で旅行ができない人のために「スペシャルオンラインサマースクール「三代の王とヴェルサイユの名花」を開催しました。
2020年8月29日の第3回の講義のテーマは「ヴェルサイユとルイ十六世とマリ=アントワネット」。先生の講義の補助線として、ゆかりの地をご紹介するこのエッセイ、今回はマリ=アントワネットゆかりの地として、彼女の最後の地、コンシェルジュリを紹介。今年1月まで開催された特別展には『ベルばら』も登場していました。また日本で味わえるマリ=アントワネットゆかりのショコラティエもご紹介します。

★コンシェルジュリ

コンシエルジュリはマリ=アントワネットが最後の時を過ごした監獄で、現在は博物館となっています。
このコンシェルジュリで2019年から2020年にかけて『マリ=アントワネット~イメージのメタモルフォーゼ~』という展覧会が開催されました。
展覧会は終了しましたが、公式サイトには展覧会の模様がアップされています。今回はこの展覧会をご紹介していきます。
(公式サイトはフランス語)

この展覧会はマダム・フィガロのサイトにも紹介されています。

展覧会を紹介する前に、マリ=アントワネットのイメージについて一言。
フランスでは、マリ=アントワネットは「浪費で国家を破綻させた」王妃として見られています。今でも、浪費家を形容する言葉として「マリ=アントワネットのようだ」ということも。最近では、「黄色いベスト運動」の参加者が、マクロン大統領夫人ブリジットの派手さを非難する言葉として「マリ=アントワネット」を使っています。
もっともフランスでも階層や支持する政党などによりマリ=アントワネット観が変わるのも事実。映画『マリー・アントワネットに別れを告げて』の原作者シャンタル・トマ(1945年生)はインタビューで、自身はカトリック系の私学で教育を受けたので、マリ=アントワネットは悲劇の王妃という見方をしていたが、公立学校に通っていた同世代はマリ=アントワネットについて厳しい見方をしていた」と語っています。なお、フランスの王党派の人々(今でもフランスに存在するのです!)はマリ=アントワネットを支持しています。

一方、フランス以外では、マリ=アントワネットは20世紀末よりフィクションの主人公として脚光を浴びていきます。日本で『ベルサイユのばら』の連載が開始されのが1972年。英国の作家アントニア・フレーザーの『マリー・アントワネット』が発表されたのが2005年。フレーザーの原作を元にしたソフィア・コッポラの同名のアメリカ映画の公開が2006年。美人でおしゃれなファッション・アイコンとしてのマリ=アントワネットのイメージがフランス以外で定着していきます。

コンシェルジュリの『マリ=アントワネット~イメージのメタモルフォーゼ~』は、このような異なったイメージを持つマリ=アントワネットの「イメージ」を展示したもの。展覧会のキュレーターのアントワーヌ・ド・ベックは映画史の教授。

展示されたのはマリ=アントワネットの同時代の画家ヴィジェ=ルブラン作の肖像画に始まり、『ベルサイユのばら』の名場面や映画『マリー・アントワネット』、『マリー・アントワネットに別れを告げて』の衣装の展示が行われました。このほか、ディオールのオートクチュール・コレクションや、マドンナの『Vogue』のミュージック・ビデオも紹介。

画像2

※ヴィジェ=ルブラン作 『宮廷衣装を着たマリ=アントワネット』(1778年)Kunsthistorisches Museum / Public domain

※マリ=アントワネットをモチーフにした衣装で歌うマドンナ

コンシェルジュリの展覧会を紹介するウェブサイトでは、池田理代子先生が2011年にヴェルサイユに招かれ、ご自身の声楽コンサートを行った模様の動画も紹介されています。ヴェルサイユ観光を盛り上げた功労者として、池田先生の評価は非常に高い(動画の説明はフランス語)。

なお、この展覧会は終了しましたが、コンシェルジュリはマリ=アントワネットの収監時の展示が常設されており、一見の価値があります。

★ドゥボーヴ・エ・ガレ

ヴァーチャル・ツアーの最後は、日本で楽しめるマリ=アントワネットゆかりの味。パリ最古のショコラティエ『ドゥボーヴ・エ・ガレ』の支店が日本橋三越にあります。オンラインショップもあり、全国に配送可能。

ドゥボーヴ・エ・ガレは、ルイ十六世の王室薬剤師だったドゥボーヴが、革命後店を開いたパリ最古のショコラティエ。店を開く前、ドゥボーヴは薬剤師時代にマリ=アントワネットに薬を包むためにチョコレートを渡しており、王妃はそのチョコレートを「ピストル(金貨の意味)」と命名。ピストルは今でもドゥボーヴ・エ・ガレの代表的商品となっています。

一定年齢以上のフランス人、特にパリっ子にとってドゥボーヴ・エ・ガレは羊羹の虎屋のような、重厚な老舗のイメージのようです。ちゃんとしたプレゼントにはドゥボーヴ・エ・ガレという人も少なくありません。パリの本店は地味で落ち着いた店構えです。

画像1

Reinhardhauke / CC BY-SA (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)

※トップの写真はコンシェルジュリ クレジット:Beckstet/Architecture

★おわりに

ALL REVIEWSのオンラインスクールはシリーズ化される、ということです。「ALL REVIEWS 友の会」会員は会員価格で視聴が可能ですので、これを期に是非ご入会ください!

【記事を書いた人】くるくる

【「ALL REVIEWS 友の会」とは】
書評アーカイブサイトALL REVIEWSのファンクラブ。「進みながら強くなる」を合言葉に、右肩下がりの出版業界を「書評を切り口にしてどう盛り上げていけるか」を考えて行動したり(しなかったり)する、ゆるい集まりです。
入会すると、日本を代表する書評家、鹿島茂さんと豊崎由美さんのお二人がパーソナリティーをつとめる、書評YouTube番組を視聴できます。
友の会会員同士の交流は、FacebookグループやSlackで、また、Twitter/noteで、会員有志が読書好きにうれしい情報を日々発信しています。
友の会会員の立案企画として「書評家と行く書店ツアー」、フランスのコミック<バンド・デシネ>をテーマとしたレアなトークイベントや、関西エリアでの出張イベント等が、続々と実現しています。リアルでの交流スペースの創出や、出版の構想も。
本が読まれない時代を嘆くだけではダメだと思う方、ぜひご参加ください。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?