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生きていれば、また会える。

覚悟を込めて、書き残します。




先日、友人が亡くなった。

この島で知り合い、お互いIターンで、お互い変わり者で、僕にとって心から気の許せる、かけがえのない友人だった。
  
  

 

第一報は、上司からの電話。

「〇〇くんが亡くなった。」

まず、理解が出来なかった。

"海に溺れた?"
"車とぶつかった?"

そんなことが頭を過った。

上司が次に言い放った言葉は、

「死因は、自殺。」

。。。。。

本当によくわからなくなった。

日本語は理解できるんだけど、言ってることがわからなかった。

"なんで?どういうこと?"

たくさんの疑問があって、動悸が激しくなるのがわかった。



この電話を受ける2日間前、僕と彼は朝から2人で一緒に過ごしていた。

毎度お馴染みの、彼のガイドする島の歴史見学ツアーをするためだ。
彼は島の歴史にとても博識で、その解説も面白かった。
ある時にその才能に気がついた僕が「〇〇さんがガイドで、歴史見学ツアーやりましょうよ!」と声をかけたことで、僕と彼とは仲を深めていった。

そのツアーは、第5回目だった。

いつも通りの彼だった。いつも通りお互いの話を適当に話して聞いて
「この会話、昭和のいるこいるの漫才みたいですねぇ。」と言って一緒に笑った。

昼食を食べながら、彼は僕の仕事の相談に乗ってくれた。

夜は一緒に上司のお宅へ伺い、夕食を頂いた。

その夕食の時も、みんなで仕事や趣味の話をして、楽しく時間が過ぎていった。

はずだった。

しかし、その2日後の朝に、変わり果てた彼が発見される。



電話で、上司から「その日の様子はおかしくなかったか?」「気になること話してなかったか?」と聞かれた。

「わからなかったです。」
「いつも通りだった気がします。」
そんなことを返答したと思う。

電話を受けた日は、1日中、何がなんだかよくわからなくて、ずっとフワフワした感覚だった。

結局、遺書は見つからなかったらしい。



次の日、彼は地域のお寺で一晩過ごすこととなり、お通夜が行われた。

僕は、お焼香をあげた。

そこで、

あの日以来ぶりに、彼の顔を見た。

人形みたいに綺麗な顔をしていて、

ただ眠ってるみたいで、

全然リアルじゃなかった。

もうこの世にはいないなんて、

全く信じられなかった。


何秒か見つめていたら、

「人形みたいな彼」が

「もう戻らない彼」だと、

心が理解した。

その瞬間。

悲しみが一気に押し寄せてきて、

涙が、

出てきた。

声を上げて、

涙を流した。

涙が、

止められなかった。

お通夜の最中、そんなことを繰り返した。


最後に、彼のお父さんと話した。

〇〇さんから借りていた短刀を返したら、

「大丈夫です。あげます。」と言ってくれて、

「形見にします。」と言って僕は受け取った。



彼が最後に港へ向かう時、霊柩車で送られた。

霊柩車には棺桶を止めておくストッパーみたいなものが付いていて、それは手で押さえながらロックをかけなくちゃいけない。

僕は"霊柩車の使い方"を覚えてしまった。

そんな”霊柩車の使い方”なんて、

彼から教えてもらいたくなかった。



彼は、

なんで何も言わなかったのだろう?

なんで何も言えなかったのだろう?

なんでそれを選んだのだろうか?

なんでそれを選ばなくちゃいけなかったのだろうか?

今となっては、彼以外誰にもわからない。

でも彼は、またひとつ教えてくれた。

自殺は"してはいけないこと"なんだ。



きっと、

生きたいから、死を選ぶ。

真っ当に生きたいと強く願うから、

耐え難くなるぐらい苦しくなる。

だから、

誰よりも真面目で、

誰よりも思いやりのある彼は、

死を選んだのだ。

自殺は、なんで"してはいけないこと"なのか。

周りの人が悲しむから?

それはもちろんそうだけど、本人からすれば、

「周りが悲しむから」を押し付けられるのは、違う気がする。

本人の方が、きっと苦しんでる。



それでも死を選ぼうとしている人に、僕は何を伝えることができるのか?


死は、終わりを意味する。

もう、なにも無くなる。

幸せを分かち合うことも、

悲しみを分かち合うことも。

一緒に笑い合うことも。


命は、生きるためにあって、

生きるのは、選ぶためだ。

生きていれば、選ぶことができる。



明日、着ていく服を選べる。

明日、食べるご飯を選べる。

明日、仕事に行くか、辞めるかを選べる。

明日、好きな人に告白するか、諦めるかを選べる。

明日、誰に会うかを選べる。




生きていれば、また選べる。

それが、生きる価値なんだと信じたい。


"選べる自由があって、選んでいける人がいる"
 
そんな”世の中”がいいよなぁ。



だって、



生きていれば、また会えるから。

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