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走れアラフォー 承


あくる日アラフォは再び嫁ヌンに頼んだ。
おっきい輪っかをギューって引っ張ったり押し込んだりする
偉大な遊戯会社が精魂込めてこしらえた電脳遊戯で運動をするやつだった。

嫁ヌンはブルブルの思い出が脳裏をよぎったが、しかし、ほくそ笑んだ。
アラフォはオタクである。嫁ヌンもオタクである。
遊戯にかこつければアラフォも継続してやると見たのだ。

かくして嫁ヌンはかの遊戯をポチった。
アラフォは喜び勇んで都度思い出しては輪っかを
ギューっとかグイーッとかしてキャッキャしていた。
やがてその輪っかはインテリアとなった。

嫁ヌンは尋ねた。
何故輪っかをインテリアにするのかと。
偉大な遊戯会社の作品であると嬉々としてやっていたではないかと。

アラフォは確かに賞賛していた。
故に告白した。アラフォは接客業に従事する身にありながら本質は
コミュ症のオタクであり、起動する毎にお姉さんと行われるやりとりが
辛い、と。

早よやらせろや、という空想上の悪いパリピみたいな思いと
反面、ストレッチは入念にやらないと取り返しがつかないのではという
思いが相反すると。

その後も嫁ヌンはベンケーの勧進帳かよと言わんばかりの

饒舌でもっともらしい口上を聞いた。
このまま文字通りの立ち往生させてやろうか。蝋人形にしてやろうか。

嫁ヌンはカマクラから世紀の末に至るまで葛藤をしたが、アラフォの
口上にも一分の理はありと見て今は令和の時代だと言い聞かせた。

週1でも効果がある故、都度やっていこうと。

噛んで含んで伝えた。
アラフォは今までの饒舌ぶりがマジベンケーの憑依だったのかと思わせる程の生返事だったが、了承した。

以来、輪っかが通電された記録は無い。
古戦場のつるぎの如く自宅の居間に座すのみとなった。


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