著作権を侵害されても著者の方が注意喚起を受ける件について ~はじめに~
私は今年、デビューして25年目を迎える占い師です。
タロット占いを主な占術にしています。
知名度はありませんが、25年間占いの仕事だけに専念し、生計を立ててきました。
ここ数ヶ月、私が作ったコンテンツが無断で引用され、SNS上に公開されたり、販売される事が続きました。
その一部を私がXで引用リポストしたことで多くの方から関心を寄せていただくことになり、その後の経緯をお知らせする責任を感じ、これを書いています。
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先に、私のコンテンツについて説明をさせてください。
無断で引用され、勝手に切り売りされているコンテンツの制作と公開に、どれほどの労力と費用がかかっているか、具体的に記したいと思います。
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誕生日で占うタロット
誕生日で知るあなたの運命『バースデータロット』
・『バースデータロット』は「誕生日で占うタロット」です。
まだネット上に無料の占いコンテンツが少なかった2003年からウェブ公開しています。
【構成】
[バースデータロット]・・・基本的なキャラクター
[ライフタロット]・・・人生のテーマ
[相性占い]・・・444通りの相性占い
[イヤータロット]・・・1年間の運勢を占う
・タロットカードと数字を関連づける計算法はゲマトリアに関する洋書の付録(古書)に紹介されていたものを用いています。
秘伝カモワン・タロットにも、同じ計算法が紹介されています。
・コンテンツの占いと文章、タロットカードのイラストはすべて自分で書いています。
・サイトはブログを改造したもので、素材を配布して下さっている方からテンプレートをお借りし、デザインと記事のアップロード、運営を自分で行っています。
(ウェブデザインを本職にしている知人にサイト作成の見積もりを依頼したところ、かかる費用が200万円を超えていたので外注を諦めました。
料金はページ毎にかかり、当コンテンツは500ページを超えているので妥当な金額でした。)
・誕生日を入力する自動計算機はランサーズのエンジニアに依頼して3点で合計5万円ほどでプログラムを作成していただき、タグの貼りつけは自分でしています。
リターンが一切ないものに高額な費用をかけることが出来なかったので、自分でやるしかありませんでした。
イラストを描くのは子供の頃以来でしたし、ブログの改造も簡易なHTMLやCSSとはいえプログラムの知識ゼロで、すべて手探りで一つ一つ調べながら、時には有料のサポートを受けて辿りついています。
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『バースデータロット』書籍化
サイト『バースデータロット』公開から3年後、某大手出版社の方とご縁をいただき、「面白いので書籍化しましょう」と言っていただきました。
“ 新月に願い事をリストアップし、願いを叶える習慣を日本に広めた本 ”の企画編集をなさった方です。
この頃ブームだった精神世界の本はページ数が多い方が売れていた(だから、あえて行間を空けてページ数を増やしていた)と教えてくださり、当時の『バースデータロット』のテキスト量を3倍のボリュームにすること、「魂の~」といった流行りのスピリチュアルな項目を加えることをご提案いただきました。
「バースデーで占うタロット(仮題)」を『バースデータロット』と命名して下さったのも、この編集者様です。
(誕生日で占うタロットを「バースデータロット」としてネット上に発信したのは、私が最初だと思います。)
この方の所属する出版社の初版は10万部(※2006年当時)からで、私のような無名の占い師の本を出版するリスクは大きく、書籍化は成りませんでした。
でも、この方のお陰で18年前には現在の『バースデータロット』が完成していたのです。
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ほんの10年前まで、インターネットのコンテンツはパソコンでしか見られないものがほとんどでした。
スマホが普及してデジタルコンテンツが充実し、電子書籍が成功した今では考えられないことですが、パソコンがなければ紙媒体からしか情報を得られなかったのです。
もっと多くの方に『バースデータロット』を楽しんでいただき、タロットカードに親しむきっかけになって欲しいと願い、書籍化の為に奔走しました。
この事は、前述の編集者様が『バースデータロット』に書籍化する価値を認めて下さったことが大きく影響しています。
心理学関係の出版社に勤める友人にも相談しましたが、取扱うジャンルが違うと書店に流通しないこと、仮に確実に数万部売れる本だとしても、重版がかかる見込みがなければ出版に至らないことを教えてもらいました。
(10年前は出版業界の仕組みを個人では知りようがありませんでした。)
出版プロデュースの業者さんと契約しても音信不通になったり、出版のためだと言われて怪しいメイドカフェで「占いは売らない」というタイトルでイベントをやらされたり、トラブルもありました。
今では話のネタですが、出版への道はむしろ遠のくばかりでした。
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オンデマンド出版との出会い
それから数年後、オンデマンド印刷による比較的安価な自費出版のサービスが普及し始めました。
その先駆けだったカクワークス社に問い合わせると、当時、図版の挿入は1ページ1点につき別途5千円かかる規定でした。
300ページ近いボリューム(ページ数ごとに費用が嵩む)に加え、図版ありきの『バースデータロット』は、かかる費用を考えると見積もっていただく意味すらないとお断りしましたが、「良い本なら売れるし、うちも売れる本を作りたいので」とおっしゃって下さり、凝ったページレイアウトを特別に組んでいただき、2013年に書籍『バースデータロット』を刊行させていただくことになりました。
特例として制作していただいた為、かかった費用については記載しませんが、私自身が費用をお支払いしている「自費出版の本」です。
中身も校正を10万円ほどで外注し、友人に巻末の早見表のチェックを手伝って貰った完全手作りの本です。
有難いことに約10年間、1ヶ月に1冊も売れなかったことは一度もなく(書籍販売に携わる方なら、これでも当たり前ではないことをご理解いただけると思います)、オンデマンド印刷にしたことで印税は通常の書籍より多くいただいていました。
もし出版社を通していたら、1年経たずに裁断の憂き目に遭っていたと思います(売れない本はそうなります)。
「誕生日で占うタロットを多くの方に楽しんで欲しい」という願いが叶い、10年も流通させることが出来たので、今ではオンデマンド出版を選択して正解だったと思っています。
巻末の早見表が2024年の誕生日までだったので、2023年12月をもって約10年間の刊行を終了しました。
現在は書籍特典だった項目もすべてサイトで公開しています。
また、今では一般的になったアドセンス広告を貼ることで、僅かではありますが報酬を得ています。
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商標登録の必要性
書籍化にあたり、心配なことがありました。
もし、他の方が『バースデータロット』を商標登録して書籍を出版した場合、私が出版の差し止めをしなければならなくなることです。
10年前は個人で商標を取得するのはハードルが高く、弁理士さんの依頼料は相場で15~20万円ほどでした。
特許庁からご紹介いただいて無料相談をいくつか受けましたが、『バースデータロット』という言葉は商標のオリジナリティとしての識別力が足りず、文字商標の登録を受けるのは難しいことが分かりました。
その頃、『バースデータロット』はTwitter(現X)の「トレンド」にあたる人気ワードを計測するbotで何度もピックアップされ、既に「本物のバースデータロットはここだけ!」と主張する模倣サイトが存在していたので、コンテンツを守るための苦肉の策として、図版つきの商標を2区分で登録することにしました。
商標の出願費用は6万円ほど(私は2回出願しているので倍かかっています)、2区分で10年間の商標登録料として56400円を支払っています。
[第16類] タロット占いの本
[第45類] タロット占い
図版と併せて権利が認められる商標ですが、サイトのトップページに貼り、「商標登録しています」の言葉を添えることで、少しは効力を発揮することを期待しました。
けれど、今でもバースデータロットを売りにする商業サイトはいくつか存在しており、私のした事はすべて無意味だったことを痛感しています。
Xの投稿で「見る度にバースデータロットの解説が違うので統一して欲しい」という声をたびたび目にします。
同じ計算法とバースデータロットという名称を用いて、内容が異なるものを発信している人がいても、私にはどうすることも出来ません。
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図版つきで商標登録することをご提案下さった弁理士さんからは、「文字を音読みすることでも効力を発揮するので、他の人が同じタイトルで書籍を出版することは出来ない」と伺っていました。
つい先日、そのことを特許庁の相談窓口で確認すると「さぁ、そうとは言い切れません」と言われました。
一方で「以前はオリジナルの造語として認められなくても、時間が経過しているので、もう一度出願すれば審査が通る可能性はある」とアドバイスをいただきました。
私は過去4人の弁理士さんと面談していますが、おっしゃることはそれぞれ違っていました。
そもそも、私が商標登録しようと思ったのは、私の活動をよく知る弁理士の知人から「バースデータロットを商標登録した方がいい」と薦めていただいたからです。
それで、商標登録が出来ると思い込んでいたのです。 ちなみに、その弁理士さんの専門は化学でした。
商標の審査も担当する人によって判断が異なると言われているように、弁理士さんといっても専門分野は様々なので、見解が異なることもあるのです。
今年に入り、後述するコンテンツを無断引用された件があり、改めて、占いの商標権に詳しい弁理士さんにご相談しましたが、最初に審査が通らなかった時と同じ理由で『バースデータロット』を文字のみで商標登録できる可能性は低いというご回答をいただいています。
アイディアも名称も、私に独占する権利はありません。
けれど、それを安易に用いる人がいて、私がお伝えしたかったのとは違う『バースデータロット』を広めておられることには、残念な気持ちにしかなりません。
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