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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:風響の守護者と見習い賢者の妹 第十三話 リリアーナのお婿さん

前話

「急げ。ずぶ濡れになると風邪を引く!」
 単純明快な理由でレオポルトは洞窟にたどり着く。
「やばかった。あれ以上濡れると困る」
「何が困るの?」
 どうしてレオポルトが困るかわかっているユレーネが聞く。
「男の都合! さっさと服を乾かせろ!」
「王様になったら途端に偉そうになるんだから。ローレライ、リリアーナ。奥に行くわよ」
「はぁい」
 リリアーナはローブにアイシャードの魔法がかかっていて濡れるどころか小さな虹を発生させていた。
「とことん、リリアーナに甘いな。アイシャードは」
「ローレライをもらい受ける身としては痛い言葉だな」
 ニコが言う。
「いや、あのジジィはリリアーナに一目惚れしている。遅かれ早かれ弟子になっていたさ。あの才能があればな」
「まぁ、今は小姑か」
「俺には、な」
 渋い顔で言うレオポルトにニコは笑う。
「ユレーネ様には素直だからなぁ。兄特有のものじゃないか?」
「思春期なんだ。多少は目をつぶるさ」
 ニコと男同士の会話をしているとリリアーナの声がする。
「リリアーナ。戻ってきて言え。にいちゃんはそっちに行けない!」
 するとシルフィを中くらいの雲にしてリリアーナが誰かを連れてきた。
「男の子が倒れてた。熱があるみたい。シルフィが治すって言ってるけれどいいの?」
 リリアーナには判断しかねる所だった。勝手に動けば痛い目に合う。妹にとことんあまい兄がそうするとは思わないが、一行の責任者は兄である。一応声はかける。
「シルフィができるならさせておけ。ついでにこれを飲ませろ。アイシャードの治癒魔法が入った水だ」
 ぽん、と水筒を投げる。おっとっと、とリリアーナは受け取るとまたユレーネ達のいる奥に進む。
「シルフィが治せるとは、な……」
「レオ。まさか……」
 ゼフィリス王か、とニコ言外に言う。
「わからん。たまたま体質が合っただけかもしれない。当分様子を見るさ。この先は南の神殿への一本道だ。あの子がどうするかで自ずとわかる」
 二人が水分を飛ばしながら話していると奥から少年の叫び声が聞こえてきた。レオポルトとニコが飛び出す。
 目が覚めた少年はリリアーナにひっついていた。シルフィを見ておびえている。
「熱は下がったのか?」
 シスコンの兄が不機嫌そうに言う。そっとユレーネが少年とリリアーナを引き剥がす。
「く、雲が……!!」
 それしか言わない。妖精に会ったことがないのだろうか。他所の国には魔法も何もかもない国があるという。そんな国の出身なのか? 一人で熱にうかされていたところを見ると一人旅のようだが。
「シルフィよ。熱を下げて上げるって言ってるのに、いいの?」
 ぶんぶん、と首を縦に振る。本当にシルフィにおびえている。こんな少年がゼフィリス王ではないか、とレオポルトは思う。
「リリアーナ。水筒の水を飲ませろ。それで大丈夫だ」
「はぁい。どうぞ」
「あ。ありがとう」
 若夫婦のやりとりを見てるようでなんだか初々しい。それまたレオポルトにはシャクだが、病人に無体なことはできない。
「名前は?」
「セイレン、と言います」
「俺はレオ。そっちが妹のリリアーナに妻のユレーネ。それからコイツが悪友のニコでそちらの銀糸の女性がニコの未来の妻だ」
「ちょっと。レオ。自分だけ名前省略してどうするのよ」
 ユレーネが突っ込むが、愛称がわからない。すでに名前が愛称化している。ニコはニコラスの略称のようでそうでない。しっかり名前がニコなのだ。それをどう変えろと? 偽名を考えておけば良かった、とレオポルトは思う。
「名前がわかっただけでいい。この先の南の遺跡を目指しているのか?」
「ええ、まぁ」
 はぐらかすように答えるが、この先は南の遺跡しかない。ごまかしようがないのはセイレンもわかっているのだ。
「俺達も一緒だ。ある方を追いかけてはいるが、もう別の方角に向かったかもしれない。一応行くだけ行くが、一緒に行くか? 一人旅は難しいだろう」
「それはそうなのですが……」
「セイレン、一緒に行こうー。リリアーナ。セイレンのお嫁さんになる!」
「リリアーナ!」
 リリアーナ以外の人間の叫びにも近い声が一斉に上がったのだった。


あとがき
はい。主に、恋愛してもらうのはセイレンとリリアーナです。ですが、レオ共々三人に共通する自己探求やアイデンティティーの問題も関わっています。そこがメインです。シリアスでは。あとはラブコメになれば。ユングの自己探求やアニマアニムスの問題がついて回ります。これをどう処理するべきかというところです。
で、この「風響の守護者と見習い賢者の妹」は現在25話まで書けています。今日も執筆予定。この副作用が治まったら書きます。漢検もしな。
クスリ効いてくれると嬉しいなぁ。で、閑話休題。恋愛は大人組は終わっているので少年少女の初々しいのを目指します。と言ってももう悪の親玉でましたが。想定外の出来事ありまして。セイレンの出身がわかっちゃったという。でも、なんだかんだと無視しているような。ゼフィリスよりセイレンがなじんじゃって。みんなセイレンと呼ぶと思います。折角決めた名前が使われない。よくある事です。アデーレ主役の話もやっと決まりました。それはまた頭がスッキリしてから。今、ぼーっと副作用が出ています。考えられない。既存は続きで書けますが。
というところで、今日もここまで読んで下さってありがとうございました。

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