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【再掲連載小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(33)再編集版

前話

 数日して、運転のできるお父様がウルガーと大神官様を送ってまたフローラお姉様達がやってきた。アウグストお兄様はいない。
「ウルガーの手伝いをするって聞かないの。そのまま、車に乗せられて・・・」
「ああ。お姉様。一人じゃないわ。ここにはクラーラやアイリたちの薬もあるから大丈夫よ」
「そんなもの、いつ・・・」
 用意周到な私にお姉様がびっくりする。
「お姉様とお兄様が、あつーい別れを惜しんでる間にね」
「もう。この子ったら」
 泣き笑いの顔でお姉様が抱きつく。その肩越しにマティアスお兄様が悔しげにしていた。
「マティアスお兄様」
「なんだ」
「ここの警備の統括をお願いします」
「ほんと、この組み合わせはちゃっかりしてるな。向こうでも言われたよ。ゼルマを守れないと胃に石を詰めこむ手術をする、てな」
「まぁ。ウルガーったら」
「離れていても熱々なのは私達以上ね」
 エーヴィーお姉様が言う。
「お姉様、でいいのね? エーヴィーお姉様」
「ええ」
 その微笑みに戻ってすぐに婚礼が行われたのだ、とわかったのだった。
 新たな闘いが始まった。

最初にかかったのはクラーラだった。予想通りだ。インフルエンザは子供がかかりやすい。そこで、脱水症状を緩和する、点滴や生理食塩水の作り方を聞いていなかったことに気づいた。大慌てする私にお母様がなだめる。
「この国にはお風呂部屋がある事を忘れたのですか? 体温計もあります。点滴もこの国の医療の高さからはもちろんありますよ」
「でも。ここには看護師さんが・・・」
「あなたの中では看護師というのね。フローラも私も習った覚えがあります。なんとかなりますよ。伊達にウルガーの医術書を読んでませんよ」
 それでも不安は残る。子供の血管は細い、それを点滴できる人が本当にいるの?
「大丈夫。実技はヴァルトがしますよ。あなたのお父様も医術の道に進もうとしていたのです。ウルガーはその影響も受けているんですよ」
 お母様のしっかりした段取りに腰の力が抜けた。へなへなと床に座る。
「ゼルマ!」
 お母様が驚く。
「ちょっと、安心して腰の力が抜けただけです。そうですね。ここは医術が発達しているからおいで、ってウルガーに言われたのだったわ」
「ああ。あなたの世界はもっと進んでいたのね。それには及ばないけれど、かなりの医術は出来ます。ウルガー達がこのときのために点滴の分も用意しておいたと言っていたわ。あなたは聞いてないの?」
「それどころじゃなくて。頭がパンデミックで一杯になってました」
「パ・・・?」
「ああ。大流行の事です。きっと今頃、手洗いやうがいの習慣のない人達に伝染しています。マスクすらなかったんだもの」
「そうね。この国は風邪になることが少ないからマスクは新しい道具ね。これからはもっといいものを作るようにしますから、安心しなさい。クラーラはフローラに看させましょう。納得がいきませんからね」
「そうね。ママが側にいると子供は安心しますから。でもアイリはどうするのですか?」
「エーヴィーが見るそうよ。辛いかもしれないけれど」
「ええ。でも跡継ぎはいらないって言ってました。だから、きっとエーヴィーお姉様も安心して嫁げたのでしょう」
「あなたは聡い子ね。そうして世界を見ていると疲れないかしら?」
「疲れますけれど、いつもこうしてウルガーと乗り越えてきました。きっとまた乗り越えられます」
「あの子の悪い癖ね。自分ができることは相手も出来ると考えるところが。あなたはもっと楽に生きなさい。こんなに根を詰めてれば倒れますよ」
「はい。今日は、これで部屋に戻ります」
「ゼルマ」
 部屋に戻りかけるとお母様が声をかける。振り向くとお母様が抱きしめていた。
「大丈夫。みんな生きてますよ」
「はい」
 小さく頷いた私だった。

クラーラの高熱が下がり始めた頃、フローラお姉様も熱が上がってきた。感染したのね。私は、看病を代わることを申し出た。ところが、メンバー全員に反対された。ネギ背負ったカモですか、とまでお母様に言われた。そりゃ、私の死が相手さんの狙いなのだもの。私は一番みんなから離れた部屋に押し込まれた。アイリ達の事はわからない。アーダとエルノーが世話をしてくれる。この二人も世話役として隔離されていた。
「姫様。皆様どうしてますでしょうかしらねぇ」
 イーロの持ってきてくれたリンゴの様な果実の皮をむきながらアーダが言う。
「そうねぇ、みんなが感染していないといいけれど・・・」
 そこへ木の宮の表に派手なエンジン音が響いた。
「ウルガー?」
「最新の車のようですね」
「じゃ、ウルガーだわ」
 私は宮を飛び出る。アーダもエルノーも後に続く。外へ出られず、三人とも不満がたまっていた。迎えに出るぐらいいいでしょう?
「ウルガー!」
 車から降りてきたウルガーの首に抱きつく。
「ゼルマ。危ないよ。今日は下の弟を連れてきた。ワクチンは打ってある」
「ワクチンできたの?」
 希望の顔で聞くけれど、ウルガーは目を伏せがちだ。
「王宮でこの双子の母親が亡くなった。それでそこから抗体を取り出して作った。半年かかると言われていたけれどなんとかなったよ。今、量産しようとしてる。で、この双子を預かって欲しいんだ。母が亡くなったことをまだ理解してない。子供過ぎて」
 まぁ、と言って私は背の低い義理の弟達を見た。まだ、幼すぎて何が起こったか解っていない。
「タピオとクルヴァだ。これから君にもワクチンを打つ。抗体が出来るまで二週間ほどかかるらしい。その間は宮にいてくれ」
 悲しげな表情のウルガーをそっと抱きしめる。
「二人のお母様はきっとウルガーにとって大事な人だったのね」
「側室にしてくれと王宮に押しかけ女房した側室の方だ。まだ若かった。父もまったく相手にしないわけにはいかないと一度きりの夜伽で子を授かった。父は、エリーサを看取ったよ。薬が間に合えば良かったんだけど」
「ウルガー。あなたのせいじゃないわ。私の代わりに亡くなられたの。そんなに悲しまないで」
「そうだね。そんなに悲しんでちゃ、前に進めないね」
 うつむきがちだった顔が上がると強い光を宿したウルガーだった。
「ウルガー!」
 そこへお母様がやって来た。
「母上。ワクチンができました。早速かかってない人間から打ちます」
「そう。タピオとクルヴァは、そう、なのね。陛下に一目惚れして押しかけ女房になったあのエリーサが・・・。タピオ、クルヴァ、こちらにいらっしゃい。お菓子がありますよ」
「お菓子があるの? 大お母様」
「お菓子、お菓子~」
 二人の無邪気な声が悲しみを呼ぶ。お母様は二人を我が子のように見つめ手を握って消えていった。
「さぁ。ゼルマからワクチンだよ」
「注射いやー。お父様にしてもらいたいわ」
「この俺の腕を疑ったね。うんと痛いワクチンにするよ?」
「それだけはやめてー」
「はいはい。アーダとエルノーもね。今過ごしている宮でするから、ソコへ連れて行って」
「あ。ええ。ちょうど果物を食べていたの。リンゴのようなリンゴじゃない果物よ」
「それ、ここにあるの? ワクチンのお代それでいいよ」
「ちょっと恋人からお金徴収するつもり? それにお財布はあなたとお母様が管理しているわよ」
「そうだった。華の宮の経費で落とそう」
「どこかの狸ジジィみたいな事言わないで。税金よ」
「と、そこ。痴話げんかするんじゃないですよ」
 とっくに離れていたお母様が顔だけ出して言う。
「お母様の能力は破壊的ね」
「ああ」

 この親にしてこの子あり。

 いつか言った言葉を思い出した時だった。


あとがき

二日ぶりの更新です。遅れてすみません。イレギュラーな事が多すぎて。かといって寝込んでる場合ではなく……。自ら動かないと解決しない事ばかりで。ついでに機種変したら他社変えになって恐ろしく安い値段でグーグルさんを手に入れたのでした。Xperiaはなかった。で、今日も給料日で振り分けにあたふた。家に入れるお金やらネイル代とか。と。そう髪を染めたりし始めたのでネイルもちょっと。近くにあるのでやってみます。維持できるかは不明。染も黒髪戻しにしてカットだけにしていくかもしれません。ネイルは続けられそう。そしてこのお話、人物がどんどん増えて、最新話でさらに一人侯爵令嬢が増えました。キーとなるかもしれませんがとんでもない伏線をぶっこんでしまいました。どーするんだー。と。頭を痛めています。それに、漢検をまとみにする月がやってきます。明日から週末朝活と言わず、毎日漢字をします。その合間に執筆や更新です。朝活はどうなるかわかりません。ただ、薬の加減で楽になるかどうなるかがまだ不明。金銭を取るか面倒をとるかです。毎日絶飲食して飲んでいる薬か週一の注射か。痛いところです。今日は家電量販店のポイントをもらえるチケットが紛失しずっと探してやっと見つけたらもう気力がなくなり、やっと今やってます。今日は大奥。結構好きだけど視聴率悪いらしい。あれぐらいでないとみてられない。今、再放送しているのは怖い。さて、執筆か漢字かします。時間はまだある。

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