【新連載・ロマンス・ファンタジー小説】あなただけを見つめている……。 第一部 クロスロード 第七話 四重奏
前話
步夢は朝食の席で腕に額を乗せて居眠っていた。むにゃむにゃと寝言を発している。
「あの状態ならそんなにこまめにミルクをやらんでもいいのに、律儀にきっかり一、二時間おきにミルクやるんだからな。そろそろ離乳食じゃないのか?」
当騎が步夢の髪を撫でながら当騎は言う。その視線は優しい。
「り、離乳食?!」
突然、步夢が顔を上げた。当騎の顎に激突する。
「いてー。気をつけて頭上げろ。脳細胞がなくなるだろうが!」
「ごめん。日史! ちきちゃん離乳食なの??」
「どっちも必要だよ。だけど、ミルクの回数は減らしてあげてもいいかもね。步夢も寝不足でしょ? 今日は優衣と智也に任せて当騎に倉を案内してあげれば?」
「倉? なんで……」
と言いかけて思い当たる。あの宝玉と武具を返すときだ。当主の役目としてそれを母から引き継いだ。昔少ししか見たことないけれど、しっかり記憶にある古いモノ達。
「わかったわ。優衣。智也。ちーちゃんお願いね。って当騎! 納豆食べた手で触らないで!!」
「今日はこれからだ」
「それも却下。納豆食べたかったら離れ行ってよ」
「ひどいなー。納豆は体にいいんだぞ」
「頭だろ。当騎」
智也が面白げに笑う。
「智也が笑った」
步夢と優衣が手を取り合って喜ぶ。
「何。そんなに僕が笑うと変なの?」
「いいえ。天使よ。天から使わされた清い使者よ」
「じゃ、もうすぐ、僕は天に帰らないとね」
その言葉に優衣はぎくり、とした。
「何言ってんの。智也は当騎をぼこぼこにしてでないとダメよ」
「ぼこぼこって」
何やら道が脱線しそうなので日史がただす。
「食べたら倉行っておいで」
「はーい」
ショートカットでボーイッシュな装いの步夢が立ち上がる。
「お前飯」
「いらない。さ。行こ。当騎」
步夢が手を差し伸べる。反射的に当騎はその手を取っていた。それぐらい、手を差し出し、取り、歩く人生だった。毎回。それが現れていた。二人が出て行くと優衣が千輝を抱き上げてきて智也に言う。
「私に乗り換えませんこと?」
「優衣……」
「初恋、の相手ですのよ。智也は。姉様にはもう当騎がいる。智也は私のモノ」
そう言って肩に額を乗せる。
「……それも、いいかもね。優衣」
「複雑だね。今世も」
日史が言う。それぞれの思いが交錯する。さしずめそれは四重奏のようだった。
*
「こっちよ」
步夢はどんどん森の中へ入っていく。春にはサクラが満開でさぞかし綺麗だろう。こんな森の中をよくデートしていた事を思い出す。
「思い出に浸ってる場合じゃないわよ。気をつけて。熊でるから」
「熊……」
この大都会となった吉野にこんな森が残ってることすら奇跡なのに熊までいるとは。
薄暗い獣道を歩いてたどり着いたところには古びた倉がでーん、とそびえ立っていた。步夢が何事かつぶやく。手が戸に触れるとすっと開いた。
「さすが姫巫女」
昔は巫女が主体で巫女姫と言っていたが、いつの間にか姫巫女になっていた。どっちでも同じようなもんだ。
「入るわよ。毒蜘蛛にお着付け遊ばせ」
毒蜘蛛でぞっとしたが、そういえば誰か毒蜘蛛担当が居たようなと考える。そのうち足を取られて転げそうになる。それをニヤニヤして見ている步夢。
「こっちよ」
奥に奥にと進んでいく。何重にも扉を通り抜けて開けた部屋には、ずらり、と鎧が並んでいた。
「これが、俺の……」
青い武具に触れるとそれはシュッと宝珠になって当騎の手に収まった。
「空の戦士が戻ったわ。日史もだけど、まだ承諾していないの。だから水の武具はここにあるわ。ただ、一体、大地の武具が見つからないの。あるとき土の風に巻き込まれて消え去ったと古文書に書かれただけで、存在が確認できないのよ」
「あいつが……」
ふっと、頼もしい仲間の一人の顔が脳裏に浮かんだ。
「私は彼の地に導かれたんじゃないかしら、って思っているわ。そこに彼はいる。名前は覚えていないけれど懐かしい人だわ。私が泣いて困らせたことがある人……」
「なに?! 泣かされたのか?」
「勝手に私が泣いたのよ。うれしくて」
「そうか。ならいいが。もう。用はすんだ。帰ろう」
「え? 大地の武具の調査してくれないの?」
「お前。ない袖はふれんだろうが。彼の地に行くしかない」
「どうやって」
「さぁ?」
「さぁって!!」
夫婦漫才を繰り広げているとすっと優衣が現れて步夢の腕を引っ張った。涙が流れている。
「智也がどうかしたの?」
とっさに智也の事が浮かんだ。
「急に倒れて、意識が戻らないんですの。どうしましょう。智也は余命一ヶ月の宣告を受けてますの」
「よめい……いっかげつ……」
步夢の頭の中は真っ白になった。その步夢を当騎が抱き上げる。
「優衣、急ぐぞ。一緒に連れて行ってくれ」
当騎が言ったのは優衣の人ならざる力で一足飛びで屋敷に戻してくれ、という事だった。
「わかりましたわ」
優衣は錫杖を出すと大地に突き立てた。一瞬で光がきらめきシャラン、という音とともに三人は消えたのだった。
あとがき
毎日しゃこしゃこ書いて第一部は二十話で番外編含め書けたんですが、次が~。どうしたらいいんだい? と言いたい。あっちに行くのは大前提のファンタジーという名前に沿った内容だけど和風ファンタジーです。あっちとこっちに別れるという気はするのですが。そもそも脱線しまくりの第一部。当分、古文書でも読んでもらいましょう。千輝の対もいるし。名前はもう決まっている。毎日七時に配信される豆柴の画像見て散歩居るのかー。飼うの難しいなぁとつくづく思います。今、猫より犬ほしい。猫もいいけれど、古傷が……。(;゚ロ゚)。
あー。冴木選手の勝ちがつかないー。また負けるのね。打たないと。いくら守りが固くても~。打線が打線が~。延長願う。と話がそれた。第二部どうしようかなー。外国編もあるんだけど。ししょーと別れるのはさみしい。かといって連れて行くわけにはいかない。秘密のドアでも作ってもらおう。
どこでもドア~。なんかさみしーいししょーの後ろ姿が浮かんだ。終わりにするにはさみしい終わり方。でも、そうなるかな。ある意味。どうなるか。第二部お待ちください。鋭意書いていきます。
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