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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:風響の守護者と見習い賢者の妹 第十一話 旅立ち、風の少年王を追いかけて

前話

「う~。頭が痛い~」
「飲み過ぎるからでしょ!」
「お爺ちゃんが見送りに来てくれているのに二日酔い? お兄ちゃん、信じられないー」
 義理の親とも言えるフロリアンとの酒の勝負は引き分けで終わったが、残ったのは強烈な二日酔いだった。妹と新妻を妻の実家に置いたまま酔い潰れていたレオポルトは新妻からも妹からも突き放されていた。いつもの夜を過ごせないわ、酒で気持ちは悪いわ、で水国の王といしての威厳もどこかに吹き飛んでいる。さっさとゼフィリス王に追いつかないと行けないのにこれでは先が思いやられる。
「じゃ、お爺ちゃん。行ってきます。お兄ちゃんイーカム出してー」
「こんな大勢イーカムでも運びきれないわ。空路は主の俺がいないと使えないの。馬で行く」
「へー。二日酔いで馬に乗れるんだー」
「ユレーネ。こんな時にへそを曲げないでくれ」
「いいわよ。私は馬に一人で乗れるから、ニコに載せてもらったら~」
 意地悪な視線の新妻にレオポルトは嘘泣きをする。
「くすんくすん。妻が夫をいじめるー」
「どっちがよ!」
 妹と妻の声が重なる。
「私はシルフィでいくもんねー」
「それはダメだ!」
 レオポルトが強く言う。一応は兄の自覚はまだあるらしい。
「シルフィの速さで行かせたら俺達を追い抜いていく。一緒に動かないと危ない。情勢は危ない方に傾いてるんだ」
「えー。お爺ちゃん。なんとかしてー」
「こら。師匠とか先生とかいい加減呼べ」
 二日酔いでも兄としての指導はできるらしい。
「一回、先生って言ったら孫がいなくなったーって大暴れした」
 レオポルトとユレーネの目が点になった。
「ローレライ。本当なの?」
 レオポルトの代わりにユレーネが聞く。すでにお怒りはどこかへとんで行ったらしい。それぐらい衝撃的だったのだ。
 ええ、とローレライが肯く。
「私がもう婚礼をする年頃だから寂しいのよ。リリアーナが孫代わりなの。孫が旅に出ていくなんてお爺ちゃんも寂しいわね」
 ぽん、とローレライがアイシャードの肩を叩く。
「孫は無事に帰すんじゃぞ。王と女王には代わりの子供はいくらでもいるのじゃから」
「まだ産んでません! 何言わせるのよ。もう」
 ユレーネがレオポルトの首根っこを捕まえる。
「ユレーネ?」
「ニコと一緒じゃ嫌なんでしょ? 私が馬を走らせるわよ」
「それはそれで王の威厳が。ユレーネ様」
 ニコが取り繕うがレオポルトはもう尻尾をふる子犬だ。
「ユレーネと一緒ならどこでも行く」
 目はハートマークに輝いている。
「レオの二日酔いは年齢退行か」
「何か言ったか。ニコ」
「いいえ。なんでも。王様」
「王様なんて気色悪い。ニコはレオでいい」
「はいはい。もう夜が明けますよ。出立を遅らせる気か?」
 ニコが催促するとレオポルトは強い口調でいや、と言う。そして馬に乗るとユレーネに手を差し伸べる。
「これぐらいで参ってる場合じゃない。しっかり捕まっておけ」
「レオ!」
 今度はユレーネの目がハートマークだ。
 この二人は……。
 リリアーナは思うが言葉にはしない。
 新婚とは下に恐ろしいものよ。
「リリアーナはローレライの馬にのっておけ」
「はぁい」
 心の中で思った事を胸に秘めてさっとローレライの後ろに座る。
「では。カール。後を頼んだぞ」
「はい。陛下。ご武運を」
 カールの声は真剣だった。レオポルトの表情も引き締まる。
「ああ。できるだけ早く王を連れて帰る」
 そう言って馬を歩かせる。走らせると馬を乗り潰すことになる。急ぐ旅だが、無謀な旅をするわけにも行かない。
 
 いつもの冒険メンバーがいつものように旅立つ。
「神よ。王と女王に旅の加護を」
 アイシャードが呟く。
「おや。孫の無事じゃないんですか?」
 カールがにこやかにアイシャードに言う。
「減らず口をたたくならそなたの三つ子をもらうぞ」
 カールの顔が青ざめる。
「アイシャード殿。それだけは……」
 ここに水の国の漫才コンビ一組が誕生したのであった。


あとがき
レナがでないのに娘はでるし、弱るパパカール様です。第三部は三つ子にしようかと思っている所でもあります。ついでにレオとユレーネの子供と。かなり年月が経つのでこのメンバーが替わるのでどうしようか、というところです。しかも11話目にして旅立ち。遅い~。
現在、朝活時間ですが、頭は薬でぼやけてます。神経痛の痛み止めをもらったのですが、目眩と眠気が来るらしく、頭がスッキリしません。しかも、飲んだところなので効かない。地獄の階段上がりでした。
今日の二話目の更新は「星彩の運命と情熱」です。今から作業に向かいますー。
ここまで読んで下さってありがとうございました。

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