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【再掲連載小説】ファンタジー恋愛小説:最後の眠り (2)

前話

「一体、ここはなんて暑さなの。汗でびっしょりよ」
「あ。この水飲んで。浸透圧になってるから」
「し・・・? しん・・・とう?」
「ああ。服も長袖だね。半袖を用意させようね。スカートは長い方がいい? 短い方がいい?」
「スカート? 半袖?」
 なんのことだかさっぱりわからない。渡された水はあまり後味のいいものではなかった。ぬるくてよけい気分が悪くなる。
「冷たいものを後で用意させるよ。それは、人によって好みが分かれるから。ただ、少しは飲んだ方がいいよ。そのままじゃ、脱水症状起こすから」
「脱水? ああ。母や父はそんな事を言ってたわね」
 森を抜けるとほこりっぽい荒野にでた。ほこりを吸い込んでけほけほ咳き込む。
「あ。この布を口元にあててほこりを吸い込まないで。この辺は環境が破壊されてるから。あの森はなぜか守られてるんだ。思い出の地だね」
「思い出! けほけほ・・・」
「ああ。だから布を取っちゃいけないって。俺たち結婚するんだから、思い出の地だろう。初めて出会った場所なんだよ」
 この人、おかしいんじゃないかしら、と思う。初めて出会った人とどうして恋に落ちるのかしら。しかも結婚なんて。向こうは知ってても私は知らないわ。どーやっても嫌。
「ふくれっ面も可愛いね」
「後ろ見ないで!」
「はいはい。ちょっと、この荒野はほこりっぽいから、黙ってて。馬を走らせるよ!」
 クルトが白馬の胴を足で蹴ると白馬は疾走始めた。風が髪の毛をさらうように流れていく。
「髪も短く切ることもできるよ。まとめられるぐらいにね」
「どーなってるのよ! この世界は!」
 この長い髪を切る? 姫としての条件よ。それをあっさりと。この国のプリンセスはどうなってるの?
「ああ。もう少しで緑地地帯に入るよ。上下水道がしっかりしてるからこの荒れ地でも生活できるんだ」
「それなら、私の国にもあったわ」
「土でできた土管でしょ? こっちは金属だから」
「金属って何?」
 なにやら、おじい様が操っていたものが機械って言ってたらしいけれど、生まれる前に母達は西に行ったからどんな人かもしらない。おじい様達についてまったく知らない事を今更気づく。
「ああ。君のおじいさん達のお墓は東の国にあるから、落ち着いたら行こう。エリアーナ姫が手厚く守っていたらしいから」 
 ちょっと、と声を上げる。
「さっきから先回りして話すの止めてくれない? 気持ち悪いわ」
「それだけ姫が素直ってこと。俺はその方がいいな。素直な姫が一番だ。姉上みたいに何かを企んでる姫はこりごりだよ」
 その言葉にこの国の王室はどうなってるのかしら、と不安になる。何かを企むって悪事?
「ごめん。不安にさせたね。そう悪意のある事は企んでないよ。ただ、妹ができるって大喜びしていろいろ準備してるんだよ」
「妹・・・。私、一人っ子だったの。育てるには一人しか難しい戦争状態だったから」
 そうして十六歳で眠り姫になった。あれから二千五百年後。最後の眠り姫。
 おじい様はこの歴史を把握していたのかしら。すごい人なのね。
 つらつら思っていると、白い、建物がみえてきた。天井が円い。
「ここからは王室専用通路。街には今度ね。はいよっ」
 さらに白馬を早めると建物にたどり着いた。クルトが降りて手を広げる。
「ここに降りておいで」
「一人で降りれるわ」
 私はすたっと馬から飛び降りた。うん。気持ちいいわね。着地が決まると気分がいい。
「流石お転婆姫だね。弓も扱えるんだろう?」
 どうして、と驚くのは止めてしまった。隅々まで書かれているらしいから。
「眠っていたから腕は信用しないで」
「大丈夫。たしなみ程度で終わるから」
 そこへ背の高い女性がやってきて私をぎゅーっと抱きしめる。
「あなたがエミーリエなのね。クルトの姉よ。カロリーネと言うの。気軽に呼んで。ああ。本当に欲しかった妹ができるのね。嬉しい」
「あ・・・あの。息が・・・」
 骨が折れるほど抱きしめられて私は手足をバタバタさせる。
「姉上」
 クルトが文句を言うとようやく離してくれる。その髪型にびっくりする。結ってもなく、長い髪でもなく、短髪だった。あちこち毛が飛び跳ねている。この世界は恐ろしく解らない物で一杯らしい。私は観念し始めていた。


あとがき
しっかり浦島太郎現象です。なので、この作品の舞台は結構近未来です。魔法があったかどうかは覚えていませんが、白魔術。黒魔術程度にはあるかと。なにしろ。魔皇帝がいた土地ですから。そしてここは無意識の中。表だって設定はしていませんが、そんな話が最後の方に出てきます。自分で書いてて何事?!と思いました。ほんと河合先生のエッセイの読み過ぎです。基本、こちらの作品はおとぎ話という流れです。本当に根っからの姫君という人です。現在、疲労がたまって寝そうになってます。でも更新が終わるまでは寝るわけには行かない。雷にも勝つぞ。(現在雷が鳴ってますが、我が家はアンテナがない。光ファイバー化してるので。)とにかく。あと星彩と遅れた報告を書くまでは寝れない。
ここまで読んで下さってありがとうございました。

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