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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:星彩の運命と情熱 第四十四話 対のフェアリードラゴン。~シルヴァリアとセレスがカップルになった!!

前話

 点滴するとセレスの体が蒼白く発光する。真珠の涙を一個食べる度に輝いていたのが、今度は連続だ。
 リアナは不思議そうに見る。
「ずっと光ってるけれど、大丈夫なのかしら?」
 リアナのつぶやきに医者であるマグリットが助言する。
「それだけ、お前さんの涙が純粋だったと言うことだ。蒼白い真珠の涙は滅多にない。純度が高すぎて真珠の涙を産み落とすフェアリードラゴンも一生に一度あるかないかだ。あんなものしょっちゅう出されたら商売あがったりだ」
「え? そうんですか? って、えーと」
 医者の名前を聞き忘れていたことに今更気付くリアナである。
「マグリットだ。この里で医者をしながら長老を兼ねている。先ほど、里のフェアリードラゴンが騒いだから、見に行けばセレスが瀕死状態だった。それでお前達を呼んだ。一刻も争うからな。手術は簡単だが、手順をおろそかにすると危機を招く。マルコ王子に経験があって助かった。あの王子なら国を任せるも良いな」
「マルコが? あのアチアチ王子が?」
「そういうお前さんもなかなかいい雰囲気だったじゃないか」
「あれは、シルヴァリアがいきなり話すからびっくりして」
 そのリアナの声に微かにセレスが反応する。
「ママ?」
「そうよ。セレスちゃん。ママよ。パパは落ち込んでいたからシルヴィとお外で遊んで気を紛らわせているわ。ホントにママもパパも心配したのよ。いくら危なくなってももう少し成長するまでは巨大化はダメよ」」
 プリプリ怒りながらリアナは言う。
「ハーイ パパニアイタイ オニイチャンニモ」
「セレス? 何かあるの?」
 不安げなリアナにマグリットが肩を叩く。
「対のフェアリードラゴンが存在するなら誰もが通る道だ。私が呼んでくる。リアナは側にいてあげなさい」
「ありがとうございます」
 しばらくしてマグリットが二つの杯を持ってセイランとシルヴァリアが戻ってきた。
「二つの杯? それは、もしかして……」
 ほう、とマグリットが言う。
「流石は主だな。知っておったか」
「両性具有のフェアリードラゴンが一対になる時、雌雄が分かれるって。その杯に入って儀式をするのですか?」
「その通りだ。セレスには傷が痛むだろうが、さっさと分かれた方が治癒力が上がる。恐らく、セレスが雌だろうから。母となる雌は治癒力が高い。雄でも高い子はいるが。さぁ、セレス、シルヴァリアこの中に入りなさい。好きな方を入ればよい]
杯は何の変哲も無いただの杯だ。宝石がついているでも金銀でできているわけでもない。不思議な杯だった。向かい合わせる様に杯を置く。セレスはまだ自力で動けないため、リアナが行きたいと言った方の杯に入れる。シルヴァリアはもうちょんと杯の中に収まっていた。
 蒼い幸運のフェアリードラゴンのオーラとシルヴァリアの真っ白なオーラが立ち上って交差する。すると、光があふれる。
 周りが見えなくなって思わずセイランの名を呼ぶ。ぎゅっと手が握られる。その力強さにほっとするリアナである。そして急に光は静まった。
「セレスちゃん! なんともない? シルヴァリアも大丈夫?」
 二人の我が子を異様に心配するのを見て後から来て立ち会っていたマルコとフィオナも呆れる。
「パパほったらかしてどうするの」
 フィオナ声にはっと我に返るリアナである。
「いいさ。セレスとシルヴァリアはリアナにとって一番大事な子供だからな」
「あ。セイランごめん」
 シュン、とするリアナの服をセレスが引っ張る。
「どうしたの? セレスちゃん」
「カラダ ガ オカシイ イツモノボクジャナイ」
 ふっと見るとセレスは両性具有から雌のフェアリードラゴンになっていた。
「あら。ママと同じね。これからはボク、じゃなくてワタシでいいのよ」
「ワタシ?」
 セレスはカラダの変化と言葉に戸惑っていた。そのセレスの傷をセイランは確かめようとするが、リアナに手をパチンとはじかれる。
「女の子の体をみだりにさわっちゃダメ。これからはママが教えあげるわね。パパは息子に恋の手ほどきぐらいしてあげたら」
「リアナに言われたかない」
「なんですってー!!」
 リアナがセイランを追いかけ回す。クスリ、とセレスは笑って口を押さえる。フィオナがフォローする。
「それが女の子というものよ。リアナは別枠なの」
「ちょっと! フィオナ! セレスに余計な事、言わないで頂戴!」
 今度はフィオナを追いかけ回してマグリットが雷を落とす。
「ここは患者がいなくとも病院だ。むやみに走り回るでない! しばらくこの里に住んでみると良い。いろいろ解るだろう。病院に備え付けの家がある。仲良く暮らしなさい」
「って。私達……」
 リアナが言うとマグリットが肯く。
「子細はマルコから聞いているが、まずセレスの回復と、見聞を広げるが良い。きっと見たことのない体験があるだろう。ここのフェアリードラゴンは片言で話さない。きっちり話してくれる。これからフェアリードラゴンの主としての心構えでも知ったほうがよい。古参のマルリがいい話し相手になるだろう。あの『蒼と赤の決戦』の生き残りだ」
 蒼と赤の決戦、マルコはあまり良い気分でその言葉を聞くことはできなかった。その表情にリアナもセイランも気付いていない。フィオナだけ微かにその表情を見て取れた。
「ありがとうございます。セレスちゃん、もう少しベッドにいてね。ママも側にいるから」
 うん、とこの不可解な現象に戸惑っているセレスだった。シルヴァリアはもう杯からでて、マルコやフィオナに筋肉自慢をしている。リアナは杯からセレスを出すとベッドに寝かせる。
「さ。お兄ちゃんのことは今は忘れて、眠る時よ。ほら。ゆっくり眠りなさい」
「うん」
 回復しきったわけでないため、そのままセレスは眠りに落ちていった。

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