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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(101)

前話

「もう。目隠し外していい?」
 私はカロリーネお姉様からいいものがあると聞かされ、クルトの手に目隠しされてフリーデとヴィエルヘルムに手を引かれ、牧草地を歩いてきた。もう、かなり歩いた。いい加減、早く解放されたいわ。
「奥さんはか~な~り~、ご不満のようだね。姉上いいかい?」
「しかたないわね。真ん中じゃないけれどいいわよ」
 カロリーネお姉様の声でクルトが目隠しの両手を外す。瞼を開ける。目に飛び込んできたのは小さなカラフルな花の群生地だった。
「まぁ。かわいらしい花! お姉様この花は何というの?」
「プィウム。というのよ。ここにしか咲かないの。もう、見ることが出来ないかもしれないから、しっかり目に焼き付けておいて」
「はい。触れてもいいですか?」
「もちろん。私の花だもの」
 群生地へ入って行ってしゃがむ。そっと指で触れる。花弁がゆらゆら揺れる。愛らしい、色彩豊かな花に心に光が差し込む。気持ちがぱっと明るくなって立ち上がると後ろを振り返った。あの時、エミーリエは一番の笑顔をしていたんだ、とクルトから言わている。惚れ直した、と。私は笑顔の大安売りしながら、ピクニックの準備をする。クルトが何かと腕の中に確保する。
「エミーリエ。可愛い。もう、食べちゃいたい」
 クルトもにこにこだ。
「そこ。いちゃついてないでさっさと準備する。妻のつわりに付き合わない夫は捨てられるわよ」
「そう言えば、この土地特有の果実があるって聞いたわ。お姉様、なんというの?」
「天使の落とし物、と言われるリンゴのようでリンゴでない果実よ。とっても甘くてとっても酸っぱいの。人生の酸いも甘いも噛分けたエミーリエには食べる権利があるわ。クルトになし、ね。エミーリエ食べたいだけだもの」
「姉上。ひどい!」
 クルトが文句を言う。
「あら。エミーリエだけいればいいんじゃないの?」
「意地悪~」
 カロリーネお姉様はころころ笑う。つられて私もけらけら笑う。
「久しぶりだね。けらけら笑い。ちゅーが受けないからね」
「だって。私もちゅーっていうようになったんだもの。クルトからうつっちゃったわ」
 レジャーシートを敷きながら軽食を出していく。お姉様は果物をナイフで皮をむいていた。あれが、そうなのね。不思議な果物。不思議そうに見つめる。
「もうすぐ、皮がむけるから末妹の特権で一番最初にあげるわ。あなたは永遠に私の妹よ。姉の愛をどうぞ」
「お姉様!」
 手と手を取り合って絆を深める。クルトが横から手を出して一切れくすねる。
「あ。クルトー。私のデザートを~」
「だって。俺もこれあんまり食べられないんだもの。エミーリエの物は俺の物~」
 次の一切れに手を出そうとしてカロリーネお姉様にぺちっと手を叩かれる。
「痛いじゃないか」
「全員分あるんだから、少々待ちなさい。エミーリエ、クルトを甘やかしているわね。しっかりしつけしないと」
「そうね。クルト、さっきの一切れはクルトのところから戻してもらいますからね」
「ちぇ」
 クルトが拗ねて場にわっと笑いが広がる。
 あちこちで話の花が咲く。こんなに穏やかな気持ちになるのは久しぶり。東に来てからはいろいろ気が張り詰めていたからこのピクニックはこれからのことを考えるといい休憩になった。これからの事。ヴィルヘルムを救えるのか。本当の意味で。私にできるのだろうか。あの方と呼ばれる人、いえ、そうじゃないわね。原始の海の大元。なぜだかヴィルヘルムが犠牲になるようでしかたなかった。それをどう阻止すればいいか。今だ、私には状況がわからないままだった。最果ての地と呼ばれる土地に近づくごとに私の不安は人知れず大きくなっていた。何よりも大きな地が私を待っていた。


あとがき
一応、ぼーっとしてましたが、早起きはできました。ただ、睡眠負債がすごい。まだ五時間半しか寝れてない。そしてついに100話越え。ラスボス手前を書いています。次の話で行けるか? いや、墓参りを忘れていました。110で切りよく終われそうにないです。終章もありますので。早く起きても眠くて、紅茶とコーヒー飲むまで目が覚めませんでした。もともと今日は公式の休みの日。雪も降らず、買い物に行きたい。饅頭~~~~。とりあえず、フレキシブルカードで食パンと饅頭かってきます。今日で50日目。やり直して。前は101日まで行って予約配信していて一日途切れたんですよね。それからとびとびの期間を経て、やっと50日。長い。このことは朝活の記事でも取り上げますので、とりあえず買い物~。

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