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【再掲載小説】恋愛ファンタジー小説:ユメと言う名の姫君の物語 第十五話-ユメ-旅に出る

前話

「それでは。お父様、お母様、行って参ります」
「ユメや。無事に帰ってくるのだぞ」
 おかしいほどにお父様は目がうるうる。別に嫁ぐわけでもないのに。また帰ってくるのにね。お母様は私の考えていることがよくわかったみたい。にっこり微笑む。
「いつかは娘は出て行くものよ。その予行練習だと思って行ってらっしゃい」
 お母様と抱き合うとじーっと視線を感じる。お父様だった。笑いが吹き出そうになるけれど、真面目な顔をしてお父様も抱きしめる。なんだか懐かしい香りがした。私、きっとお父様っ子だったのね。いつも嗅いでいた香りがわかるなんて。すこしメランコリックになる。
「ユメ? どうした。父の前では元気なユメでいておくれ」
「はい!」
 今度は本当の笑顔になった。
 ドアを開けられて車の後部座席に乗り込む。
 しばらく自国の変わらない風景が続くけれど、国境を越えて地下トンネルを通り始めると上の世界は海なのかなんなのかと、想像をいろいろ巡らせる。タイガーの国は「アニスゲルド」という。島国の「アニス」、湧水の「ゲルド」が一緒になった国名。その名の通り、島国で全土から湧き出る水が有名だ、と聞いている。だから、このトンネルの上はきっと海。海ってどんな所なのかしら。泉や湖は見たことがあるけれど、水が塩辛いと聞いている。塩辛い水って食塩を入れて作ったみたいね、ってタイガーに言えば、その水を乾かしたり煮詰めて作ったのが食塩なんだよ、と言われて逆にびっくりしたわね。タイガーは今は何をしてるのかしら。王妃様へのお土産は喜んで頂けるかしら。いろいろな考えが頭に浮かんでは消えていく。そういえば、私の国の名前は「ハーフェン」だったわ。安息の地の意味を持つ。この国で婚礼した方が幸せになれるような気がする。ま。言葉だけで決めてはダメね。我が国はあんなに発達した国ではないもの。でも、タイガーが獣医を広めてくれれば、きっと国の牧畜をしている人達の役に立つ。と、そこまで考えて、もう婚礼後の事まで考えていた自分が少々恥ずかしい。顔が赤くなっていなければいいけれど……。と、運転席のミラーを見るといつものすました私がいた。
 ほっとする私に天邪鬼ね、と声が聞こえる。認めればいいのよ。タイガーが好きだって。好きだけど、恋人じゃないわ。まだ、ね。両思いじゃないもの。そうよ。タイガーだって恋人の一人や二人いるわ。私なんて劣るぐらいの。次第に意識は思考の泉へと沈んでいったのだった。


あとがき
「アニスゲルド」なんてどこで調べたっけ? とさっき読み返して思ってました。確か、ファンタジーに出しやすい国の名前一覧がネットのどこかにあって言葉を借りたのよね。どこかの言語らしいかった。ケルト語かどっかだったとおもうけれど。ChatGPTさんの前は天文学的な時間をかけて調べては名前を考えていました。意味まで調べて。愛称やら。リンダも名付けの仕組みから出てもう、いい。現代っ子見たいけどミドルネームにする、って諦めてリンダなったのですけどその後シャルロッテが台頭してきてロッテ、ロッテと書くようになりました。リンダは初期に埋没。シャルロッテはあとからつけたんじゃなかったかしら。一時、名前一覧表ボードがデスクに立てかけてありました。訳ありと表裏にして。訳ありは大家族でもう紙面がたりませんでした。今もどこかにあるはず。後生大事に持ってました。王朝名は古王国の頃を特に引っ張って現代の名前っぽくないようにしてありますが、他の話では解りやすくなってしまったものもあります。ユングリングとかだとユングみたいだけど変わってるわね、となるけれど、ランカスターとかなると王朝名丸々なのでイギリス王朝っぽくなる。そして探し始めた王朝名のところで、占領されていたため王朝名はない、と書かれてうそー。と叫んだことも。現代の王朝名しかない国があるんです。北欧で。もう、泣きましたね。名前、その国の方で決めちゃったじゃないのーって。ほんと、名前って意味まで調べてたらキリがない。でも二次のキャラの転生版名前を考えるときは、適当なキャラもいるけれど。主人公カップルはほんと考えますね。結果オーライだったりするけれど。と、また眠気が。寝落ちする前に投下しておきます。ここまで読んで下さってありがとうございました。

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