第四十一回 Gt ヒロト | ヒロトの秘密基地「#STAY HOMEを経て、僕の中はどう変わったのか 」

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photo 2020.07.05 LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)


自粛期間を経て、新しい生き方や生活スタイルが求められる世の中、皆さんは以前と何が変わりましたか?
今回は、僕の中の意識がこの#STAY HOME期間を経てどう変わっていったのかを、いつもとは違うリモートスタイルのインタビューで探ってもらうことにしました。

ーー自粛期間を経て、アリス九號.として7月5日、LINE CUBE SHIBUYA公演を直前に控えた(*インタビューはこの公演前に収録)いまの心境から聞かせてください。

メンバー、スタッフさん、会場側とも慎重に打ち合わせを重ねた結果、この決断をしました。
やるためには万全の体制を取った上でということで、参加する方はフェイスシールド着用を義務付けて。
今までこんな状態でライブをやったことは無いので、皆さん不安を感じていらっしゃると思うんですが、本音を言うと、僕は逆に新しいライブができるんじゃないかと思ってワクワクしちゃってます。
実は。

ーーこの状況を、ポジティブにとらえてるんですね。

そうですね。
ただ、特に東京に住んでいない人、この日のために遠征する方々はすごく不安に感じていると思うんですね。
イギリスにいる友人と連絡をとってても「東京ってヤバいんでしょ?」って言われたりするから。
ニュースの偏った報道でしか知らない海外の友人や地方の九組の方からしたら、東京ってそういうイメージが強いと思うので、その人たちの不安感を和らげるようなケアもしながら当日を迎えられたらなと思ってるんですけど。
でも、東京で既にお仕事で外に出ていらっしゃる九組の方々にとってみれば、いまやこの東京が“新しい日常”ですからね。

ーーだから、今回のフェイスシールドを付けて参加するライブも、新しいライブスタイルとして受け入れて生きていくしかないのかもしれないですね。

ファンの方、オーディエンスもそう考えてるんじゃないかな。
そのためにも、LINE CUBEのライブが次の新しいライブスタイルのモデルケースになれるように尽力するしかないなと思ってます。
公演を発表したからには。

ーーその第一歩を踏み出しているバンドは、他にいないですからね。

ファンの中には「その第一歩の担い手にあなた達がなる必要があるの?」と思った方もきっといたと思うんです。
でも、僕らはチーム全体としてこの決断に至ったので。
その決断も、別に自分たちやスタッフが生活に困ってるからとかそういう理由では全くないんです。
僕らはまだまだエンタメ、ライブが持つパワーを信じていて。
このチームとこのファンの層、九組の方々とだったらライブをやれるんじゃないかと思ったからこそ一歩を踏み出すことにしたんです。

ーーこれが、ライブに来る目的がストレス発散のため、大暴れするためというファン層では、その決断は難しかったと思うんです。

ええ。
九組のファンの特性であったり、ウチのライブの雰囲気を考えての決断でした。
僕らは色んなタイプのライブをやってきてますけどね。

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ーーファンの方々はライブハウスもホールも、ちゃんとその両方の楽しみ方、マナーを心得た人たちばかりですからね。
はい。
なので、そこはファンの力を信じてこの決断に至った感じですかね。
ライブって、僕らステージ側の人間だけで作るものではないですから。
演者と裏の方々、それを観に集まった方々全員で作るものですからね。

今までとは違って、これからはエンタメ以外のこと、感染予防などに皆が気を配りながらライブを成立させていかなきゃいけない訳ですけど。
そもそも、そういう制限がある中で活動するのって、僕らもお客さんも過去に何度も経験してきてるから、慣れてるんじゃないかなと思ったりしてますけどね。

敵がウイルスというのはなかったですけど、例えばA9時代、苦境に立たされていた『LIGHT AND DARKNESS』のツアーなんて本当に予算がなくて。
それでもチームでアイディア出してやった結果、今までにないような新しいライブができましたからね。

ーー私服っぽいカジュアルな衣装を着て、ライブは本編を2部構成にし、立ち位置も変えたり。かなり斬新なパフォーマンスでした。

そういう新しいスタイルのライブをやるスキルはこの10〜15年で身についてきてる気がするので。
それを使えば、今までに無い形ではあるけれども、ちゃんと心が動く新しいライブが今回もできると思ってます。

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ーーそれを受け取るファンの皆さんも、いつの間にか新しいライブスタイル、ウェルカムな体質になっていってますから。

そうやって新しいことやりながらも、バンドが今もこうしてあり続けている訳ですから。淘汰されることなく。
新参者のウイルスよりも、ウチらは相当しぶとい生き物だと思いますよ。
ファンも含めて。

ーーそうですね。この対応能力の凄さは、2〜3年やってきたバンドには出せないと思います。

なんとなく続けてきた訳じゃないですからね。
色んな荒波を乗り越えてきてますから。
そういう意味で考えると、今の状況もそんなに悲観はしてないんですよ。

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ーーなるほど! 最初からヒロトさんはそういうポジティブな考え方でこの状況を受け止められてたんですか?

遡って話すと、日本で新型コロナウイルスのことが報道されだした1月頃から僕自身は不安を感じていました。
自分がよく見ている感度の高いオンラインサロンの方々も続々と「危ないんじゃないか」と言いだし始めて。
実際自分で情報集めだすと、さらにそれを実感したんですよ。

中国が旧正月を迎える前、日本は入国規制をまだしていなかったから、中国からはガンガン人も入ってきていて。
日本国内はまだまだ危機感に包まれたようなムードは無かったじゃないですか? それが僕的には怖かったんですよ。

だけど、あれよあれよという間に2月末頃からエンタメ系はどんどん中止になっていって。
自分はその中で、日々変わる新型コロナに関する情報収集に振り回され、疲れきってしまっていたんです。
なので、緊急事態宣言が出て日々家に籠る生活が始まって、ある意味それで安心した感はありましたね。

ーーそこでやっと冷静になれたというか。

そう。
あと、日本より先に新型コロナのパンデミックに直面した国で、感染した人々が次々に回復していってることも、僕のなかでは1つの安心材料となっていきました。

けれども、この状況がいつまで続くのか。
ツアーはどんどん延期になり、去年末から年明けに自分が掲げていた今年の目標である「個人的に今年は海外を飛びまわろう」というのも全部実行不可能になってしまい。
そこで僕は目的地を失いかけて、この時期は精神的にすごく堪えました。

ーー今までも、例えば東日本大震災であったりバンドが活休した時期など、音楽活動ができない、先が見えない時期は経験済みかと思うんですが。それとは全然違いました?

ええ、違いましたね。
東日本大震災のときは、被災地以外では活動できましたから、そんなに先行きが見えない訳ではなかった。
「Ray」、「Heart of Gold」という曲ができるぐらいセンセーショナルな出来事ではあったんですけど、なんとか被害にあってない人たちで力を合わせていけば、きっとこの困難も乗り越えられるだろうというのが見えてましたよね。
ただ、今回はこの先どうなるかが全く分からなくて。
自分は2月頃からパンデミック系の歴史を紐解く本とかをむちゃくちゃ読んでたんですよ。明日を見るには歴史を見ようと思って。

ーーそれ、名言ですね。

地球上のほとんどのことは繰り返しているんですよ。
テクノロジーの進化で“ガワ”は変化していても。
それで、過去の人はどうパンデミックに対処していったのかってことをすげー調べまくったら、100年前のスペイン風邪は第三波まであって、感染が落ち着くまでに1年半以上かかっていたんですね。
スペイン風邪とはウイルスの種類も違うし、今はテクノロジーも進化しているから、もっとそれよりも短くなるかもしれないなと思いつつも、かなり先は見えないなと思って。
ライブはこれからどうなるんだろう。
もしかしたら、リスクまで背負って行くライブはもういいやと思ってしまう人たちもいるかもしれない。

ーー高齢のご両親と同居されてる方とかは、その選択を余儀なくされるかもしれないですね。

お子さんがいる方とかね。
それは正しいと思うんです。
ただ、自分自身はライブ、生のコンサートがやりたくてバンドを始めて。
それは、今も変わらないんです。
自分の生き方、その一番中心になっているものがこの先無くなるかもしれないと想像したら、気持ちはかなり不安定になりました。
それが4月の上旬ぐらいです。

3月にも1度そのモードに入ってたんですけど、それでもこういうことなら出来るかもしれないと思って、色んなことに取り組んだりしてたんです。
だけど、4月に入ってからはどんどん気持ち的に落ちていきました。

ーーコロナ疲れですかね?

完全にそうですね。
そのピークと、あとはこんなに家にずっといたことなかったんで。
人生で一番家に籠ってましたからね。
同じ場所にこんなに留まってるのは人生初でしたから、そのストレスのピークが重なって落ちてたんだと思います。

ーーそんなヒロトさんを支える存在として、身近にいたモグには相当助けられたんじゃないですか?

助けられたと思いますね。
あ! でも、1回モグすらもコロナ疲れっぽいときがありましたよ。
飼い主がこんなに四六時中一緒にいることはモグの人生では経験したことがなかったんで、その状況に慣れるまではイライラしてましたね。
最初はずっと一緒にいられて嬉しいみたいなモードだったんですけど、1カ月ぐらい経った頃からイラつきだして蹴ったり噛んだり。
自分はDV被害を受けてました(笑)。
なので、その頃は家の中に2人しかいないのに、殺伐とした空気が部屋のなかには流れてたんですよ。

ーー今は大丈夫なんですか?

今は新しい日常にお互い慣れて、平穏な日々を送ってます。

ーーそれを聞いて、意外と人間もペットも新しい生活にフレキシブルに対応できる生き物なんだなと思いました。

そうですね。
太古の昔からそうやってうまく対応して生き延びてきた動物ですからね。
ただ、自分は部屋から移動ができないというのがとにかくキツかったです。
家に籠ってばかりだとインスピレーションも何も湧かなくて。

ーーそうでしたか。その流れでお伺いすると、STAY HOMEが続く中、ヒロトさんはお家ではどんな日々を過ごしていたんですか?

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限りなく2次元に近い2.5Dロックバンド、アリス九號.のオフィシャルnoteです。 毎週メンバーがリレー形式でオフィシャルnoteだけの…

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