外国に見る働く女性と子育て


BBCの記事

2013年3月22日、BBCの記事が掲げたタイトルは、「日本、仕事を持つ母にとって、先進国のなかでは最低の国か?」。

仕事と子育ての両立が、この国では大変なので、仕事を続けたい女性は、子供を生むのを諦め、子育てをしたい人は、仕事を諦めると伝えている。

また、専業主婦の少ない国、スウェーデン、デンマーク、米国では、出生率が高く、女性の就業率の低い国、イタリア、日本、韓国では、出生率が低いという。

仕事を持っている女性ほど、子育てを楽しんでいるということだろうか。専業主婦と比べると、子供と接する時間が短いだけに、濃密な関係が生まれるのかもしれない。また、ダブルインカムが、生活に余裕を持たせているのであろう。


母子でも、ひとりの時間が必要

確かに、四六時中、子供と一緒では息苦しくなるのに違いない。これは、夫婦にも言えるのではないだろうか。いくら美人の妻をもらっても、また美男の夫と結婚しても、いつも一緒では鼻につく。3日もたてば、飽きてくるかもしれない。

このままの出生率が続けば、この国の人口は50年で1/3減少すると、先の記事は記している。あと1000年もたてば、この国の住民は絶滅するとの予測もある。

もっとも、その前に、国家破綻をきたしていることは間違いあるまい。国の借金が1000兆円を超えている国が、そういつまでも存在できるわけがない。

http://www.bbc.co.uk/news/magazine-21880124


人口が減るのは悪いことか

人口が減ることは、一概に悪いとはいえない。人口密度にそれだけ、ゆとりができて、大きな家を所有できるようになり、暮らしやすくなるのではないか。都会の満員電車は、混雑が少しは解消するであろう。

食料の生産法に、大きなイノベーションが生まれれば、農業に従事する若者が増え、一方で人口が減れば、それだけ食料自給率も上がることになる。いやしくも、自分の国で食べるモノを賄えないなんて、独立国とは呼べないではないか。

子供が少なくなって、誰もが大学で勉強できるなら、塾に通う必要もなくなるに違いない。つまらない暗記に精を出すよりも、自分の好きなスポーツや趣味を楽しむ生徒が増えることであろう。

人口は減っても、これだけ産業用ロボットやコンピュータがあれば、減少した人口だけの仕事をこなせるのではないだろうか。人間と違って、1日24時間365日、休みなく稼働させることができるのも利点である。融通のきかないことが、玉にキズではあるが。

先の記事によると、この国では公立の保育園に子供を預けるとき、ひとり毎月10万円、私立なら20万円、必要だと伝えている。

いったい、そんな高額な施設を利用する夫婦がいるのだろうか。


待機児童を減らす提案

老人福祉施設を利用して、公立の無料の保育園を作るのは、どうだろう。昼間は個室が利用されないままになっているに違いないので、このスペースを使うのである。

老人ホームで、赤ん坊とシニアの世代が、一定の時間を共有することは、双方にとって有意義だと思う。

老人は赤ん坊や幼児と接することによって、生きるエネルギーを受け取るであろう。幼稚園児は、人生の先輩から、おじいちゃんやおばあちゃんの智慧を学ぶことができる。

あの世に旅立つ前に、後の世代に伝えておきたいことが、誰にもあるのではないだろうか。生きた歴史を学ぶのにも、絶好の機会である。今のうちに、悲惨な戦争のことを直接、幼い子供に語り継ぐのは、老人の使命である。

子供が少なくなって、空き教室が増えた学校を利用するのも、いい。教室を保育室に変えるには、じゅうたんやおもちゃなど、いろんな備品が必要になるが、それも市民の寄贈で賄うようにしたら安上がりである。

そして、子育ての経験のある人に頼んで、ボランティアとして、子供の面倒をみてもらうことは無理なのだろうか。いくつになっても、自分は社会の役に立っていると感じることは、生きがいに通じると思うのだが。

子供を預けている両親は、休みの日に、ボランティアとして働いている人を自宅に招いて、食事をともに楽しむというような雰囲気ができれば、申し分ない。この機会に、子供の普段の様子を詳しく、ボランティアの人から話を聞くこともできる。


人権教育の充実しているスウェーデン

スウェーデンでは、子供が生まれたり、養子を迎えたりすると、両親には480日の育児休暇が保証され、母親は、これをフルに利用して、父親も100日ほど会社を休むという。

養子うんぬんの件は、おそらく同性カップルも女と男の夫婦と同じように、育児休暇が取得できるということであろう。心憎いばかりの配慮ではないか。

フランスは、2013年5月18日、同性カップルの結婚を法律で認めた。世界で13番目だという。人間の好みは多種多様であることを、国家が容認するのは、めでたいことではあるまいか。自分の好みを、他人に押し付けてはならない。

同性婚どころか、夫婦別姓さえ実現できていない、どこかの国とは、月とスッポンの違いである。個人の好みに国家が介入することは、人権侵害にあたる。

人はだれも、性別にかかわらず、自分の好きなことを仕事にして、共に歩んでゆく伴侶を見つけ、子供を育てる権利があることを、スウェーデンでは、幼い頃から教育していると、ある記事は伝えている。

充実した人権教育のなせるわざといえよう。このような教育の結果、多額の税金を払うことになる立派な社会人が生まれ、国が豊かになってゆくのである。

漱石の「草枕」の冒頭は、人口に膾炙して、あまりに有名であるが、おそらく、スウェーデンでは、智と情と意地を貫くことこそが、生きがいになり、これで社会が円滑に動いているに違いない。そこには、エスプリとユーモアが介入する必要があるが。


子育てを分かち合うデンマーク

デンマークでは、おそらく柔軟な勤務時間が当たり前になっているので、出産後の女性にとって働きやすい環境ができている。

2012年2月18日の英国「ガーディアン」紙の記事によると、プロの脚本家を目指している34歳の男性は、次のように語っている。

ぼくたち夫婦は、できるだけ子供と一緒に過ごすようにしている。デンマークでは、父親も子育てに積極的に参加している。父親になった男性は、3ヶ月の育児休暇を取るのが普通なんだ。

また、次のようにも言っている。専業主婦をしている女性は、ぼくの知る限り聞いたことがない。もう、母の世代から、女性も仕事を持つのが当たり前になっていた。

http://www.guardian.co.uk/society/2012/feb/18/britain-learn-denmark-childcare-model


ガラスの天井

ガラスの天井という言葉を昔、習ったことがある。有能な女性でも、どうしてもガラスの天井にぶつかって、これ以上、昇進できないという目に見えない壁である。

この壁は出来る限り、ないに越したことはない。女と男の間に、生まれつき、能力の差は認められないからである。いや、高校や大学で優秀なのは、むしろ女子学生ほうが多いのではあるまいか。

働く女性にとって、どの国が性の平等を実現したのか、調べた結果がある。「エコノミスト」誌は、この壁を、ガラスの天井指数と呼んで、壁の低いほど、つまり、指数の高いほど性差別の少ない社会だと考えた。

つまり、女と男の賃金格差、管理職に占める女性の比率、労働市場における女性の割合、大卒以上の女性の全体に占める比率、給与に占める保育料の割合を勘案して、国別の達成度を調べたのである。


働く女性の憧れ、ニュージーランド

さて、栄えある最高位に輝いたのは、北欧諸国にあらず、南太平洋の国、ニュージーランドであった。そういえば、小泉元首相が、この国を訪問した時、いち早く実現させた郵政民営化について説明したのは、ヘレン・クラーク首相ではなかったか。

働く女性のみなさん、ニュージーランドへ来ませんか。思う存分、能力が発揮できますよと、ある記事は伝えている。全世界から有能な人間を呼び寄せているのであろう。この50年で、ニュージーランドの人口は2倍近くに増えている。

オーストラリアとニュージーランドには、エフトポスと呼ばれる仕組みがあって、これは働く女性にとっても重宝するのではあるまいか。

スーパーマーケット、病院、歯科医院、商店などが銀行とオンラインで結ばれているので、カードで払うだけでなく、買い物ついでに、レジで預金を引き出すことができる。つまり、銀行に行く必要がない。

ニュージーランドは、子育てにも恰好の国といえよう。原子力発電所がないので、放射線の恐怖に怯える必要はないからである。人口密度が低いのもいい。

日本の国土から北海道を除く面積に、たったの512万人あまりしか住んでいない。大自然が満喫できる場所が、まだたくさん残っている。毎年、夏になると、南島の景勝地、ミルフォード・サウンドを訪れる人々は、引きも切らない。

http://www.stuff.co.nz/business/8400929/New-Zealand-working-women-come-up-trumps

http://www.economist.com/blogs/graphicdetail/2013/03/daily-chart-3

最下位の韓国と日本

逆に、働く女性が移住すべきではない国として、韓国と日本が挙がっている。女性の幹部や役員の数が、あまりに少ないからである。ただし、韓国に女性の大統領が誕生したのは、例外といえよう。


働く女性の味方、ノルウェイ

ニュージーランドに次いで、2位に挙がっているのは、ノルウェイである。この国ばかりでなく北欧諸国は、手厚い福祉政策で有名であるが、これは、きっと子供を持つ女性が仕事を始めたことと関係があるようだ。

つまり、専業主婦だった女性が労働市場へ参加して、多くの税金を払うようになり、この増加した歳入を使って、国は、公立の保育園や老人ホームなどの施設やサービスを充実させ、高福祉社会を実現させたのである。

ノルウェイでは、子供が病気のときは、有給の休みを取ることができ、また子供が12歳になるまでは、パートタイムで仕事をする権利を女性は有する。


安心して、母親の働けるフランス

子沢山なほど払う税金の額が低くなるなど、子供への手厚い福祉政策が有名な国として、この国では、フランスが話題にのぼるが、先のガラスの天井指数では、全体の11位に甘んじている。

しかし、2012年9月17日の「デイリーメイル」紙によると、女性の出生率はアイルランド、2.07に次いで高く、フランスは2.03である。

以下、英国とスウェーデンがともに1.98、デンマークとフィンランドが1.87と続いている。ちなみに、日本は、1.41。

http://www.dailymail.co.uk/news/article-2204800/British-birth-rate-soared-highest-Europe-thanks-increase-migrants.html

フランスには、党派を超えて、子供を育てる親を手助けする長い伝統がある。これが現在まで綿々と続いているのであろう。


この国の抱える問題

女性が出産後、職場へ復帰するのを妨げているのは、この国に蔓延している残業は美徳という考え方である。この刷り込みを消し去るのは、会社のトップにかかっている。残業をするのは、無能力の証拠とみなして、一切の残業禁止を、トップみずから率先して示してもらいたい。

残業が一切ない企業という評判がたてば、優秀な学生が全国から集まってくることは間違いない。すでに、そんな企業が、この国にも存在しているのは、確かである。

仕事も勉強と同じく、あまりに長時間続けても、効果はほとんど上がらないのに違いない。この点は、学校ではよく認識されているので、午前4時間、午後2時間というのが普通になっている。また、授業の間に10分の休憩時間を取るのも、常識である。

1日1時間労働は、夢か

今から70年以上も前に、英国の哲学者、バートランド・ラッセルは、次のように記している。快適な生活を享受するのに、1日4時間も働けば、十分ではなかろうか、と。これだけ、産業用ロボットやコンピュータの発達した現在では、1日1時間労働に相当するのではあるまいか。

1日1時間労働を導入するのが、急には無理としても、仮に1日4時間労働が普通になれば、もっと気楽に病院や美術館、また学校や保育園でボランティアに従事する人が増えることを期待してもいいであろう。

そして、1日4時間労働が普通になれば、仕事を持つ女性にとって、いや男性にとっても、どんなに暮らしやすくなるか想像に難くない。


実現させようワークシェアリング

この国では、「ワークシェアリング」という言葉だけが話題になって、実際はぜんぜん定着しなかったが、今よりも短時間労働が普通になれば、シニア世代の人々や身体障害者の人々が、労働市場に参加して、今まで、ひとりの人がしてきた仕事を分かち合えるようになるかもしれない。

人生は短いので、仕事だけでなく、子育てにも、スポーツにも、読書にも、芝居見物にも、キルトの制作にも・・・・・と個人の好みによって、毎日の生活を充実させてゆくのは、義務である。いや権利である。

世界に悪名高き「カローシ」を絶滅させることこそ、この言葉を生み出した国の責任ではないだろうか。

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