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カスタマーサクセスが生んだ"カスタマーセールス"という概念

みなさんは、「カスタマーセールス」という概念をご存知でしょうか。
近年、 カスタマーサクセス(以下サクセス)の役割は多岐に渡り、Onboarding活動だけでなくExpansionなども含めたミッションを持つことが多くなってきました。
そこで現れたのが、「カスタマーセールス」の概念です。

実は弊社もこれまでサクセス領域で担っていたExpansionを、あえて「カスタマーセールス」というポジションを立ち上げてミッションとするようなチャレンジをこの半年間で行ってきました。
そこで私がインプット・アウトプットした内容をもとに「カスタマーセールス」について紹介させていただきます。


1. 「カスタマーセールス」は、Expansionに特化した組織


名前からも分かる通り「カスタマーセールス」とは、セールス的観点が大きな概念となります。

ここでまず大事なのが、

① Expansionに特化しているということ

これまでのセールス概念では、新規リードやナーチャリングなどの、あくまでまだ自社サービスを利用していない顧客(新規顧客、検討顧客など)を対象としていました。
現に、世の中には上記についてのプロセス構造や施策のコンテンツは溢れています。しかし「カスタマーセールス」とは、

② あくまで既存顧客向けのアップセルやクロスセルの提案とクロージングを目的とした組織

ということがポイントです。
ここを勘違いしていると、これまでのセールス部門に既存向けのチームを作っただけという認識になってしまうため、要注意です。
「カスタマーセールス」とは、これまでサクセス領域で担っていた既存顧客向けのExpansion( = アップセル,クロスセル)に特化した組織なのです。


2. 「カスタマーセールス」は、「サクセス」から生まれたということが重要


上記でも述べた通り、「カスタマーセールス」とはExpansionに特化した組織です。
そもそもExpansionを紐解くと、アップセルとクロスセルがあります。これらはどちらも既存顧客に対して、自社サービスの追加をアプローチしていくことです。

・アップセル = 既に顧客が利用しているサービスの追加(例:アカウント、ストレージ、利用量 など)
・クロスセル = 新たに利用していただくサービスの追加

みなさんの組織では、Expansionをどのように捉えているでしょうか。
株式会社リンク社「CustomerCore」の用語集では下記のように紹介されています。

エクスパンションとは、顧客の利用拡大を表す用語です。
英語の「Expansion」に由来し、日本語では「拡大」などを意味します。
顧客の利用拡大を考えるうえでは、顧客単価の向上・顧客数の増加・購入商品数の増加など複数の観点で顧客の利用を捉えていくことが大切です。

参照:https://customercore.jp


私たちbattonのCS組織では、下記のように定義しています。

Expansionとは、
既存顧客のOnboarding以降に抱える課題を理解し、自社サービスによって可能な解決策を提示することで、LTVとNRRの向上を目的とするアプローチ。


さらに詳しく説明すると、
① 既存顧客の"課題"・"自社サービスの利用状況"の2つを加味して、新たな解決策を提案すること

② 自社サービスによる複数の解決策が施され、全体的なチャーンリスクが減少し、"継続"されること

③ 自社サービスの利用領域が"拡大"し、1顧客当たりの単価UPによる、"LTV"・"NRR"の最大化が実現されること

上記の定義に当てはめるのであれば、Expansionとはただの営業活動ではありません。
・Onboarding以降の顧客それぞれの課題を理解する
・導入済みの自社サービスの利用状況を確認し、追加提案をする
・Expansionによって、チャーンリスクの減少とLTV・NRRの最大化が実現される

現代のサブスクリプションサービスでは、上記2つを正確に把握・実行するのはサクセス領域の支援や担当者の定性的な所感などが入り混じった形で実現されています。
もちろん、CRMやヘルススコアなどでのデータ化はされている部分もありますが、それだけで語れるほど容易ではないのも事実です。
要するに、導入〜Onboarding〜Adoptionなどのプロセスのデータが必要で、それらは定量的・定性的の両方が存在するということです。

その前提で考えると、"成約までのプロセス + 利用ログデータ"のみで追加提案をするというのはあまりにも甘い考えであり、全くもって戦略的ではありません。
成約以降のOnboarding、Adoption、Retentionなどのサクセス領域のプロセスで得られるデータを基に追加提案を考えていくことが、Expansionにおける絶対条件となります。

私が主張している「サクセスから生まれた」というのは、"そうあるべき"ではなく、"そうでないといけない"という意味合いがあります。

セールスという名前がついているが、営業からダイレクトではなく、「サクセス」を経由している。


3. 「サクセス」という職業からの転職システム


ここからは「カスタマーセールス」が持つ"サクセス要素"をさらに考えていきます。

上記でも述べている通り、「セールス」から急に「カスタマーセールス」にはならないというのには理由があります。
それは「サクセス」を一部引き継いでいるからです。
大きく捉えると上記で述べた、
成約以降のサクセス領域のプロセスで得られるデータを基に追加提案を考えていくこと
ということです。

これをさらに詳しくしていくと、下記のような引き継ぎ内容があります。

・LTVやNRRなどが指標
・Onboarding、Adoptionなどのプロセスで得たデータの蓄積
・蓄積されたデータによる顧客のセグメント分け
・ハイタッチ以外のミッドタッチ・ロータッチでの営業活動
・時期を読み、適切なタイミングでの提案

特に最後の「時期を読み、適切なタイミングでの提案」というのはFSと少し感覚が違い、顧客のニーズだけでなく、既に利用している自社サービスの利用状況なども加味する必要があります。
もう少し深掘って考えると、「顧客が欲しいから」という理由で安易に追加提案をしないということもあり得るということです。
なぜならば、LTVやNRRなどの指標を持ちながらもOnboarding・Adoptionなどのサクセス領域のプロセスのことも考えていくのが「カスタマーセールス」だからです。

ドラクエの転職システムと同じです。

「"遊び人"を経由して"賢者"になる」ということに意味がある。

"勇者"から"賢者"へはダイレクトでなれません。
"遊び人"を経由して、"賢者"になれます。

ドラクエと違うのは、「カスタマーセールス」は概念であるため、個人がサクセスを経験しておく必要はなく、その企業・組織に「サクセス」の概念が存在していれば、転職可能です。
※ ごく稀に"さとりのしょ"を持っている人間が入ってきて、急に「サクセス」と「カスタマーセールス」が生まれる可能性もあります。
※ あとサクセスは全くもって"遊び人"ではないことだけは伝えておきます。

このように「サクセス」を経由して、その要素を一部引き継いで生まれることが重要です。
Expansionに特化した組織となるためには必須のステップです。


4. 他業界でも実はすでに存在している概念?

「Expansion」や「サクセス」などという言葉が出ているので、SaaSなどのサブスクリプションモデルでの概念と思われがちですが、私は他業界でもすでに同様の概念が存在する、または生まれてくる可能性があると考えています。

具体的には、"継続顧客が存在するビジネスモデル"です。
現時点では、「既存営業・ルート営業」と呼ばれるような方たちが、一番近い存在です。

例えば、製造業の既存営業の方たちであれば具体的な月契約などはしていないが、継続的に受注されているケースがあるかと思います。
※契約している場合もあります。
"取引先"という意味では、サブスクリプションモデルと大差はありません。ということは、同じようにチャーンやエクスパンションのような概念が存在していてもおかしくはありません。
このような考え方をするとやはり、
"継続顧客が存在するビジネスモデル"においては契約体系に関わらず、チャーンやエクスパンションなどの可能性が存在するため、「カスタマーセールス」の概念が存在する、または生まれる可能性が高いということとなります。

同じ構造であれば、チャンスやリスクも同じ。

この半年間で私たち自身も「カスタマーセールス」という概念を生むためにあらゆるインプット・アウトプットをしてきました。
具体的な内容については、今後の記事で紹介していこうと思っています。

さらに、私たちが実現したいのはSaaS業界以外への概念の落とし込みです。
特に弊社の「受発注バスターズ」は製造業・卸業に向けたプロダクトであるため、それらの業界に存在する"既存営業・ルート営業"の方たちへのソリューションを考えていこうと思っています。
現に新たなプロダクト案を複数考えており、顧客ヒアリングや開発構想を練っている段階です。
詳しい内容については今後リリース予定ですので、引き続き「カスタマーセールス」の概念について研究していきたいと思います!
それでは、また。

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