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花相の読書紀行№.68『黒牢城』

黒田官兵衛と歴史ミステリ

【黒牢城】/米澤穂信
<あらすじ>
本能寺の変より四年前、天正六年の冬。織田信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起きる難事件に翻弄される。動揺する人心を落ち着かせるため、村重は、土牢の囚人にして織田方の智将・黒田官兵衛に謎を解くよう求めた。事件の裏には何が潜むのか。戦と推理の果てに村重は、官兵衛は何を企む。デビュー20周年の集大成。『満願』『王とサーカス』の著者が辿り着いた、ミステリの精髄と歴史小説の王道。

◆賞・ランキング入賞結果
第12回山田風太郎賞
『このミステリーがすごい! 2022年版』(宝島社)国内編第1位
週刊文春ミステリーベスト10(週刊文春2021年12月9日号)国内部門第1位
「ミステリが読みたい! 2022年版」(ハヤカワミステリマガジン2022年1月号)国内篇第1位
『2022本格ミステリ・ベスト10』(原書房)国内ランキング第1位
「2021年歴史・時代小説ベスト3」(週刊朝日2022年1月14日号)第1位
『この時代小説がすごい! 2022年版』(宝島社)単行本第3位

★感想
2022年第166回直木賞受賞作品。
戦国時代は、小説にとってとにかく魅力ある世界。その中で信長に反旗を翻した荒木村重、堅牢な有岡城での一年余りの籠城戦の中で起こった数奇な出来事を、監禁した官兵衛の知己にたより解決していきます。
史実をベースに実に巧みな筆力でミステリに仕立ててゆく、さすがと言うほかないです。
そして驚くべき真犯人の姿と、暗い土牢の中に押し込められた官兵衛の思念。

地下の奥深く降りていく村重、幽閉されている黒田官兵衛とのやり取りが、「羊たちの沈黙」のクラリスとハンニバルを思い出してしまう。
米澤の作品を最初に読んだのが「氷菓」。
古典部を舞台に人にかかわることをしない奉太郎と、好奇心旺盛な千反田えるが日常におこるミステリを解決していくお話が好きでした。
あれから20年、こんなに面白い作品を生みだして下さったことに感謝です。
他人によってもたらされる死が日常の中にあった残酷な時代にあって、ラストのワンシーンでほっとさせられました。
戦国の世において、もっとも恐るべしは、臣下民草の罰・・・。
黒田官兵衛が残した遺訓をもって、息子である黒田筑前守長政は福岡起こし、後々まで治世の礎となり大いに栄えさせたと締めくくっています。
そして今•••日本国の将たちは、そのような気持ちで政をしている方が幾人いらっしゃるのでしょう?

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