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花相の読書紀行No.20『暴虎の牙』

孤狼の血シリーズ完結

【暴虎の牙】/柚木裕子
<あらすじ>
博徒たちの間に戦後の闇が残る昭和57年の広島呉原。愚連隊「呉寅会」を率いる沖虎彦は、ヤクザも恐れぬ圧倒的な暴力とそのカリスマ性で勢力を拡大していた。広島北署二課暴力団係の刑事・大上章吾は、沖と呉原最大の暴力団・五十子会との抗争の匂いを嗅ぎ取り、沖を食い止めようと奔走する。時は移り平成16年、懲役刑を受けて出所した沖がふたたび広島で動き出した。だがすでに暴対法が施行されて久しく、シノギもままならなくなっていた。焦燥感に駆られるように沖が暴走を始めた矢先、かつて大上の薫陶を受けた呉原東署の刑事・日岡秀一が沖に接近する…。不滅の警察小説シリーズ、令和でついに完結!
 
★感想
私のお気に入りのシリーズ。
昭和に起こった関西暴力団の抗争劇を舞台に、マル暴の警察官の戦いを描いたシリーズの完結。
本当に完結なのだろうかと感じてしまうのは私だけだろうか???
でも、昭和の博徒を描いた作品も、暴対法が施行され、昔の勢いが影を潜める中、半グレや外国人マフィアが幅を利かせている昨今を考えると、シリーズの完結も致し方ないのかと思うけど、やはり少し寂しい。
今回の作品は、大きく2つの時代を一人の半グレ“沖”を軸に大上と日岡が絡むストーリー。大上の不適で野獣のような目に潜む情に心が熱くなる。その背中に大上の影を抱きながら戦う日岡の奔走、そして衝撃的なラスト。
このシリーズは、決して警察だけが主人公ではないと私は思う。極道に生きる者たちにも光を当てながら、人間として何が一番大切なのかを説いているような気がします。
 
今回も楽しく読ませて戴きました。

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