恋人が、スカートを履いた日。

⚠︎いつもの闘病日記とは全く違うお話になります



わたし自身は、元々、不定性と呼ばれるものに近しい感覚を持っていて、男性的になったり、女性的になったりもする。バイセクシャルなので、ときどき、一緒にいる相手で自分の性別が変わったりもする。

いわゆる、性的マイノリティというやつだ。

いろんな呼び方があるけれど、今回はこの呼び方を使いたいと思う。


恋人は、性自認は男だ。多分。七割くらいは。

だけれど、お洋服好きになったのもたぶん、(わたしの勝手な推測に過ぎないが)女の子への憧れからのものだと思う。

時々、そういう可愛らしいもの…例えば持ち手の部分がハート型の傘とか、フリルのついた白のレースのブラウスとか、

そういうものに漠然とした憧れを抱いて生きてきていたらしい。

高校を卒業してメイクを始めて、ネイルを始めて、周りに気持ち悪がられたりして。

だから恋人は、時々ネイルとメイクをするけど、基本的には男の子の見た目をしていることが多かった。

付き合い始めてから、髪を伸ばしたりしていたけれど、髪の長い男の子、という感じで、ガーリーな見た目はしていなかった。


先日、二人で買い物に行ったとき。恋人は言った、

「俺、こういうスカート履いてみたいんよね」

恋人が手に取ったのは白のロングスカート。裾が切りっぱなしのデザインで、ネイチャーテイストが流行ってる今っぽいデザインのもの。

恋人は少し前から、お揃いのフリルのついたショートパンツを部屋着にしていたりしたし、多分、自分の中で隠すことに疲れたんだと思う。

わたしにだったら自分をさらけ出しても大丈夫、と思ってくれたのならそれは嬉しいし、それならわたしはその気持ちにたくさん答えたい。

わたしは即刻試着を勧めた。

けれど恋人は、たくさんたくさん悩んだ。

身近な人からかけられてきた心ない言葉が、恋人の手枷足枷となっていた。

相手の中ではきっと、何の気なしに、自分の中の"ふつう"の感覚で軽く口に出しただけの言葉にすぎない。

だけどそれは、言われた側の心をゆっくりと蝕んで、巣食っていく。

女の子がメンズライクな服装をしていても、ボーイッシュだね、で終わるのに

なんで男の子がスカートを履くことは、ダメなんだろう。

そんな疑問がずっとわたしの心の中にあった。

わたし自身もボーイッシュと呼ばれる服装をすることが多くて、実際、女子トイレに入って二度見されたこともある。

恋人も、髪を伸ばしていたとき、男子トイレで二度見されたらしい。

性別で物事を決めるなんてなんなんだろう?

それが今までの世の中の正解だったとしても、今の世の中の正解ではないかもしれないのに。


結局一時間以上悩んで、恋人はスカートを購入した。


そしてその次の日、恋人はスカートを履いた。


恋人の周りの反応がすごく気になった。聞いてみたら、やっぱり同じだった。そのとき、少しだけ世界に失望してしまった。

"気持ち悪い"

"一緒に歩きたくない"

どうしてそんな言葉をかけるのかわからない。

勿論、色んな考え方の人間がいることは分かっているし、それぞれの生きてきた世界が違うから、思うこともたくさんあると思う。

だけどそれを、マイナスな言葉を本人に投げつける必要性は断じてない。

たとえ相手が誰であっても。

心の中で思ってしまうことは、人間だから誰しもあるかもしれないけれど、一方的に投げつけて、傷つけていいことなんて絶対にない。


その日出かけた場所は、日曜日なのもあって人が多かった。

わたしたちは好奇の目でたくさん見られた。

そんなに見て、どうするの?と思う。

心の中で思うだけにしていてほしい、

全く知らない人に、ジロジロと不躾に見られて、いい思いをする人間なんかいるわけがない。

ましてや、自分の本当にしたい服装をやっとできた恋人に対しての視線には、すごく腹が立った。

珍しいから?面白いから?

わたしたちが同性カップルに見えたから、ジロジロと見ていた、のか

スカートを履く恋人を見て、ジロジロ見たのか

どちらにしても、日本という国はまだまだ性的マイノリティに優しくない。

歩いているだけでこんなふうに思うんだから、マジョリティの"当たり前"と"普通"を全てしようものなら

ネットにでも晒されてしまうんだろうな、

わたしたちの思う普通も、みんなの思う普通となんら大差ないんだよ。

だからこそ、理解はなくていいから、こんな人もいるんだな、という認識だけがほしい。

そこに配慮があればたぶん、みんな生きていけるのにな。


自分自身もそうだから、恋人もそうだから、いい顔をしてるんでしょう?なんて思われるかもしれない。

ただ、わたしが自分の性について自覚したのはここ二、三年の話だから、自覚せずにマジョリティだと思って生きていた時間の方が断然長い。

考え方の問題なのかもしれないけれど、わたし自身がたとえマジョリティだったとしても、わたしは恋人が好きだし、好きな服装をして笑っていてほしいと思う。好きな人の幸せを願うことは、普通のことだと思う。





男の子だから、

女の子だから、

その言葉はもう、いらない。






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