2040CRISISⅡ
内偵ロボによるデータ、各所にあるカメラ映像、数々の証拠が政府懲罰規程に入ったので任務を遂行するしかない。 ヒサトは誰からも視えなくなる特殊な素材で出来たスーツに着替え目的地に向かった、内偵済みだから場所の特定は簡単だ。 タケシ達はもう誰も居なくなりひっそりとしたエリアの古びたマンションの一室でタバコをふかしながら皆楽しそうに賭け麻雀をしていた。
ヒサトは到着した、誰もがヒサトの気配には気付かない、何も言わずレーザー銃で4人を撃った、というより急所を照射した。 4人は積まれた麻雀牌をバラバラと崩しながら前に倒れた、皆即死だった。 ヒサトの任務は終わった、後は回収班に任せてそこを去った。 そして4人の家族には警察から連絡があるだけ。 タケシの事はだいぶ前から密告があって内偵していた、闇タバコの製造密売もやっていた、このような事件はあの年代に多い、仕事そこそこに熟年の嗜みを謳歌した年代はこの時代の風潮に耐えられないからだ、しかし放っておくとその周辺から乱れアッという間に現在の規範が壊れてしまうと政府コンピューターは算出していた。
年齢が若ければ少々道を踏み外しても更生施設があるが年齢が50を越えて法を犯せば殺される、高齢者を更生させるなんて無駄なコストはかけない。 それだけ無駄を削ぎ落としてこそのこの高度なベーシックインカムが保たれるのだ。
ヒサトはジュンやヒトシの住むこのエリアを独りで担当している。 皆朗かに暮らし恨み事はほとんど無く詐欺や窃盗が不可能な現在ではタケシのような事件が殆どと最近急変する若者がポツポツ出始めていてそれを政府コンピューターは不安視している。
ヒサトは静岡県のお茶どころで育った、子供の頃の成績は中の上だったがスポーツは抜群に出来た、高校はサッカー部に入ってプロを目指したが叶わず東京の大学に入った、卒業して警察に入り今に至るという普通の経歴である。 だからヒサトは問答無用に犯罪者を殺してしまう方針に対し全面的に賛同では無いが、与えられたミッションは完璧にこなさなければならない、そして自分の頑張りがエリアに平和をもたらすものだと信じるしか今は無かった。
誰も入る事の出来ない交番の奥の部屋、ヒサトは腰のベルトに付いている装置に手をかざし携帯VRを起動した、先ず内偵に出している内偵ロボのデータを逐一確認した、次にエリア全体の警報マップを確認すると昼には無かった海辺にアラートが出ていた、若者が魚釣りで競争になりかけているらしい、何らかの対処されればアラートは消える、アラートが消えず警報となればヒサトの出動となる。 実はジュンとヒトシはアラートが出ていたのだ、モンテカルロで貸し出しているヘルメットに脳波を測定する装置がついていて彼らのヘルメットから異常データが送信されていたのだ、彼らは次の日コンピューターの更生プログラムを受けてアラートが消えたのだ。
誰からも暇と思える交番勤務の警察官、実は警察官16段位の上から4番目の実は相当優秀でないと付けない名誉有るポストなのだ、そのような事は国民は誰も知らないし秘密扱いとなっている。 このポストに付き続けるには当然テストが年に2回ある。 ヒサトは猛勉強をしていつも最優秀と呼べる得点でクリアしていた。 ヒサトは夢があった、この行き過ぎた世を改善するため優秀な警察官としての素晴らしいキャリアと人格を得てそれを政府に評価してもらい政界に行くことだ。
たった今ヒサトが政府系コンピューターにマークされた。
月に行かせて(笑