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国際マンガ・アニメ祭で、コンテンツのこれからについて勉強してきた。

先日、豊島区役所で行われた国際マンガ・アニメ祭『iMART』に行ってきた。このイベントは「現場の最前線からマンガ・アニメの未来を描く、日本初のボーダレスカンファレンス」という副題のもと開催された。

マンガ・アニメの生誕地であるときわ荘が豊島区にあったということから、区が「東アジア文化都市」を目指そうとするなかで企画されたイベントである。

「国際マンガ・アニメ祭」というイベント題だが、コンテンツやファン交流を楽しむイベントではない。業界のトップランナーによる講演が主。

15日(金)11:00からの『ジャンプの世界戦略 :MANGA Plus 海外配信の狙い』という講演に足を運んだ。講演では特に海賊版との攻防やマンガアプリ発のヒット作をどうつくっていくかというお話がされていた。

驚く反面に納得したのが、『ボルト』がVジャンプ移籍後、閲覧数が2.5倍になったということだ。

というのも、Vジャンプに移籍するということは初出しがアプリになるということ。私たちも身近に体感しているとおり、紙媒体のジャンプは発売日前にも関わらず金曜日や土曜日には誌面をカメラで撮ったものがyoutubeやSNSにアップされる。もちろん、警察と組んで摘発は行っているらしいがそれでもまだ絶えないらしい。アプリやWEBで最速で公開することはわざわざ海賊版を読まなくてもいいということ。漫画村の閉鎖にともない電子コミックの市場が3割り増しになったという報道があったが、それにしてもこんなにも売り上げが変わるとは......!!!!

また、ヒットの法則にも変化が。これまでは「日本で流行→アニメ化→海外で流行」というのが海外ヒットまでの道程であった。しかし、MANGA Plusで多言語で作品を全世界同時に配信することで「マンガアプリ→海外で流行」という直接的な海外ヒットを生めるようになったという。

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↑MANGA Plusのユーザー数上位国。英語/スペイン語圏が強い。人口の問題もあると思うが、イメージよりもフランスの順位が低い。

『SPY×FAMILY』の話はもちろん出た。MANGA Plus発のはじめての世界的ヒット作。

線の細さ、東西冷戦、スパイという『SPY×FAMILY』のコンテンツとしての特徴は「海外で流行らせたいというところから逆算なのか?」という質問があった。答えは、「編集部が単純に面白いと思ったから」「最適化はしていない」とのこと。

先日、『SPY×FAMILEY』や『チェンソーマン』の担当編集の林さんのインタビューが公開されていたが、そこでも「読み手に合わせて作品はつくっていない」と語っている。

販促やマーケティングの面ではどんどん新しい方法が確率されているが、制作においては属人的な感性はまだもう少しの間は残っていくのではないかなんて思う。

販促やマーケティングといえば、マンガアプリの編集長座談会も拝聴してきた。DeNAが運営する『マンガボックス』の編集長、『 LINEマンガ』の編集長、『COMICO』の編集長、の三人によるプレゼントディスカッションだ。客席は編集者の方ばかりで、その中にドラゴンボールを立ち上げた鳥嶋氏やワンピースを立ち上げた浅田氏などが見え、アプリマンガの業界内注目度の高さが伺えた

大手出版社ではなくIT企業が運営するマンガアプリからもヒット作は生まれてきている。例えば『偽装結婚』はテレビドラマ化され、『1/2夫婦』や『女神降臨』は話題になっている。

↑DeNAが運営するマンガボックスの編集長、安江氏によるnote連載。

特に驚いたのは、アプリでは「第1話リリースから2時間もすれば、その作品が売れるか売れないかがわかる」らしい。もっともプッシュされる初出の時点の動向である程度の予測ができるとのこと。こうなると週刊や月刊といった紙媒体よりも圧倒的な回数で仮説と検証を繰り返すことができるので、今後アプリマンガ作品は質も伸びてくるのではないかなと考えたりした。

今週のアララのお題は「とまどいながら」ということだが、楽しむ側としてもあらゆる媒体から面白い作品が生まれ「とまどい」つつあるが、業界の激変期ならではの嬉しい悩みなのではないかなと思う。

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