マガジンのカバー画像

詩的散文

17
私の書く文章に、主人公は必要ない
運営しているクリエイター

#失恋

恋の追憶(- 腫瘍)

それは、禁煙中のタバコのように、

それは、ネット中毒者が持つスマホのように、

それは、心が弱った時に聴くロックのように、

僕の片足を拘束している。

あの人の、抱きかかえた猫のように柔らかい肌と、

春の日差しに晒された砂ほどの体温に、

もう一度、もう一度だけ、包まれたいと願う。

それが叶わないので僕は、不思議な色をした、

明らかに毒々しい綿(わた)の思い出に、身を任せてしまうのだ。

もっとみる

繊細すぎる感覚を保つ為に開けた孔

私たちを苦しめるのは事実ではない。

私たちを苦しめるのは感情である。

恋人との別れという事実そのものは、次の日からの生活を、身体的に耐え難いものにする事はない。

ただ、隣に恋人がいた過去が、私たちを苦しめる。

そして、一人となった生活は、過去を取り戻すために、取り憑かれている。

私たちは、事実ではなく、感情によって、次の日からの生活を身体的に耐え難いものにしてしまう。

私たちから恋人が

もっとみる