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デジタル税関おじさん
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デジタル税関おじさん

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 今日もあまりきつくない仕事が終え、夕食を済ませた私はいつも通りブラウザを起動し、noteの海をダイブした。オモチ時計は動いた形跡がない、今日もnoteが穏やかだ。

 暫くして、目当ての物が目に入った。これと

 これだ。

 夜天を引き裂く。最近はまった小説だ。完璧超人の主人公久我絶無が開幕すぐBully女四人をゲロまみれになるまでボコボコして、いじめられた目隠しのかわいいけどすごく恥ずかしがり屋の女の子を窮地から救った。それでその夜、買い出しの戻る途中に人を惨殺する怪物に遭遇し、果敢に挑みかかり、善戦したが、力を及ばず打ちのめされ、内臓が飛び出るほどの重傷をうけ、モハヤコレマデー!と思ったら、昼間学校で助けた女の子が現れ、そして目が覚めたら自分が傷ひとつなく完治され、女の子に看病されていた。大体こんな感じ。

 久我絶無はまあ、口を開けば支配だの、無能だの、クズだの、とにかく口が悪くてむかつく野郎だが、言ったことは常に正しいし、やってることも絶対的な善行だから読んでいるうちに好感度が上がる。瑠音ちゃんもかわいい。金を払って読む価値が絶対にあるから読んでみてくれ。

 私は今日の収穫を小脇に挟み、デジタルレジに向かう。ほかほかの上質な小説を読めるのがとても喜ばしいだが、私は毎回noteの購入を行うと、気が重くなる。その原因はすぐそこだ。

「よう、坊主、また来たね?大漁だった?」

 霧隠サブローが描いたような、ごつい警備員姿の男が尊大に手を組みながら話しかけてきた。彼はこの「日本以外で作られたクレジットカード所持者用ゲート」、通称ガイジンゲートの税関だ。私が彼のことおじさんと呼んでいる。

「いや、まあそうっすね。これでお願いします」

 おじさんの威圧的視線と合わせぬよう、私は目線を沈めて、二本のnoteをカウンターに置き、二百円分の素子をマネープレートに置いた。その様子を見たおじさんは右の眉毛を上げて、言った。

「おう、ボーイ。何が忘れていないか?」「ああ、そうでしたね」

 私はポケットを探り、手続き料の素子を渡した。私は日本人ではないため、マガジンの月額とサポートを支払う際は、設定された価格とは別に、おじさんに手続き料を支払わなければならない。

「これで大丈夫ですよね?」私は恐る恐る視線を上げて、おじさんを見た。早く済ませてくれよ頼むよー。

「あのさ」しかしおじさんの反応は私の予想と違った。「おまえ、これが何度目だ?なんかわざと手続き料忘れてない?おれがうっかり徴収を忘れることを期待しているのか?」

 凄むおじさん!毛むじゃらの腕と指に血管が浮かびあげる。こわい!

「い、いや、そんなことは決して……」「わからせる必要があんな。イヤーッ!」「グワーッ!?」

 おじさんの毛深い右腕が私の心臓に突き刺し、食い込んだ!アバター体だから死ぬことはないが、その代わり死ぬほどの痛みが襲ってくる!

「アバッ、アバババーッ!」「ほう、ニンジャスレイヤーplus、ダイハードテイルズマガジン……ほかに何があるんだ?もうおれのこと試さないように、早めに徴収してやるぜぇ!」「やめ、おやめくださいアバーッ!」

 アバターが爆発四散寸前に、おじさんが手を引いて解放してくれた。私はまるで300キロのレッグプレスを10レップスをやったように足が震え、立っているだけでもやっとだった。

「今日はこれぐらいで勘弁してやる」税関おじさんの手には徴収したばかりの素子を握っている。アバター体から強制徴収したものだ。「もうおれの記憶力と責任感を試さないことだ。いいな?」

「はい……」

「宜しい。もう行って良し!」

 震えている足の動かし、税関を通ろうとしたその時、5mぐらい離れた隣の日本国内クレジットカード専用ゲートから、話し声が聞こえた。

「見て、またアクズメさんだわ」「なんか税関を騙そうとしたっけ」「惨めなもんだ。あんな風になりたくねえ」「自虐ネタはもう時代遅れだよ」「はよ逆噴射プラクティスの続きを書けこのバーカ」

「うわあああああー!!!」私は逃げるように、転びながらnoteの大ホールを走り去った。

(このnoteは別になにかを訴えている訳ではない)

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