持っておいた方がいい!殺殺可汗!2

「ご紹介しよう。殺殺可汗Kill Kill Khanとは、我が社が長年の研究を渡り、メカニカルエンジニアリング、バイオテクノロジー、量子力学、黒魔術など様々な技術を融合させ創り上げた究極の戦闘ユニットであるッ!」
「はぇ……」

ムジンは恐る恐る台座の上を目をやった。一人の男があおむけに寝ていた。丸いっぽい顔に八字髭、黒い鎧を身に纏い、玉ねぎを彷彿させる丸みのある兜をかぶっている。まるで教科書やゲームなどで見た蒙古帝国兵のようだ。

「殺殺可汗はその名の通り、荒事のスペシャリストだ。危機感無きお前さんにとって急性主とも言える存在だ!今すぐ契約すれば1月1000万円のお得価額でーー」
「やっぱいいんです。失礼しますっ」

いくら危機感のないムジンでも、このアムウェイ的シチュエーションにおじけ手、振り返って去ろうとしたが、そう簡単に逃げられるほど社会は甘くなかった。

「ここまで来て逃げられると思うか!頼みますぞ、殺殺可汗!」

と男が言った途端に殺殺可汗はパッと起き上がり、台座から跳躍!まるで重力に影響されないかのような身軽さでムーンサルトを決めながらムジンの頭上を飛び越え、前方に着地して行く手を阻む。

「ひっ」
「タカオヤが連れてきた金づるか。ふむ、成程確かに危機感が欠ける顔しておる」

殺殺可汗は髭を撫でながらムジンを品定めた。その声は渾厚かつ気迫があった。

「か、勘弁してくださいよぉ」ムジンはいよいよメンタルが限界に迎え、情けなく膝から崩れ落ちた。「1000万なんて、こんな法外な......払えるわけがないよぉ!」
「ふむ、貴様にとって月額1000万は高すぎたた」殺殺可汗は髭を撫で続けた。「良かろう。私も冷血無情ではない。出血大サービスだ。初期の1ヶ月をお試し期間にして450万で手を打とう」
「それでも十分高いですよ!」
「高いものか。ウッチャンナンチャンの番組で5回もゲームをクリアすればお釣りが出る価額だぞ」
「番組はとっくに終わってるよ!何十年もの前に!」
「なにっ」
「あっちょっと、勝手に話を進めないでくださいよ!」

殺殺可汗の値下げ発言にムジンを連れてきた男、つまりタカオヤが抗議を申した。

「あなたが活動可能になるまでどれほどの心血をかけたと思ってるんです?ご自分の価値を考えて……」
「黙れタカオヤ。私の価値は私自身が決める。それよりウッチャンナンチャンの番組は終わったとはまことか?」
「まあ、うん、まことです」
「なんと。では連戦連勝して金策しつつ、我が力を全国放送を通して全日本に知らしめる計画は破綻か?」
「そうなりますが、ご安心ください。今にもこうして一生懸命に事業拡大を図っておりますゆえっ」
「それで連れきたのは450万すらも払わぬ吝嗇家か?」
「それは私のミスです。面目ありません。口封じして次こそ相応しい金づるを連れてきます」
「く、口封じっ」タカオヤとの会話を聞いていたムジンはストレスで気絶寸前であった。
「もうよい。もうお前に営業は頼らん。私が私自身を売る」

殺殺可汗はそう言い、ムジンはの前でしゃがんだ。初対面の犬猫の緊張感を解くために視線を同じ高さに合わせるのと同じだ。

「若者よ、貴様は450万が高く思うのは、私が何ができるか、そして貴様がどれほどの利益を得るか理解していないからだ」
「ふぇっ」
「よってデモンストレーションを行おう。そうすればきっと喜んで金を出すだろう」
「ひぃっ」

ムジンは怯えつつも、なぜか殺殺可汗の闘志が溢れる黒い瞳から目を鼻ずことができなかった。

(続く)

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