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【水】すべての魚を味方にする男(なるべくネタバレしない)【男】

まずはこれを見てくれ

「地球上の」

「ふむ」

「すべての魚が」

「んん?」

「オレの味方」

「プハァーーッ!」「ちょっ、アクアマン!?」

 アクアマンがビールを吹き出し、ジョッキから溢れたビールがソファのシミになった。

「ケホッ、ケホッ。ごめんごめん。だって面白すぎるよ、太平洋側の人間が考えたキャッチコピーが。きっひひひ……」アクアマンはローテーブルのティッシュを手に取り、ビールを拭いながらも、笑い続けた。「だってよ。地球上のすべての魚がオレの味方(キリッ)プーーッハハハハ!ばっかじゃねえの!」

「まあ、わからんでもないけど」

 LAの彼はアクアマンの意見に同意だ。この予告を最初に見た時、彼も笑いすぎて腹筋が割れそうだった。

「おい、掃除が終わったぞ。飲み直そうぜ」

 と言い終わった途端、アクアマンはすでにバーボンのギャップを捻り、ラッパ飲みし始めた。

「あっ、居ても構いませんけど僕の酒を飲みすぎないでくださいよ」

「ふぅー、なんだよ。無償でヒーローやってんだから少々見返りを求めてもひどくねえだろ?」

「そのセリフ、ヤング・ジャスティのアクアマンに聞かせたいですね……」

「ハッ!別次元のオレは魚と会話する以外能のないネタキャラだろ?オレの人気嫉妬するに違いねえわ!」アクアマンはバーボンの瓶をテーブルに叩きつけた。「世界一セクシーの男だぜ!」

 それには同意だ。目の前のアクアマン、鍛え抜かれた身体はもちろん、ワイルドのロングヘアと口ひげ、これまでのキレイに整えた金髪の印象と一線化する。

「で、どうだったんだ?オレの映画。アルコールが回ってきた今が感想を述べるいいチャンスだと思うぜ」

(どうぜ酔わないから都合の悪いこと言われたら殴って黙らせてくるでしょう)でも彼とてゴーストヴェノムと戦って来た強者だ。これぐらいで立ち留まるつもりはない。

「そうですね……ヒーロー映画の原点に戻った、王道・オフ・ザ・王道って感じかな?海をめぐる冒険はすごかったよ。あと人が死ぬ、ものすごく死ぬ。あのことがあってよく王で居られますね。地上だったらもうバットマンがキレてカチコミしてくるところでしたよ」

「さあ……アトランティス人の倫理観が地上と違ったからではないか?オレもよくわからねえけど」

「あとブラックマンタさんが動いているところが見れてもう大満足です」

「へえ、あのバブルヘッド野郎が好きかぁ。変な奴」「可愛いかったでしょう?」「ねえよ」

「むぅ……ちなみに、『地球上のすべての魚がオレの味方』は流石にダサすぎるので最近の予告で変えたらしいよ」

「マジ?見せてみろよ」

海の生物すべて操る力

「う~ん少しはマシになったけどやっぱ惜しいな」

「え、どこが?」

「操るのではなく、話し合って、手伝ってもらっただけだよな。オレのことまるで動物の意識と生存権を無視して使役するみたいないいからじゃないか?オレはシーライフを大事にする男だぜ?」

「(劇中では使役していたように見えるけど)あ、そうだ。せっかくだからうちにトルトゥーガの心読んでみてくれます?海中生物と会話できるから、爬虫類もOKだよね?」

 トルトゥーガとは、LAの彼が飼っているカブトニオイガメのことだ。

「あれは淡水だろ……しかも爬虫類か……やってみよう」

 アクアマンがこめかみに人差し指と中指を当て、「ぼわわわーん」と水槽の中を泳いでいるトルトゥーガにテレパシー波を飛ばした。

「どう?なんか言いました?」

 アクアマンはテレパシーを終え、バーボンを一口呷った。「餌をもっと寄こせと、勝手に甲羅を磨くな、次やったら指一本噛み千切るとさ」

「そんな」LAの彼は何とも言えぬ表情で水槽を見た。「きみのためやってるのに……」

「動物の考えがわかったって、いい事ばかりではないのさ」

 アクアマンはヒーローらしく、話を締めくくった。

◆🦇◆

 同時刻、ゴッサムシティ、バットケイブ。

「おのれ……アトランティス人め、ようやくその爪、いやヒレを地上の伸ばしてきたか。好き勝手にはさせんぞ」

 ブルース・ウェインは汚い作業着を着こみ、目の下にクマが浮かんでコンピューターに向かって何らかのデザイン作業している。ワークベンチの上に散乱したパーツと食べ散らかしたロブスターが。

「地上より優れたテクノロジー?高圧と極限環境に適応した身体能力?地球最強の軍隊?これが世に出る暁には、またそんなこと言ってられるか?」

 なんかぶつぶつ言っているし、目がギラギラ光っている!こわい!

「この、バットアーマー水底用耐高圧耐極限環境仕様、名付けて、アーマードバットマン・エクストリーモファイルが相手だ!」

(おわり)

注意:アクアマンの映画にバットマンは登場しません。

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