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Steamでゲームを売る前におさえておきたいポイントBest10

個人でゲームを開発し、Steamで販売しています。4〜5本の販売や販促に関わってみて、Steamというプラットフォームで売るノウハウについて何となくわかってきたことをまとめておきます。

最近、Switch→Steamやスマホ→Steamへ移植されている個人開発者さんの発信を拝見していて「あ〜それは勿体無い!」と思うことが増えてきたので、今後販売に挑む方のご参考になれば幸いです。

注意:Steam側のアルゴリズムやイベント内容変更により、この記事は全く役に立たなくなりますので、公開日から数年経って読まれる際はご注意ください。また「これをやれば必ず売れる」という記事ではなく、売れなかった際の責任は負いかねます…。

主に「1〜2人の個人制作で開発したゲームをパブリッシャーさんを通さず自力で売るし、販促しなくてもバカ売れするようなゲームを作れてはいない」ケースについて書いております。なお、内容のほとんどが「ローンチ(リリース)前に注意すること」で、これは後述するウィッシュリストなどSteam独自の仕組みによるものです。

雑に言うと、無料スマホゲームでは発売後に広告表示回数やダウンロード状況に応じ「日毎」に細かにアップデートを重ねたりするところ、Steamでは発売「数年〜数ヶ月前」から仕込んでおく必要があるイメージです。

事前にSteamで他の人のゲームを買って遊ぶ

Steamでゲームを売るなら、他の人のページを参考にするのはもちろん、実際にウィッシュリストに入れたり、買って遊んでみた方がいい、というかそうすべきです。特に「ページのどこにどんな機能があってユーザーがどう使うか」理解しておいた方がいいでしょう。

というのもSteamは割と昔からあるサイトのせいか、こう、何とも言えないクセが強い。売る側としてこれを理解しないまま始めると「地の利が自分にない状態」です。

例えば、Steamには掲示板まとめのようなSteamコミュニティがあり、ここに情報が集約されます。レビューやファンアートだけではなく、バグ報告や質問も寄せられるのですが、個人開発、あるいは小規模パブリッシャーで割と見かけるのが質問をガン無視しているケースです。多分悪意でそうしてるんではなく、気づいてないだけとは思いますが……。

もちろん対応したら必ずお客さんが増えるというわけでもないのですが、特に駆け出しの場合は、ゲームに興味を持ってくれたプレイヤーから届いている質問、そしてバグ報告を無視することにメリットはないでしょう。

私はたくさんゲームを遊ぶ方ではないしSteamのヘビーユーザーでもなく、だからこそ参考のためにいくつかゲームを買って遊んだり、よそのコミュニティを覗いたり、レビューを書くなどしてアウェイ感をなくそうと勉強しています。

英語で出せないなら出さない方がよいかも

Steamで日英ゲームを売ってみますと、大体英語:日本語の本数割合が7:3くらいです。英語の販促ろくにできてなくてこの数字です。雑に計算して、日本で300本売れたなら世界で+700本、合計1000本売れる可能性を秘めてるわけです。

2021年言語別のユーザー割合はこのリンク下部「Language」参照

もっとも上記の数字通りになるとは限りません。海外ウケする/しない絵柄や作風、運や時流もあると思います。とはいえ、文字数が少ないゲームなら英語版を実装してから売るのを強く推奨します。

ただ円/米ドルは強く、例えば相場の低い国で売れると5ドルのゲームが1ドルになっちゃったりするので、売上への貢献度は低かったりするものの、やっぱり本数が出るとそれだけで励みになるし口コミやレビューで次に繋がることもあります。

私が作ったゲームは、英語で遊んだ中国の方から「中国でこういうゲームは人気が高いので、ぜひ中国語化を」とお声がけいただいたことで、後日中国語(簡体字)実装に踏み切った経緯がありました。例えば体験版などを試しにリリースしてみて現地の方から声が上がると判断材料になると思います。

「アニメ系」と評されたように記憶してます。アジア圏でウケが良い?

このゲームの売り上げ比率は英:日=7:3くらいでしたが、現在は英:日:中=5:3:2まで追い上げ、レビュー数のほぼ半数近くを中国語が占めています。

大型セール途中のローンチはやめた方がいい

発売日をいつにするか悩むところで、誕生日や記念日、あるいは完成次第というのもありとは思いますが、今回は販促に全振りして考えてみます。

Steam問い合わせ窓口の人曰く「大型セール中のローンチはやめとき」、これはSteam内にあるマニュアルにも書かれていたと思いますが、場所が分かりませんので発見したらリンク貼ります。

大型セールで盛り上がっちゃってるところにインディーが新発売です〜と声を上げても、なかなか振り向いてもらえなさそう。逆に「大型セール直前にローンチセールで配信開始」は、ローンチセールが大型セールに乗っかった扱いにできるみたいで、この方法は狙い目だと思います。

参考:Steamworks「割引」の「よくある質問」

最近このセールぶつけ売りをしてる方をちらほら見かけるようになって「そうだ、それでいい…!」と見守っています。私も発売日に特にこだわりがない場合は、夏か冬のセール直前にローンチしてます。

ストアページ公開→販売開始まで期間を空ける

せっかくストアページの審査が通ったのだから、早く売っちゃいたい! という気持ち、分かります。私も当初はそうしていました。

しかし、Steamの「ウィッシュリスト」機能を売り手として有効活用するには「ページ公開→販売開始」まで期間が長いほど良い、というのが通念のようです。

というのも、販売開始後の一週間でウィッシュリストの2割前後が売り上げになると言われていますので「長い期間、Steamでたくさんの人の目に触れる機会がある」に越したことはありません。逆に言うと発信力さえあれば別にぱっと公開してぱっと売ってもOKかも知れないんですが、私はそういう短期決戦に長けてないので長く置く方法を選んでます。

参考:Steamのマーケティングマニュアル「役立つ取り組み」

海外インディーレーベルだと、ページ公開→販売開始まで数年置いてるケースも割と目にします。置いてるだけでいいの? と思われるかもしれませんが、Steamでは関連ゲームにバナーを表示してもらえるし、この期間にイベントやプレスリリースなどで宣伝できると登録数がドーン増えます。ドーンとは、日本のオンラインイベント(ILEなど)出したら普段の数十倍増えるとか、そのくらいの数字です。

もちろん「ウィッシュリストの2割」説にも例外はあるので一概には申せませんが、私は特段の事情がない限り、急いでローンチせずなるべく長くストアに置くことにしています。

例外として、時代に乗りたい時事ネタ系のゲームは、速やかに販売開始するのが良いかも知れませんね。

販促の役に立つか謎なSteam機能色々

言うて私もSteamで販売したのは4本程度なので「やっておくといいorやらない方がいい」か、良く分からないこともあります。

例えば「体験版」、私は自力販売している4つのゲーム全てに体験版をつけています。しかし「体験版を遊んだ人が実際に製品版を買ったか」どうかはよく分かりません。もしかするとどこかにそういうグラフがあるのかも知れませんが見つけられないのです。

体験版は中国などで割とどっさり(数千とか)ダウンロードされます。しかし、じゃあ中国でそのゲームがたくさん売れるかというとそうでもありませんでした。

しかも製品版とは別に体験版のページも必要ですし、「製品版をローンチしDLした後は体験版にアクセスできなくなる」という謎システム(おそらく購入した一般ユーザーが体験版にアクセスしてしまうと混乱するため、開発者も同様の扱いになっている)により、ローンチ後に体験版を動作テストするためだけにアカウントをもう一個作ることになるなど、手間です。

しかし、発売前にフィードバックを得たい、Steam Next Festival(以下:SNF)に参加したい等でしたら大いに出す意味はあります(詳しくは後述)。私はSNFで体験版を遊んだ人からのフィードバックにすごく助けられました。

ところで体験版は「Trial」ではなく「Demo」表現が一般的っぽいです

体験版以外で、役に立つかどうか謎な販促手段としては「キュレーター」があります。知り合いの開発者さんは効果ありと言っていましたが、体験版と同じで「キュレーター経由で購入されたか」は調べ方が分かりませんので、なんとも言えないです。

また「アップデート露出ラウンド」も購入に繋がった数字の見方が分かりませんが、うちの場合バナーのクリック率が1〜2%UPしたっぽいし使える機会も限られてるのでやらないよりはやる方が良さそうです。

Steam Next festivalに参加しない手はない

個人だとオンラインイベントなんかにゲームを出展するのは有効な販促手段ですが、参加費が高かったり審査があったり手続きが手間だったりします。「Steam next festival」はそんな諸問題を一気に解決してくれる、条件さえ満たしていれば「無料、審査なし、手続きの手間ほぼなし」で参加できる、しかもかなり効果が高いイベントです。

これに参加することなくSteamでゲームを売ることなかれと言えるほどです。本当は他の人に教えたくないくらい。

詳しくは以下の記事に書いていますので一部引用します。

SGFは発売前(Steam側から提示される期間内)の、すでにストアページがあり、体験版のあるゲームしか参加できないので、参加できる機会は限られています。つまり出展できるゲームは多くないので、ユーザーの目に触れる確率が高い。そしてSteam内部の企画であるため、ストアページと体験版が準備できていれば、参加登録する際に改めて入力しなければならない情報や準備すべき素材がほとんどないので、手間に対してリターンが異様に高い

一回しか参加できず、ローンチ後は参加できない希少性の高いイベントです。ぱっと見、ライブとかしないといけないの? よくわからないな〜と思ったんですが必須ではなく、私の場合は登録して置いとくだけでも効果がありました。

ただし、Steamは英語圏に強そうなプラットフォームなので、英語で体験版を出せていないなら参加する意味は薄いかも知れません。

外部販促よりもまずはSteam内製の販促方法を活用

自分のところにもインフルエンサーを名乗る人から「実況してあげるからゲームのコピーをくれ」というメールが数多く届きますが無視しています。ビジネス英語に長けてもいない者がSteam外の海外販促を用いるべきではありません。以下の記事が参考になります。

Steamにとってストアを持つ開発者は取引先でありパートナーでもあるので、効果がよくわからない販促を勧めてお金を払わせたりすることはありませんが、外部ではあり得ます。個人開発者が無駄撃ち広告で枯渇すればSteamにとっても痛手ですが、外部の人らは数字が出なくても広告料が入れば痛くも痒くもありませんから下手すりゃカモられて終わりです。湯水のように広告を打てる財力があるなら別ですが、Steamコミュニティを放置しSNFにも参加せずSNS広告を出すといった既に用意されたSteamの販促フォーマットを放置して外部販促に手を出すのは間違っていると思います

比較として、私はitch.ioでもゲームを販売したことがありますが、地味ゲーだったこともありローンチ以降はページへのアクセス自体がほぼゼロになりました。また某情報筋からSwitchストアも「セール以外で人目に止まる仕組みはない」と聞いています。つまり、itchもSwitchも一回落ちたら這い上がるのはほぼ無理なんじゃないでしょうか。

一方Steamでは自己販促が十分にできてなくても地味ゲーでも、細々とではありますがウィッシュリスト登録やアクセスが途切れることがありません。ウィッシュリストのお知らせ機能、バナーが関連ゲームに表示されるなど、さまざまな仕組みがあり助かっています。

前述のSNFのような効果が高いイベントでも割とSteamからは「こんなにすごい販促効果が!!」みたいな感じが一切ないシレ〜っとしたメールが一本届くだけなんで、外部を頼りたくなりがちですが、Steamの売上に悩むならまずバナーやメタデータを丁寧に揃え、早めにページを公開し、ローカライズやセールなどを着実に行うといった基本的なことを先に済ませるのがお勧めです。

ところで「ウィッシュリスト登録が少なくても後から販促を頑張ればいいのでは」説もあるとは思いますが、Steamの仕組み上、初速で波に乗れると「売り上げ上位」などに表示されますし、おすすめ表示率も上がるっぽいので、しつこく申しております。

Steamの販促イベント情報発信、拾いそびれがち

上述の「Steam Next Fest」や季節セールのお知らせはメールで届きます。しかし、ありがちな営業メルマガのようにしつこくはなく一回しか届かないので、見落とすと終わります。

主要なイベントなどのお知らせは、steamworksにログインした右側に表示されています。しかしこれも割と目立たずひっそりとしています。

さらに、あらゆるお知らせや通知が届くかというとそうでもないようです。私も細かい仕組みがいまいちよく分かりませんが、例えば「コミュニティに書き込みがあった」メール通知があると良いなと思うものの、今んとこ見当たりません。

ストア、ビジネス利用というと、頼みもしない通知がバンバン飛んでくるイメージですが、Steamはそういう仕組みじゃないようです。待っているだけでは情報の拾いそびれがあるため注意が必要です。私はsteamからのメール受信専用アドレスを作ることで、見落とし率を下げています。

セールは徐々に割引率を落とすといいらしい

セールのマニュアル「割引のベストプラクティス」にも書かれています

通常、時間と共に段階的に割引率を上げていくのが最適です。 例えば、1年より長い時間をかけて 33%、半額、66%、75%へと割引率を徐々に移行していくのがいいでしょう。 ローンチ直後に半額や75%引きといった大きな割引を急いで行うと、定価で購入した顧客に悪い印象を与えるばかりか、製品価値へ悪影響を与えます。

私の知る限り、多くのパブリッシャーさんもこの方法を選択されています。セールするとウィッシュリストに入る数も増えるので、セール→ウィッシュリスト増加→セール→…… といったサイクルを繰り返すのが有効のようです。

それらに先駆けて、発売時のローンチセール%をどうするか? は、そのゲームの長期販売計画や性格をうっすら暗示すると思いますので、慎重に決める必要があるでしょう。例えばいきなり半額ローンチとかやっちゃうと、その瞬間は売れそうですが、今後も安売りしてくれそうなゲームに見えてしまいがちです。

個人開発・販売なんで好きにやればいいんですが、いきなり大安売りすると定価で買った人に悪感情を抱かれたりして、後々響きそうです。もちろん、売り上げが思ったより良くないとか、当面の生活費が欲しい場合はこの限りではありません。

販促がんばっても厳しい世界ではある

世界規模であるSteamのプレイヤー数は多い。じゃあ全てのゲームが売れるかというと、そうではありません。

以下のツイート、どうやって数字を算出&分析したのか分からないんですがご参考までに。

なんか「ヒッ…」てなりますね

ゲームがなかなか売れない場合、「面白いのに知られていない」だけとも考えられます。しかし、知られた=買われるということでもありません

私も実感があるのが「有名な人に実況してもらったけど売り上げにはほぼ影響がなかった」というもの。認知度が上がったとしても、ターゲットプレイヤーに知られなければ販促の意義はあまりありません。

まずは売れるゲーム作る、話はそれからですね、いやそんなこと分かってるんですよ、それができるんなら苦労はしませんね。

セールス方法に答えや正解はない

ここまで書いておいて何ですが、そもそも販促において絶対にこうすれば売れるみたいな方法はないはずです。あったら私が教えて欲しい。

例えば「全く同じゲームを同じ媒体で同じ時期に異なる販促をして比較」すれば、どちらの販促が優れているか分かりますが、そんなことは不可能です。

近い方法として「ABテスト」なるものがあるそうですが大変そうなのと分析が苦手なので私はやっていません

他の記事でも書いている通り、売れても売れなくても責任を取るのは自分なんだし、好きにやって悲しんだり喜んだりするのも自由だし、それも身軽な個人開発&販売の醍醐味です。

とはいえこんな記事をここまで読んでくださった人は、きっとSteamで売りたい人かと思います。お気持ち察します。察しますが私は「パブリッシャーに任せるのがおすすめ派」でもあります。

開発だけでも大変なのに売るのはもっと大変かもしれない

そして、色々書きましたが全部やるのは本当に面倒です。分かっていても完遂が難しく、今回は仕方ないと諦めてローンチすることが私にもあります。

ご自身のゲームがSteamで売れなかったからといって、必ずしも=面白いゲームではない、ということはお伝えしておきたい。売り方の問題っぽいな~というケースも多く見受けます。

「なぜこんな面白いゲームが売れてないのか?」逆に「なんでこんなのが売れてるの?」はゲームあるあるだし、それはSteamも例外ではありません。


おまけ:Steamセールスの参考になりそうな記事


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