見出し画像

#Steam という名の戦地 〜自作ゲームを個人で販売してみた雑感メモ〜

個人でゲームを開発・販売しています。スマホではなくPC向けのゲームを個人開発する、というだけでも割とニッチなのにさらに「有料ゲームをSteamでセルフパブリッシュ(独力で販売、ストア管理、ユーザー対応などを指しますがこれは私の造語です)する」という極めてニッチなことをしています。

ニッチすぎて記事にして果たして参考に読まれる方はいるのか疑問ですが、備忘録も兼ねて配信前後の体験を書き留めておく、と見せかけて自作ゲームを宣伝します。主に「1人でやろうとすると雑務に振り回されがち」という話で、売り上げについてはほぼ触れておりません。

当方はテキスト系のゲームを中心にSteamでリリースしておりますが、サンプルは数本と多くありませんので、ご参考までに。


英語が思った以上にしんどい

他記事でも散々書いていますが、Steamとのやりとりは基本英語だし、マニュアルが日本語化されているといっても最新情報や一時的な募集などは一部放置されて英語のままだったりするのでまったく英語と無縁ではいられません

私は英語に苦手意識はありませんし、google翻訳の力を借りればまあなんとかなりますが、なにせ量が……そしてSteam内だけで通じる専門用語にはかなり悩まされました。以前も書きましたが英英辞典を引いている気分です。

実際にSteamであったのが、失礼ながら何言ってるかちょっとわからないユーザーの書き込みでした。

実況の許可テキストはちゃんと翻訳していただいたものを掲示していました

そもそも先方の書き込んだ場所が微妙で(いわゆる「スレ/カテ違い」)、話題の流れもよく理解されていなかったらしいことが別の書き込みで分かるまでかなり悩みました。自分たちの母国語でさえ誤字や勘違いが発生してしまうのですから、別言語を通すと新たな悩みの種になりがちです。

プロモーションが思った以上にしんどい

私が運営している自作ゲームのtwitterアカウントは(2020年7月現在)フォロワー数が2桁で、めちゃくちゃ拡散力があるアカウントだ、とは言い難い。この情報を広めたい、たくさんの人に知ってほしいと思ってもすんなり叶わず、特に面白いツイートを思いつくでもないので、ハッシュタグや英文を入れたりGIFや漫画にしたり、細かい努力を積み重ねる地味な毎日です。

右の画像が解像度足りてねえええって後から気づいた

ツイートはつぶやく時間やわかりやすい文言が割と大事と思っているのに、忘れてた、間に合わなかった、誤字、日付入れ忘れた、いや入れるんじゃなかった、と細かい悩み事が尽きません。ありとあらゆる不出来や失敗は全部自分の責任。それがセルフパブリッシュ。

配信後は割と知らん人から問い合わせが来る

日本国内からの問い合わせはほぼ届きませんが、英語の営業メールが割と来ます。ゲームが売れてる売れてないに関わらず、配信直後は1日に10通前後届きました。

・キュレーターです。ゲームを紹介するのでプロダクトキーください

・翻訳するよ!

・音楽作ってるから仕事依頼して!

・あなたのゲームを宣伝するよ!(誰?)

こういうのは「身元を提示している」「どのゲーム、という作品名が入っている」もの「以外」はだいたい無視します。入ってないやつはコピペーの営業メールでしょう。知らんけど。

「キュレーターにはプロダクトキー(プロモーションコード)を渡すべきか」問題について、私は最初は渡してたんですが、今は渡さないようにしています。うちのゲーム数百円なんで、いやそのくらい買ってよというのが正直な感想です。

どこかの記事で読んだ「キュレーターにキーをたくさん配ったけどレビューはそんなにいい評価をつけてもらえなかった」っていうのも引っかかっています。ゲームの好き嫌いはあって構わないし、お金払って買ってくれたお客さんが評価するならわかるけど、欲しいと頼んできたから無料で渡した人に低評価されたら、私だったらイラっとしてストレスになりそうです。

2024年8月追記:本来はSteamのキュレーターページ経由で送るようですので、メールでキーをくださいというキュレーターは詐欺である可能性が高いという認識でいます

問い合わせの「英語:日本語」割合は9:1でした。読むだけでも大変です。英語の営業メールは返事しませんって注意事項書いてますが未だに届きます。

売り上げや数字は大体先人の記す通り

販売前から、実際の売り上げやウィッシュリストの数字について気になるところではあったので、上記ブログを参考にさせていただいてました。

結果……「大体合ってる」といった所感です。

例えば返金(返品)率はアクションゲームの場合、記事のように10%ちょっとで推移しています。しかしノベル系ゲームの返金率は2%前後をキープしています。Steamでは、プレイ時間が2時間未満、2週間以内?なら返品が受け付けられたはずで、長く遊んでも2時間を切るゲームは返品ラッシュを心配していたのが、今のところ大丈夫です。ジャンルが違えば客層も違い、結果として売れ方やレビューの差として反映されるという実感です。

ゲームによっては、思った以上に日本国内で売れるものもあれば、海外、正確には欧米圏で全くと言っていいほど売れないものもあります。ノベル系は海外8:日本2 だったりするので、やはりゲームによって傾向が異なるのでしょう。

売り上げ的なことですと、現在発売中のゲームだけで生活費すべてが賄えるか? というと、そんなことはなく、ローンチ直後やセール時を除けば日々の売り上げは多くありません

あと売り上げで気になるところが円/ドル相場です。例えば2.99ドル設定で1ドル100円とすると、日本だと300円くらい。それがロシアで売れると関係で100円ちょっとにしかならない。といった具合です。

日本やアメリカは物価が高く、私は「Steamオススメの価格自動設定」を採用しているためこうなるもので、もちろん国ごとに手動価格設定をすることはできますが、各国の物価を個人で判断しレーティングの変動に合わせて都度変えるのは実質不可能なので「Steamオススメの価格設定」に頼るしかないのが現状です。

ニッチなので相談や質問できる人が皆無

これは言わずもがなですね。寂しい。個人開発者さんはタイムラインに結構いますが作られているのはスマホや無料ゲームが大半で、さらに自分でSteamで販売している、という人はほとんど存じ上げません。

あと困っていることを呟いたり失敗談を挙げるとスマホ勢とか元業界の人、とにかく「Steamでの販売はおろかPCゲーム個人開発すらしたことない人たち」から「こうすればいいんですよ」と指摘が飛んできたり、SNSで引用され「答えはズバリこうです」などと持論を語る材料にされます。複数人にこれやられてマジギレしてnoteの記事を消したりしました。

私がスマホとか往年の業界に向けて公衆の面前で「彼らはこのような失敗をしています。私はこうすればいいと思います」と言ったら相当クレイジーだと思うんですけど逆はいいんでしょうか。あと予算も納期も人脈も関係ない前提で「こうすればよい」と語られるのはなぜなんでしょう。個人開発だってありますよ。お互い大変ですね〜ではダメなんでしょうか。

ゲームをSteamで個人販売することのメリットとは?

個人開発ゲームを自分で販売するメリット……まず身軽である、ということ。そして売り上げのうち自分の取り分が多いこと……あと自分の意思にそぐわないセールや宣伝をされずに済むということくらいしか思いつきません。

一般的に売り上げの取り分は開発者7:パブリッシャー3と聞きます。Steamにまず3割払った後の話なので、1000円のゲームでパブリッシャーなしなら自分の取り分は700円、ありなら490円となります(ここから税金とか円ドルの影響もあるので、あくまでざっくりの数字)

以前も書きましたが、特に複数人ではなく1人で取り組んでいる個人開発者であれば、自分が作ったゲームが悪く言われたり、売り上げが悪かったりすると全部自分の責任になってしまいます。そこへ、また審査リジェクトされた、今日はなんて呟けばいい、誤字った、といった細かな心労が重なり、とどめに海外からキーくださいメールが矢のように届くとかなり辛いものがあります。

私には同じ個人開発者の同僚がおり、当たり散らしたり知見を分けてもらったりしてなんとか乗り切っていますが、もし一人でいたら挫折するか気が狂っていたかもしれません。

パブリッシャーさんに任せる? でも、お高いんでしょう?

パブリッシャーさんが得たお金の分働いてくれていないとしても、「ちゃんと宣伝してくれていないのでは?」「戦略が間違っているのでは?」「また誤字ってる」「返事が遅いから最良の結果が得られなかった」などと(言葉は悪いですが)人のせいにして、自分の責任や罪悪感を軽減できるという側面は捨てがたく、そのためにお金を払うといっても過言ではない気がしています。

他方、この一本に賭ける!という重みをもって年月をかけ作られたゲームではなく、とりあえず次から次へ出して様子をみたいので身軽に気軽にやってみたい、というかたはセルフパブリッシュに挑戦してみるのはありかと思います、なにせ個人なんだから好きにやればいいんです、が、過去に関わった作品でパブリッシャーを通したとはいえSteam販売に携わった経験があり英語もちょっとわかって広告業界に勤めていたうえ2〜3本セリフパブリッシュやってみた私から申し上げます、

セルフパブリッシュはおすすめしません。

もし私の知り合いが、自ら作ったそこそこ面白いゲームを「Steamで自分で売ろうと思ってるんだけど」と言ってきたらまず止めるレベルです。ただしそいつが嫌な奴やったら「やってみるといいんじゃないですか!」と笑顔で送り出します。あれは実質戦地です。ゲームの良し悪しや売り上げだけではなく、まつわること全てと戦わなくてはなりません。下手をすると傷ついて二度と戦えなくなるでしょう。

鋼のメンタル持ってて大雑把な性格の方なら平気かも知れませんが、そもそもそんな人はこんな記事をここまで読んでくださっていないはずですよね。

Staem関連記事

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?