初心者がゲーム用のシナリオプロットを完成させるまで
個人でゲームを開発しています。主な担当パートはシナリオと企画です。
過去何作か物語性のあるゲームを完成させてきましたが、どれもこれも自己流で、シナリオ作りを体系立てて学べていないため「組み立てに難がありリテイクを重ね力技でそれっぽくまとめる」のを繰り返してきました。
過去作は主なメンバーがプログラマさん+私の2人体制だったので乗り切れたのですが、次回作はチーム制作で、プロットを他の人にチェックしてもらう必要があります。
改めて高評価のシナリオ技術書を読んだり、試しにあらすじを書いてはみましたが、思うように進みません。
まずい。終わらん。これでは今までの二の舞になってしまう。一体どうすれば……?
どんな資料を参考にするべきか?
わからんなりにネットで調べたり、シナリオの技術書を買って読んでみたりして気づいた問題点、私の場合は以下の通りです。
「◯◯のシナリオ術」的な本は……
→欲張って広く勉強しようと「一般的なシナリオ論系」を選書したため、ゲームにも応用できると思えた箇所は少なかった。せめて「ゲームシナリオ」の教本なら合ってたかも知れないけど、そもそも私はシナリオよりもプロット作成が苦手なので教科書の選定を誤っている。
「ゲーム シナリオ プロット」などで検索した記事は……
→例えば「プロット」「ログライン」など用語の定義が人によってバラバラで、どれを採用すればいいのか分からない。詳しい記事をたくさん読むほど混乱してしまいがち。
上記のことから私の場合、
-背伸びして難しそうなものに手を出さない
-他ジャンルの技法をゲームに置き換えるのは難しい
-自分向けに用語を定義する必要がある
……以上に注意する必要があります。
足りないのは優しさだった? 突然の師父認定
特に調べたことを何も活かせないまま手癖でプロットを書き進めちゃあ消してしつつあったある日、ふと検索して見つけた上記の記事。
ラノベ系の記事ではありますが、自分に必要そうな箇所を通して読んだところ、
-大規模、ど王道を前提としていない
-売ることやエンタメ(大衆)性をある程度考慮する
-こうすべき! ではなくこういうのもありますねという論調
以上のことから自分にも理解しやすく、かつゲームシナリオのプロットに応用できそうな部分がたくさん読み取れました。
中でも目を引いたのは以下の記述。
えっ……やさしっ……。
言われて気付く、私はいつも納得いくプロットを完成させられずに終わってきたことを。そうか、私は途中で疲れちゃってたのか。それに気づかず無理やりやらせようとしてすまなかった。よし、今回は疲れないことと、完成させることを最優先にしようと決めました。
ここからは鎌池さんを勝手に「心の師父」と認定し、上記記事を読み解きながらプロットを作成してみます。ちょっとキモいけど許してください。
なお、師父はめっちゃ有名な方なのですがあいにく私にラノベの素養はないため、本稿中おもむろに師父の作品を宣伝します。
デビュー15周年おめでとうございます。
「今回、私は」なんのためにプロットを作るのか?
プロットを作る目的は当然「ゲームシナリオを面白くしたいから」に他ならないのですが、考えてみればチーム制作と個人制作では「人に見せる・見せない」という点で前提が大きく異なります。「プロジェクトごと・その人ごとに必要なプロットは異なる」のなら、「今回」「私」は「なんのために作る」のか? 改めて書き出してみました。
-何を書こうとしてるのか整理し、忘れないようにしたい(備忘)
-チームメンバーに見せられるようにしたい(共有)
……ということは。
-自分が忘れなさそうなことは書く必要がないかも
-他人が読んでもわかる面白さと情報を中心に書く必要がある
例えば私はついつい思いついた台詞をプロットに含めてしまうのですが、他の人がそれだけ読んでもなんのことかわからんことは今回、書くべきではなさそうです。台詞まで書く必要があるのは設定や世界観の根幹に関わるような場合であって、単にかっこいいだけの台詞などは脳内に納めておくのがよさそう。
例:名探偵コナンの場合
-「真実はいつもひとつ!」作品の根底にあるテーマなので書く。
-「らーん!!」決め台詞だが別に書く必要はない。プロットに必要なのは「幼馴染の蘭を大切に思っており、守りたい」等の情報。
以上のことから今回、私の場合プロットに含める・含めないの基準を「それがなくても物語の面白さがチームメンバーに伝わる場合は省くべきだ」で統一します。
ここでおもむろに師父の関連作品を宣伝。
ゲーム向けに書くべきこと、書かないことの取捨
私の場合、プロットを作る際に「苦労しない」点も挙げておきます。
-テキストを書くのは苦ではない
-アイディアを出すのにあまり苦労はしない
……なら逆に「書きすぎているのでは」? つまり勢いよくひたすら書いて肥大してしまい、収拾がつかなくなって頓挫した可能性が高い。
自分が得意だと思ってたことが逆に完成を妨げていた……だと?
そこで「取捨」の内いかにして「捨てる」かに着目してみます。
今回、疲れて頓挫しないために決めたことがあります。それは「システムに影響することはプロットに書かない」。
いやいやゲームはインタラクティブ要素あればこそじゃない? その通りですが「それらがプロットにもないといけない」かというと、どうでしょうか。
私は上記の考えに囚われて、あれもこれもと入れたことがプロット完成を妨げていたのだと、師父の記事を拝見して気づきました。
つまり、ゲームのプロットだからといってゲームならではである必要はない。ここを混ぜると(慣れた人ならともかく)素人のわたくしは完成が遠のくだけとわかったため、今回はゲーム系要素ほぼ無視でプロット完成を優先します。
例えばゲームならではの「マルチエンディング」。Aを選んだ場合はバッド、Bを選んだ場合は……などとプロットに書くとキリがありません。ですので、例えば私がこれらをプロットに落とし込む場合は、
1.まずトゥルーエンド系のプロットを完成させる
2.1の最後にマルチエンドで○種類ある、と箇条書きにする
3.2は、エンド内容を予想できるタイトルをつけるがそれ以上は書かない
……以上にとどめて、ゲームっぽい内容は後日別にまとめることにします。おや? 「後日別に」ということは、プロットにも段階があっていいのでは?
ここでおもむろに師父の関連作品を宣伝。
プロットにも段階があっていい
あれ? 師父? プロットとあらすじはそういえば別なんですね?
師父! プロットとあらすじは別なんでしたね!!!!(再)
なぜ私は「いきなり100%完成形のプロット」を目指そうとしていたのか。
考えてみれば、ストア紹介文などに採用する物語の概要(「メタデータ」と呼んだりします)も別であり、それはそれで作れば物語のどこが面白いか分かるもの、しかも短文、その割に中身を濃くする必要があって重要、だから何ならプロットより先にメタデータ作ろうって思ってたのに「早くプロットを完成させなくては」という考えに囚われ、すっかり抜け落ちていました。
以下、ゲーム用シナリオ構成のための準備物を自分用に整理&定義します。
-メタデータ:ユーザー向けなのでわかりやすさ、興味を引けるか、面白さが伝わるかが重要。短い方が読んでもらいやすい。これのみ外部=お客さん向けなのでネタバレはダメ。
-あらすじ:ネタバレして最後まで書かれているもの。流れがわかれば面白さがわからなくても良い。今回は関係者向けの下地として、かつプロットの下準備として備忘要素を書く。物語全体の起承転結が描ければベストだが、まずは欲張らない。
-プロット:あらすじを発展させた「面白さがわかる」もの。師父のサンプルプロットをなぞらえる+章立ての起承転結を意識して書く。今回はこちらの完成を本稿のゴールとする。
-ゲームプロット:上述で作ったプロットに「ゲーム性」を加え、例えばメインorサブシナリオの別や、マルチエンドがどんな内容かなど「シナリオがゲームに与える影響」を考慮して作るもの。自分が今まで作ろうとしては頓挫していたものの正体はこれ。今回は制作の対象外とし後日完成を目指す。
私の場合「100%完成! 終わった! はい次!」という作り方が苦手で「ご飯→おかず→味噌汁→おつけもの→ご飯……」みたいにちょっとずつ食べて完食を目指す方がやりやすいので「あらすじ⇄プロット」の2種類を行き来することにします。
ここでおもむろに師父のwikiを宣伝。
サンプルプロットの分析とルール設定
プロット作りに取り掛かる前に、師父が書かれたサンプルプロットを分析します。
タイトル
テーマ:物語のジャンル、大枠、物語の個性
主要キャラクター:基本情報と個性、物語で果たす役割
舞台設定と時期:場所と季節、文化的な背景
用語:作中の固有名詞とその説明、世界のルール
章立て:プロット本体+括弧で内容を分ける
師父の括弧ルール:
《二重括弧》章の最初に入れ、その章で「書くべき情報」。読者向けの面白情報ではなく、システム的な流れの説明。
【こういう括弧】まだ決まっていないことや、どちらでも構わないアイディア。
師父がこうおっしゃってますので、今回、上記にプラス私の場合はプロット作成のメイン目的である「共有」のために、-ハイフン箇条書きで章の最後に「どうすべきか悩んでいて要相談の項目」を加えたい。
分析+自分の場合はどう進めるべきかが整理できて準備万端、プロット作りに取り掛かりましょう。
いよいよプロット作成、完成なるか?
以上を踏まえ実際に作ってみた「ゲームのシナリオ用プロット」の一部を載せます。守秘もあるので、部分的に伏せたり、あやふやにしたりしておりますことご了承ください。
良かれと思い表計算系ツールを使うとどんどん列や行が増えるので、今回は師父にならってワード系のツールを採用。まず下準備として、アホなのでど忘れ防止に本稿から何を書くべきかやルールをコピペ〜し目次を作ります。
自分にしてはいつもより細やかさに欠ける内容ですが、疲れないこと、完成させることが目標なので、一旦こんな感じで最後まで走らせます。
今回、チームで共有するのはひとまずプロットの序章〜第一章までと決まっていますので、「その章で書くべき情報」「プロット」ともにその範囲に収めました。
第1章は引きで終わるので「続」でOK……あれ?
できたのでは?!
書き始めて2日、時間にしておそらく4〜5時間ほどで、いつも陥りがちだった「終わりまでたどり着けない」「ゲーム性も含めて混乱する」「あれもこれもと書いて常に延長戦に入る」からは抜け出せました! やったーできた! 私にもできましたよ師父!!
やってよかった点:
-いきなり壮大で完璧なゲームならではプロットを目指さない
-目次をつけた。長くなっても頭出ししやすい
-プロット自体のタイトルや項目名をきちんと命名して迷子防止
-ゲーム性の部分は「物語」として処理
(×戦闘が3回発生 →◎ライバルと連戦)
-基本は師父のプロットサンプルをなぞり、自己流技は少なめにとどめた
-用語やキャラの説明は別立て、プロット中で説明はしない
出来上がったものを読み直してみると、物語だけに集中したことで、ゲーム性を併せて考えるよりも粗がはっきり分かり、直すべきところが見えてきました。あともう少し手を入れれば当初の「チーム内で共有する」目的は十分に果たせそうです。
プロットに限らず何かがうまく行かない、完成しない理由は突き詰めてみると人それぞれ、個性があるものです。大衆向けの一般論を勉強してみるのも大切ですが、それでもうまくいかないときは、自身の進捗を阻害するものの分析と言語化を試みることが、未完成という暗い穴から救い出す「自分専用の蜘蛛の糸」になりうるのではないでしょうか。本稿はあくまで私個人のケースですが、ここまで読んでくださった方のヒントになれば幸いです。
最後にこの場を借りまして、ご本人は期せずやさしさという大義で救ってくださった師父に御礼申し上げますとともに、今後のさらなるご活躍をお祈り申し上げます。
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