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個人開発ゲーム販売にパブリッシャーは必要か

以前開発に関わったゲームはパブリッシャーさんを通して販売してもらい、無料配布ゲームの頒布やイベント出展などもお任せしていました。

個人的にはお願いしてよかった。できれば次もお願いしたい。

パブリッシャーさんて何してくれるの

会社によりますが、主に広告販促や窓口、イベント出展やプロモーション、コンシューマへの移植、難しいところではCEROの申請代行などを担ってくれます。他にもローカライズやテストプレイを併せて行ってくれる会社もあります。特定のジャンル、どんな媒体、海外or日本の販路に強いなど特徴も様々です。

費用や売り上げはどうなるの

私がお世話になった会社さんは(当時)上述の全てをお願いできる、どっちかいうと日本国内の販売に強い会社さんで、売り上げ比率は開発側:パブリッシャー=7:3が基本で、売り上げから引く形でした。契約金などを事前に支払う必要がなく、初期費用の心配がいらないのは大きかったです。

この7:3については、販売サイトなどを通すと割合が変わり、例えばSteamで販売するとなるとさらに引かれます。まずパブリッシャー:Steam=7:3になり、残った金額に再度上記が適応されるみたいな感じだったと思います(あまり気にしていないのであやふやです)。

ローカライズや移植費用などは事前に「どうしましょう?」と打診があり、費用なども提示してもらえます。「このゲームならローカライズ/移植しても元が取れる」という算段を先方が立ててくれるので、心強いです。どうやっても売れなさそうなら声はかかりません。

パブリッシャーさんにお願いしてよかったこと

個人開発なので、以前は共同開発者のメールに海外からよくわかんないメールの問い合わせ(取材したい、うちでも売らないか、プロモーションコードください、ファンです、など)が届いていて、対応に時間がかかっていました。地味に辛かったので、共同開発者の連絡先をサイトから削除し、何かあればこちらへ、とパブリッシャーさんの連絡先を掲載したところ、問い合わせがピタッと止みました。必要な問い合わせはパブリッシャーさんが対応してくれ、精査された内容のものだけが転送されてくるようになります。外国語に割と強いパブリッシャーさんだったので、英語その他言語圏からの問い合わせもスムーズに対応してくださっているようです。

私は元々広告業界にいたので、プロモーションを考えるのは好きですが、それよりもゲーム開発に時間をかけたいので、セールやお知らせ、売り方などを一任できたのも助かりました。先方が続けてこられたSNSアカウントのフォロワーも多く発信力があるため、自分のSNSに面白い投稿してファンを増やして……といった過程が省けます。

また、パブリッシャーさんには売るためのノウハウがあり、「ここで何パーセントオフでセールをしましょう」といった提案もちょくちょくいただけて、数年前に発売したゲームでも引き続き売っていただけるのもありがたい。

パブリッシャーにお願いして良くなかった点

あまり思いつかないですが、無理やり挙げると「セール以外にプロモーションが思いつかない自分が無力だと感じる」くらいです。

気になるところとして、今回のケースはネームバリューがある人がメインで開発したゲームだったため、もし私個人でひっそり売れなさそうなゲームを持ちこんでも丁重に扱ってもらえないのではという不安はあります(※2021年4月、本記事末尾に追記しました)。

パブリッシャーさんを通した方が良さそうなケース

こんな人、あるいはこういうケースはパブリッシャーさんを通した方がよさそう、と自分が思う例を挙げておきます。

「もう若くない」人はいつか死にます。それが今日か数十年後かは分かりません。若者なら、これから営業を学んで将来に活かしたり、失敗しても立ち直る時間が結構あったりします。しかし若者と比べると若者じゃない人の方が残り時間が少なく、社会的責任が重かったり、家族を養っていたりするケースが多いことでしょう。「売ることで悩んだり時間を使うくらいならゲーム作る時間に充てたい」という開発者さんには、パブリッシャーさんを通した販売をオススメします。

「人とコミュニケーションをとるのが苦手」個人開発者だと、直接取材等されることもあります。特に目立ったり、自分の名前を売りたいわけじゃない開発者さんは、パブリッシャーさんにその旨を伝えましょう。ちゃんとした会社さんなら理解を示した上でどうするか考えてくれるはずです。とはいえパブリッシャーの担当者さんとは最低限のやりとりをしないといけませんが…。

「ゲームを売って収益化したい」売り上げ10のうち3持っていかれるのを多いと感じるかも知れませんが、個人販売だけで運悪くバズらなかったり人の目に止まらなかった場合、そもそも10売れるのか? と考えると…。市場でいうと日本の人口1億ちょっとに対し海外は60倍くらい販路があるわけで、海外展開には希望があります。海外で売るなら、パブリッシャーさんを通さない理由はないはずです。たとえ自分が英語ネイティブだとしても、中国語は? そして「英語ネイティブ」ということと「英語のローカライズができる」あるいは「英語で営業ができる」ということは別です。あと時差とか地味につらい。

最近は個人開発のゲームをコンシューマに移植して販売してもらえる機会もあります。門戸は割と開かれている印象ですが、やはり「法人でないと契約できない」というハードルが生じることもあります。その点、実績のあるパブリッシャーさんならクリアにしてくれるので頼もしいです。

別に売れなくても構わない、海外展望も考えていない人は個人で売るのもいいと思います。

「自分が作ったゲームの価値が良く分からない」パブリッシャーさんに持ち込めば、どういった層に売れるか、そもそも売れそうか考えてくれます。漫画を編集部に持ち込むみたいなものでしょうか。もちろん、ジャンプで売れなさそうだからといって絶対に他誌で売れないことはないし、ゲーム関係者の皆さんから聞いたところ「なんでこれが売れたか分からんゲームがある」、あるいは「企画段階でそのゲームがどれだけ売れるか正確に予言できたらその人は神」だそうですので、ゲームが完成したら何社かに話を聞くのもオススメです。

つまり「若くて時間も体力もめっちゃある」「外国語に堪能、営業もプロモーションも得意」「作ったゲームに自信があり、有名になりたい」「純粋に自分のちからでどこまでやれるか試したい」「既に有名人なので発言力がある」といった人は、別にパブリッシャーさん通さなくてもいいんじゃないでしょうか。

パブリッシャーを通すのは敷居が高いと感じるなら

極端な話「売り上げの一部をピンハネしていないか」「必要な情報を知らせてくれないのでは」など、疑ったらキリがありません。人を信頼して仕事を任せられないなら、パブリッシャーを通した販売は向かないです。

そうは言っても、個人で売るのは限界があるから試しにパブリッシャーさんで販売してみたい、という人は、「専売でなくてもOKなところでまず売ってもらう」あるいは「短期お試し契約ができないか交渉してみる」のがいいと思います。具体的には「Steamではパブリッシャーを通し、Appストアでは自力で売ってみて比較する」等です。以前リリースしたゲームはこの方法で販売しましたが、アプリ版はセールをするタイミングも分からないし、英語での情報発信が難しいといった問題を解決することができませんでした。

「せっかく作ったんだから売れて欲しい」なら

ゲームを作って、たくさんの人に遊んで欲しい、できれば儲けたい、という考えは、私は好きです。「面白いゲームを作れば、必ず話題になる/売れるはずだ」みたいな話をたまに聞きますが、実感としてそんなことはありません。「雑誌に載っていた/話題になっていたから買ったけど楽しめなかった」ゲームを買ってしまったことは、一度や二度ではなく、逆に「面白いのに何でマイナーなんだ?」というゲームもいくつか知っています。似たような面白さのゲームがあるとして、広告販促にちからが入っているゲームの方が、そら売れます。

大きい企業ならともかく、個人開発の場合、開発者が死ねばゲームも死にます。生活費が乏しかったり、別の仕事に追われ続けていては完成しません。スムーズに売ることが開発を続けることにも繋がるはずで、そのためにパブリッシャーさんを通して販売するのはオススメです。


※2021年5月追記:本記事を書いてかなり経ってから自作ゲームをパブリッシャーに持ち込んだところ、残念ながら懸念した通りになってしまい、現在私は孤独なセルフパブリッシュを続けております。詳細は下記記事の中盤以降をご覧ください。

新しい記事もご参考までに。

2023年10月追記:パブリッシャーに任せない方が良さそうな人向けの記事もまとめました。


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