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Mais je parle français !

昨日の記事に書いたように、フランス語と英語には皿を表す語が二つある。

仏:assiette, plat
英:plate, dish

紛らわしいのは assiette ≒ plate, plat ≒ dishであり、よく似た字面の plat ≠ plate であることだ。

フランスのレストランで日本人達と食事していたとき、私は給仕におおよそ次のように頼んだ。

Quatre petits plats pour partager, s'il vous plaît. (取り分けるための小さい皿を4枚お願いします。)

何を言っているのか理解できないというような顔をして黙っているので、身振りも交えながらもう一度繰り返したが、やはり怪訝な顔のまま一言も発することなく厨房に消えていった。

あの時 assiette という語は頭から抜け落ちていたが、plat という言葉が問題だったのだろうとは直感的にわかった。これは料理を指す言葉でもあるから、注文した料理がまだ届いていないと言っているように聞こえたのかもしれない。でも状況的に言いたいことはわかるだろうにね、と話しているうちに quatre petites assiettes が運ばれてきた。意図は通じていたのである。

今振り返ってみると、取り皿はあくまで assiette であって、plat を使ってしまったのは明らかな誤用だったと思う。しかしあの給仕の反応が示すほど理解不能な発話だったのかというのが疑問で、ずっと違和感が残っている。「つまり assiette のことですか?」と確認するくらいのことは彼にもできたはずだ。

そこで思い出したのが "But we're speaking Japanese!" である。

この動画は日本人の給仕が日本語を話す外国人風の人達に一切耳を傾けず、日本語を話さない日本人風の人にばかり話しかける滑稽な場面を描いたもので、300万以上も再生されている。

最初に見たときは、こういう非常識な日本人も中にはいるかもしれないが、誇張しすぎだろうと思った。実際に日本語で話しかけられているのに悪意もなくコミュニケーションを拒絶することがありえるのだろうか、と。

しかし以下の動画を見て、これが誇張でもなんでもないことがわかった。

この動画は、先程の動画を日本人の若者に見せ、動画の要点は何か、どれくらいの再生回数があると思うか、あの給仕についてどう思うかを質問した内容になっている。

誰一人として核心をついていない。「外国人から見た日本語の素晴らしさみたいな感じですかね」「ジェスチャーとかで伝えようとすれば(よかったと思う)」など衝撃的なコメントが続く。日本人がこういう人達なのであれば、中にはあのような行動をとる人がいても納得してしまう。

彼もフランス語を話すはずのない顔の客からフランス語が出てきて混乱したのだろうか。"Mais je parle français !" と言ってやればよかった。

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