『カムカム』の神回と名言を振り返る

長丁場の朝ドラや大河ドラマ。様子見で見始めた視聴者の心をがっちり掴む瞬間というものがあるもので(ない場合もあり)、現在放送中の『カムカムエヴリバディ』はどの段階だったか。

こういう場合は「神回」と称される記事を検索するのが近道。『カムカム』の場合、初出は恐らく第8話。安子(上白石萌音さん)が家業のために見合いを決意し、最後に恋する稔(松村北斗さん)と大阪で会い、独り岡山に帰ると、稔が追いかけてきた回です。通常と違う、主題歌「アルデバラン」のタイミングが絶妙でした。

『あさイチ』朝ドラ受けまでが朝ドラ、などといわれるだけに、その関連の記事を探すと、第19話は鈴木奈穂子アナの号泣回。気力を取り戻した安子の父・金太(甲本雅裕さん)が息子の算太(濱田岳さん)の幻を見るものの、翌日亡くなっていたことが見つかったとナレ死。

るい編ですと、まずは52話。錠一郎(オダギリジョーさん)に告白されるも、額の傷が気になって躊躇するるいが、試着室の鏡越しに傷を見せ、ジョーがそっと抱きしめるシーン。第38話で、るいが安子に傷を見せ『I hate you』と拒絶したシーンが伏線として効いていました。

トランペットが吹けなくなったジョーが、海に入水するのをるいが止めた59話も美しいシーンでした。「あなたとひなたの道を歩いていきたい」と安子と稔の間でも交わされたセリフがオーバーラップ。重層的な感動が押し寄せました。

ひなた編では、ひなたが五十嵐(本郷奏多さん)と破局した90話。ひなたの名前の由来を語りながら、「On the Sunny Side of the Street」を歌い慰めるるい。一方、ジョーも五十嵐に会いに行き「五十嵐くんの選んだ道やったら、きっとそれが五十嵐くんの“ひなたの道”になるから」と励ますという展開。このセリフも伏線だったんですね。

算太がラストダンスを披露した94話も感動回。岡山時代の思い出のシーンが走馬灯のように挟み込まれ、クリスマスの奇跡といった感。十代から晩年まで演じ切った濱田岳さん恐るべし。

ひなた編内のるい編ともいうべき、岡山帰省週にも「神回」があった97話。終戦の日、神社に参っていたるいの前に、幻影として戦死した稔が現れるというサプライズ。

かつて稔が願っていた思いを「どこの国とも自由に行き来できる、どこの国の音楽でも自由に聴ける、自由に演奏できる。るい、お前はそんな世界を生きとるよ」とるいに語りました。ご時世的にも、沁みる名言となりました。

名言と言えば虚無蔵(松重豊さん)。五十嵐に餞の言葉で贈った「お前が鍛錬し、培い、身につけたものはお前のもの。決して奪われることのないもの」や、ひなたに伝えた「日々鍛錬し、いつ来るとも知れない機会に備えよ」とか。

個人的には、算太の「親父っちゅうのは一筋縄ではいかんもんじゃ。許しとるようで許しとらん。許しとらんようで、許しとる」や、挫折の経験を子供たちに話したジョーが言った「で、何が言いたいかというとやな、それでも人生は続いていく。そういうことや」なんてセリフにグッときました。



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