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チェンソーマン元ネタ集

(2022.9.5 更新しました)

チェンソーマンの作者公表済の元ネタや、勝手ながら元ネタと思しきものをまとめました。


 

※以下、チェンソーマンのネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。

 

第1部 公安編

1巻

第1話

主人公の名前:デンジ

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二瓶勉『ABARA』の主人公・駆動電次からだと思われる。2020年8月4日のチェンソーマン300万部突破の作者コメント「チェンソーマンは「邪悪なフリクリ」「ポップなアバラ」を目指して描いています」より、作者が二瓶勉のファンであることが伺える。

※追記

2020年12月19日に開催された、「ジャンプフェスタ2021」にて作者自身により、デンジの名前の由来がテンシ(天使)に濁点をつけたものである、と公表された。ただ第一部最終話にて、『ABARA』に登場する那由多(なゆた)と同名のナユタが登場したこともあり、無関係ではないと思われる。


チェンソーの悪魔

トビー・フーパー監督『悪魔のいけにえ』をはじめとするホラー映画におけるガジェットとしてのチェーンソーがモチーフかと思われる。作者は2巻の巻頭にて「悪魔のいけにえ大好き!」とコメントしている。

 


第2話

デンジの台詞「あっ俺うどんと・・・うどんとフランクフルト!いいすか!?」(p.64)

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ナ・ホンジン監督『哀しき獣』にて、主人公がコンビニで辛ラーメンとフランクフルトを食べるシーンがある。なお、沙村弘明との対談において、前作『ファイアパンチ』がナ・ホンジン監督の『チェイサー』の影響下にあることを公言している。また後述するが、『チェンソーマン』のあるシーンを描くにあたって、同監督の『コクソン』からの影響を公言していることから、ナ・ホンジン監督のファンである可能性が高い。


第3話

公安退魔特異課の制服(アキ)

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黒スーツ・黒ネクタイで悪魔を退治する映画として、フランシス・ローレンス監督『コンスタンティン』がまっさきに思い浮かぶ。また、スーツ姿で人外と戦う作品としては、『メン・イン・ブラック』シリーズがあげられる。なお、『コンスタンティン』でキアヌ・リーブス演じる主人公・ジョン・コンスタンティンはヘビースモーカーで肺がんのために余命わずかという設定。同じくヘビースモーカーで、呪いの悪魔との契約により余命2年のアキと重なる部分があるし、やさぐれ感もどことなく似ています。

 

2巻

第13話

魚の悪魔(p.123)

伊藤潤二『ギョ』に登場する怪魚が元ネタ。作者のtwitterアカ「ながやま こはる」の2020年2月23日のツイートより。


第15話

サブタイトル:エンドレス8階

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アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』2期の第12話~19話にかけて放送された「エンドレスエイト」が元ネタかと思われる。藤本タツキはアニメイトタイムズのインタビューにて、好きなアニメに『涼宮ハルヒの憂鬱』をあげている。「エンドレス・エイト」はハルヒやキョンら主人公が夏休みを延々とループする話であり、作画や演出だけを変えたほぼ同じ内容が8週連続で放送された。第15話では、デンジがホテルからの脱出を放棄して、ベッドにて居眠りしてしまうところで終了するが、「エンドレスエイト」各話にて、毎回キョンが夏休みの宿題を放棄し、ベッドにて眠りにつく場面にて終了する展開(宿題の放棄が重要な伏線になっている)のオマージュかと思われる。

 

3巻

第23話

サムライソード(刀の悪魔)

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映画『ヘルボーイ』シリーズに登場する殺し屋・クロエネンが元ネタだと思われる。サムライソードと同じく、クロエネンも作品の途中で不死身の肉体を得る。なお、『ABARA』の作者・弐瓶勉は、ギレルモ・デル・トロの依頼により、コンセプト・アートとしてクロエネンのイラストを描いている。

 

4巻

第27話

マキマの遠隔攻撃

2019年30号の週間少年ジャンプのコメントにて、一連のシーンや描写が、伊藤潤二の『潰談』、ナ・ホンジンの『コクソン』に影響を受けていることを公言している。『潰談』は南米のジャングルから持ち帰られてきた蜜をなめると、蜜をなめた人間がことごとく何かに潰されるというホラー漫画。確かに、人が潰される描写は『潰談』の描写そっくり。『コクソン』については儀式のシーンを参考にしているとのこと。

5巻

第35話

タバコに書かれた言葉「Easy Revenge(気楽に復讐を!)」(p.18)

ガイナックス・Production I.G制作のアニメ「フリクリ」の作中にて、登場人物・サメジマ・マミ美が文字の書かれたタバコを吸っているが、そのオマージュか。なお、タバコに書かれた文字は「Never Knows Best (ベストな方法はだれも知らないよ」。

2020年8月4日のチェンソーマン300万部突破の作者コメント「チェンソーマンは「邪悪なフリクリ」「ポップなアバラ」を目指して描いています」から、チェンソーマンはフリクリに大きな影響を受けていることがわかる。


第38話

アキの台詞「オレ達からアンタへの鎮魂歌(レクイエム)だ」(p.82)

富樫義弘作「Hunter × Hunter」11巻第97話の幻影旅団クロロの台詞「ウヴォーさん、聞こえますか?オレ達からあなたへの鎮魂歌(レクイエム)です」のパロディだと思われる。


6巻

第44話

レゼの爆発シーン(p.20)

ジャンプフェスタ2022にて作者自身が、レゼの話は原作/脚本・押井守、監督・沖浦啓之のアニメ映画「人狼 JIN-ROH」をモチーフにした、レゼの爆発シーンは、「人狼」の冒頭で少女が手榴弾で自爆するシーンのオマージュである、と語っている。


第46話

サブタイトル:皆殺しのメロディ

イギリスの西部劇映画『女ガンマン 皆殺しのメロディ』、もしくはTHE BLUE HEARTSの曲『皆殺しのメロディ』からの引用だと思われる。

 

第49話

デンジ(チェンソーの悪魔)、サメの悪魔、台風の悪魔(p.128~129)

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2013年公開のパニック映画『シャークネード』が元ネタ。『シャークネード』はサメの大群を内包した竜巻が街に襲来し、主人公がチェンソーで立ち向かう映画。映画はチェンソー vs サメ+竜巻という構図だが、『チェンソーマン』では、チェンソー+サメ vs 爆弾+竜巻という構図になっている。

 

第50話

サブタイトル:シャークネード

2013年公開のパニック映画『シャークネード』を引用したタイトル。

 

第53話

ネズミの群れの中から現れるマキマ(p.177)

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五十嵐大介の短編集『魔女』にて、占い師の老婆がネズミの大群と化して消失するシーンがある。ネタ元かどうかは不明。が、チェンソーマン70話には『魔女』から影響を受けたと作者自身が公言するシーンがある。

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五十嵐大介:魔女 第1集(2004) p.72,73 


7巻

第60話

サブタイトル:クァンシと魔人達四十九人斬り

榎本俊二『斬り介とジョニー四百九十九人斬り』が元ネタ。2020年14号の週間少年ジャンプ巻末コメントより。『斬り介とジョニー四百九十九人斬り』は斬り介とジョニーがひたすら斬って斬って斬りまくるだけの怪作。第60話では、クァンシの攻撃でサンタクロースに操られた人形の首が一斉に飛ぶシーンがあるが、『斬り介』にも同様の描写がある。

 

8巻

第70話

コスモの能力(ハロウィン)(p.178~179)

サブタイトル:摘む

五十嵐大介の短編集『魔女』が元ネタである。コスモの能力でサンタクロースに宇宙の知が流れ込む見開きのシーンで参考にされている。また、タイトルの「摘む」は、ネタ元のシーンが描かれている『魔女』に収録された短編「スピンドル」より。「スピンドル」は「紡ぎ器」の意で、織物に使う糸を紡ぐ器械のことである。「つむぎき」→「つむ」。作者のtwitterアカ「ながやま こはる」の2020年5月25日のツイートにて作者自身が公言。サンタクロースは「スピンドル」に登場する魔女ニコラそのもの。世界を手中におさめたと過信するニコラが、物語の最後で、自分たちには不可知の領域が存在することを思い知る。



9巻

第79話

扉絵(水族館の水槽の前での家族写真)

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アニメ『輪るピングドラム』に登場する主人公の兄妹3人の水族館での家族写真のオマージュではないかと思われる。『輪るピングドラム』もまた、「家族」が重要なテーマのひとつとして語られる。 



第81話

マキマの自宅玄関に飾られた絵(p.34~35)

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ギュスターヴ・ドレの絵画『失楽園』。地球に降り立つルシファーが描かれている。ルシファーは堕天使であり、神に服従するより、神と戦って自由を得ることを選んだ。

 

10巻

第83話

8人の魔人が跪くシーン(p.68~69

アリ・アスター監督のホラー映画『ヘレディタリー』のラストシーンが元ネタかと思われる。作者は単行本第3巻の巻頭にて「ヘレディタリー大好き!」とコメントしている。『ヘレディタリー』では、首なし死体や新興宗教の信奉者が跪き、復活した地獄の王ペイモンを迎える場面がある。

 

デンジの首に巻きつく腸(p.77

仮面ライダーに代表されるヒーローの象徴としてのマフラーを模しているものと思われる。

 

チェンソーの悪魔(本体)(p.85

復活したチェンソーの悪魔のデザインは、弐瓶勉『ABARA』に登場するガウナのオマージュ。週間少年ジャンプ2020年39号の巻末コメントより。

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弐瓶勉:ABARA(上)(2006) p.26

 

第85話

サブタイトル:超跳腸・胃胃肝血 

モーニング娘。の楽曲「恋愛レボリューション21」の歌詞の一部「超超超いい感じ」をもじったものと思われる。85話がバーガーショップにて物語が展開することから、2009年にnicnico動画に投稿された動画「マックのポテト揚げるやつの音ってモー娘の曲に似てね?」がネタ元であると推測できる。

第87話

サブタイトル:チェンソーマンVS恐怖の武器人間

リチャード・ラーフォースト監督のホラー映画に、『武器人間』という作品がある。『武器人間』では、主人公であるフランケンシュタインの末裔が、この世からあらゆる思想を消すために武器人間を製造しているという設定があり、マキマの行動の動機と共通する部分がある。




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第2部 学校編

第98話

鶏の悪魔

コケピー→タイザン5の漫画『タコピーの原罪』に登場する地球外生命体タコピーのオマージュ。

3か月後に食べられるコケピー(鶏の悪魔)→『100日後に死ぬワニ』のオマージュの可能性がある。


爆発とハッピーエンド(p.51~52)

見開きで爆発を背にして立つ戦争の悪魔の構図が、藤本タツキの読み切り短編『さよなら絵梨』の終盤のコマの構図とほば同じであり、セルフオマージュだと思われる。

『さよなら絵梨』は、作中で主人公が自作の映画に使って酷評された爆発オチを別の意味を持たせて漫画自体のラストに持ってくることでハッピーエンドとして昇華させたメタ的な作品である。第98話の終盤では、戦争の悪魔が半ば皮肉的にジョークシーンとして「爆発オチ=ハッピーエンド」が使われている。


第102話

サブタイトル:セーブザキャット

ブレイク・スナイダー著『save the catの法則』からの引用かと思われる。

『save the catの法則』はハリウッド映画における脚本術について書かれた著作であり、本書で紹介される「save the cat」とは、物語の冒頭で、主人公がピンチに陥っている猫を救出するシーンを描くことで、「観客が最初から主人公が置かれた状況に〈共感〉できるようにする」脚本テクニックである。

第100話では、デンジがトロッコ問題で両者を救わず、代わりに全く関係ないネコを助けるという場面がある。

それでも主人公に共感できるか、という作者の読者に対する挑戦なのか、単なるブラックジョークなのかは不明である。


~チェンソーマン第2部と涼宮ハルヒとの共通点~

第2部「学校編」はアニメ作品『涼宮ハルヒの憂鬱』とのいくつかの共通点がみられる。

・学校に潜む敵(生徒): 朝倉涼子(涼宮ハルヒ)→ 三鷹アサ / 戦争の悪魔(チェンソーマン)

・主人公を監視するため、組織から派遣された転校生: 古泉一樹(涼宮ハルヒ)→ 吉田ヒロフミ(チェンソーマン)

また、ジャンプフェスタ2022にて作者は、「2部でチェンソーマンが食べたものが消えるという設定を使いたかった」と語っている。

チェンソーマンに食べられた悪魔は存在・概念そのものが消える→世界が変化する。 つまり、

・世界を改変しうる主人公: 涼宮ハルヒ(涼宮ハルヒ)→ デンジ / チェンソーマン

が成り立つ。

おそらく、第2部は藤本タツキ流「涼宮ハルヒ」になるのではないだろうかと予想している。

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