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都心の潜窟。はかないノスタルジー喫茶に身をゆだねるひととき。

バスに揺られながら外を眺めていると、異様な雰囲気を放つ店が見えた。

「なんのお店かなぁ」

実はずっと気になっていたこの店。どうやら喫茶店なようだ。
休みに訪れることにした。

入店した瞬間に石油ストーブのオイルような香りが迎えてくれる、不思議な喫茶店だ。この香りは全く不快に感じず、むしろたまらなく好きだ。

味のあるネオン看板、天井に吊るされている数多のランプ、レトロな調度品がみっちり飾られている。

「大変な場所に来てしまったようだ……」と良い意味で圧倒された。

なぜか不思議だが、いつ消えてしまってもおかしくないような儚さも感じた。

スマホをいじる暇がない。
壁一面に飾られているレトロでかわいらしい小物や、聞き慣れない名称がツラツラと書かれている看板をひたすら眺める時間を過ごす。

「目薬アドラー」「リスカレー」「夜の千里眼 三共発電ランプ」

時代背景や、どんな商品なのか想像を膨らましていると、あっという間に時間が過ぎていた。

心地良さを感じる時計のチクタク音。

ここでは五感が研ぎ澄まされる感覚におちいる。
そして自然と上質な時間が流れていく。

好奇心に満ちあふれたオーラを放ちながらジュークボックスを眺めているカップルがいた。そこで店主がコインを渡し「好きな曲を流していいよ」と。

ビートルズの「Ticket To Ride」が流れはじめた。興奮している2人の姿が愛らしすぎて「ずっと幸せでいてほしい」と思えた。

曲が流れているジュークボックスを見るのはわたしも初めてで、実はカップルと同じくらい興奮していた。近くへ眺めに行くと「よかったら流してみますか?」と声をかけてくれた。

たくさんの曲とアーティストが手書きで羅列されている。全く見知らぬ洋楽や、ザ・ピーナッツなどの60年代の曲だ。

フランク・シナトラの「My Way」が目に止まった。

自分が選んだ曲が店内に流れるのは、小さなこの店でもなんだか少し緊張した。

サビの「I Did My Way〜」のたたみかけのピークの部分が、想像以上の大きさで店内に響き渡ると同時に、心の奥の奥まで響き渡った。

ぼんやりと何も考えずに過ごす。何かにフォーカスして心を無駄に消費する必要はないことに気づく。まるで放し飼いされている感覚。

心地よくほったらかしにされる、ひとりの時間をもっと大切にしたいと思った。

珈琲屋らびっと

住所:東京都板橋区徳丸3丁目13−10
アクセス:東上線「東武練馬駅」徒歩10分

最後までお読みいただきありがとうございます。

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