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#4 【対談インタビュー】『’mobility’が進む時代に、移動を当たり前にする』ー原田岳(株式会社アオイエ取締役CCO)

シェアハウスというと、単に家賃を抑えるために一緒の家に住むというのはもうひと昔の話で、最近では目的を持って、あえて他人と住居を共有する選択する人が増えている。
また、設備や住人に特色がある、コンセプト型シェアハウスもよく耳にするようになった。
わたしたちが住む京都でも、コンセプト型のシェアハウスや個性的なシェアハウスがいくつもある。
そのうちの一つが、アオイエだ。

コミュニティハウス「アオイエ」は、「常識からの解放」をミッションに、常識にとらわれない生活スタイルを提案しており、年齢やバックグラウンドが異なる人が共に暮らし、同じ屋根の下で成長し、夢を形にする場所を目指している。
現在、東京7拠点、京都に3拠点を展開し、アオイエ住人であれば他方の拠点に最初の1泊は無料で滞在できるそうだ。
起業を目指したり、夢を追う若者にとって、東京に時々行くことは重要で、もうひとつ自分の拠点を持つように滞在できるのは非常にありがたい。

また、住居自体を可動性のあるものにしてしまおうという試みの、バスハウスという事業もスタートさせている。
大型バスをシェアして住めるキャンピングカーのように改装して、不動産であった住居を’可動産’にするという、まさに「常識からの解放」をする発想である。

そんなユニークな事業を展開するアオイエの取締役を務める原田岳さんを土井・山本で訪問し、多拠点生活を切り口に新しい暮らし方をテーマに意見交換をさせていただいた。

土井「実際、多拠点居住という暮らし方は広がっているんでしょうか?」

原田「広がってきていますね。渋谷にある、『拡張家族』を理念とするシェアハウスの『Cift』も京都、福岡と拠点を増やすことが決まっているそうですし、家入さんが手掛けるシェアハウス、『リバ邸』も日本全国そそしてカンボジアにも拠点がある。これからmobilityが進む時代になると思います。」

山本「アオイエもCiftも京都を拠点に選択しているということに、何か共通の理由があるんでしょうか。」

原田「京都は元々自分の家を解放し、外の人を受け入れる『住み開き』と言う文化が始まった地でもあります。そのような文化が一般化された後は、徐々に多拠点居住の文化へ移行していくと考えています。
また、京都は東京に負けず劣らず変な人が多いので、惹かれ合うのだと思います。そういった文化的な素地から、拠点のひとつになりやすいのではないでしょうか。」

山本「なるほど。いまわたしは京都に暮らして2年半で、東京に行く機会は半年に1度ほどです。東京に行く度に、集まる情報量が全く違うなと痛感しますが、やはり醸造されてきた文化的な厚みは京都ならではの強みですね。
私は多拠点で生活をしたいと思い始めてから、拠点を増やすのではなく、タイニーハウスみたいな小さな住まいをけん引して、住まい自体を動かしてしまう方がいいかなって考えていたこともありました。住居に可動性を持たせる『バスハウス』のアイデアは非常に面白いなと思います。」

原田「約1年前に渋谷100BANCHのプログラムとしてスタートしました。改装も基本的に自分たちで行っていて、9月に1台目がようやく完成しました。今は仮説検証段階で、色々と実験中です。
僕たちがバスハウスで目指すのは、移動が当たり前に自由に出来る世界です。バスハウスで全国をまわり、アオイエの拠点をまわりたいですね。バスハウスの行先で、遊休資産を活用することも可能だと思います。」

山本「トレーラーハウスを宿泊施設や飲食店にして、高架下のスペースや余った土地を活用する動きは全国の色々なところでも耳にします。」

土井「多拠点で暮らしたい人と、そういった人を受け入れる人を繋ぎ、仕事を紹介できると面白いですね。」

原田「そうですね、仕事の入り口もっとが可視化されればいいのではと思います。つまり、いまどこでどんな仕事の人材が不足していのか、分かればよいということです。学生をターゲットに、バイトが足りない時間と店が簡単に探せるサービスがありますが、そういうイメージです。」

土井「僕たちがつくる拠点は、居住のまわりに飲食店、美容院などのサービス店舗など生活の中で利用するいろいろな店舗をあわせて広げていくビレッジのようなコミュニティにしたいと構想を描いています。そしてそこで仕事も提供できたら、と。CoLivingを拡張したCoVillageというようなイメージです。」

原田「確かに、同じ概念で形成されているコミュニティが複数の場所にあれば、働く人を受け入れる側としても、全く見ず知らずの単発の求職者と比べると別拠点から移ってきた人のほうが信頼性が持てますね。」

山本「最終的には、仕事までも自由にできるのが、多拠点を当たり前にするひとつのゴールかなと思います。わたし自身も、エンジニアのようなウェブ上でのスキルを持つ専門職ではなく、たとえ居住の選択が自由にできたとしても、仕事をどうするかという問題にぶち当たってきました。リモートワークができる職種も広がりつつはありますが、場所と仕事の縁を切れない業種もあります。仕事を持ち運ぶか、行く先で仕事をする、ライフスタイルを可能にしたいです。」

原田「ビレッジというと、少し概念は違いますが、全国にあるエコビレッジを紹介する、『NuMundo』といういわばAirbnbのエコビレッジ版のようなサービス運営に以前携わっていました。どこかへ移住しようとしたときに、自分がフィットするコミュニティが分かれば新しい土地でも安心しますよね。」

山本「ちなみに、アオイエで将来的な展望として考えているアイデアはありますか?」

原田「移動を自由にするという点では、陸だけでなく、空と海にも進出したいです。飛行機はまだまだ先の話になりそうですが、船をシェアして暮らす、ボートハウスも海外の事例ではありますし、今後手掛けたいと考えています。ですが直近の取り組として、まずはバスハウスを増やすことですね。」

土井「空と海への展開は実現したら、新しい暮らし方の選択肢として、とても面白いでしょうね。原田さんのお話を聞き、mobilityが広がるということにさらに確信が深まりました。今日は貴重なお話をありがとうございました!」

シェアハウス、多拠点居住という言葉も一般的にはまだ認知が低いが、新しい暮らし方の選択肢は多様に広がってきている。海の上に住居を構えることが常識になるのも、そう遠くない未来なのかもしれない。

写真左:原田岳、右:山本茜

株式会社アオイエ (AOIE Inc.) http://aoie.co.jp

Text:山本茜

「多拠点生活」×「パッチワークキャリア」を軸に、自分のパフォーマンスが高まる場所で生活し、自分の専門性や持ち味を活かした仕事・活動を組み合わせキャリアを築くライフスタイルを模索中。大阪にて大人の学びのサードプレイス「Leaning Bar CF曽根崎」企画運営。趣味はウイスキー。