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ふつうの軽音部25話が熱すぎて大気圏突破した

飛び出せ 大気圏突破してキミの顔見に行くぜ
今どきそんなバカな男を見かけなくなった
そんな気がしないか?

大気圏突破 / THEATRE BROOK


 こんちわ。今週もギターの練習を続けつついろいろしています。スモーク・オン・ザ・ウォーターが簡単だって言うから練習し始めたら2弦同時に押さえるのが難しくて照英が冷蔵庫持ち上げてるコラみたいに泣いています。誰や!!これが簡単とか言い出したやつ!!!!パープルというよりディープブルーな気持ちでペケペケ弾いています…


 さて、このまえふつうの軽音部がマジで面白いので記事を書いたのですが、拙文がクワハリ先生と出内テツオ先生に見つかってギエピー!なりました。こんなインターネット石ころの裏で書いてる自分に陽の光を当ててくださりありがとうございます。恐縮の2文字。おれは口がデカくて気は小さい奴なので…


 ほんでまあ言いたいことは前回だいたい書いたし、これから読む人向けにネタバレ情報を抑えつつ書くとあんな感じでこれ以上追記することもないな~~~と思っていたら


25話

マジ…

 すごかったのでもうキーボードひっつかんで記事書きたくなっちゃった。ロックの日にこんなの見たら、たまらんで。これはちょっとすぐに新鮮な感情を早く書き留めておかなくては、と。書かずにはいられなくなっちゃったから書いています。
 書き留めておきたいって言ってもおれは今油断すると「マ」「ジ」の2文字しか喋れなくなってモールス信号でしかコミュニケーションできなくなりそうな語彙にずのうしすうが減退してるんですけど頑張って書いておきます。マジで良いので。

 というわけでこの記事ではふつうの軽音部最新話のネタバレがあるので、未読の方は避けていただくか今すぐコミックス1巻2巻と配信分を読んで†はとっち神†の啓示を受けてください。よろしくお願いします。


鳩野ちひろの素朴な人柄

 今回は前回から続いて綾目さんとはとっちの問答から始まるんですがこれが本当に良かった……。

 鳩野ちひろは飾らないし不器用だしものすごく器が大きいというわけでもないけれど、言うべきことを率直に言える人なんだよな…ってことが改めてここでも描かれていて。
 はとっちって自分の中で相反する感情を同時に持てる人で、「嫌な人だなと思うこと」「でもそれはそれとしてこの人は上手だなと尊敬していること」が両立するし、ある種ものすごく成熟した価値観で生きてる子なんすよね。世慣れてきた大人でもこういう割り切りというか、「あいつはああだけどこういう良いところがあるんだよな」って切り分けて考えるの難しいですよ。

 そして「なんで一緒にやりたいの?」という問いに「あなたのことを良いとも悪いとも思ったことあるけど、なによりギターが上手くて憧れてたから」って全部心の中を言えちゃうはとっち、強いよなぁ……。なんも飾らない本心をストッと投げられるの、すごいよはとちゃん。なんで軽音やってるのって問いにも一旦はカッコつけようとして「やっぱりわかんない」と素直に話せるのもね…。
 続く言葉も絶妙で、仲良くするかどうかよりカッコいいバンドがやりたくて……って言ってるのも藤井さんの心を射止めていると思う。


藤井綾目という苦難の人

 藤井さんって、端的に言うとコミュ障なんですよね。まあコミュ障にもいろいろあって、引っ込み思案がゆえのコミュ障、思考が言語化できなくて会話がうまく行かないコミュ障、自分の攻撃性が強すぎて相手を傷つけてしまうコミュ障……とかあるわけなんですけど、藤井さんは自分のイヤな立ち振る舞いを自覚しながらも抑えきれていないことに悩んでいる。
 さらには結構キョロ充というか、他人を気にしてしまう性格でもあって…。鷹見くんが「自由なやつかと思ったら割と普通でそこらにいる子だったな」と評したのも言い方悪いけど精確な人物評だな~と思います。藤井さんはトゲトゲアーマーが呪いで外れなくなってるだけで本人の価値観は普通の子、というか。やりたくて自由人やってるんじゃなくてそうするしかないからそういう仮面を被ってるだけだと思いますね。

 前回までで過去のことも語られてるんだけれども、頑張って周囲に溶け込めるように努力したけれども他人から悪意を向けられて挫折してしまったことがあり、だからこそ高校では最初から他人との付き合いを放棄している…というバックボーンがわかる。傷つきすぎたせいで他人に失望して「どうせどいつもこいつも嫌なやつやろ」と心のなかで予防線を張るのが得意になっちゃって、さらには自分のついつい後先考えずにその場の気持ちで攻撃的なことを言っちゃう生来のクセもあり、もういいかと諦めてしまったけど……それでも、自分を変えて歩み寄ろうとする善性が本来あった子なんすよね。そのへんは、はとちゃんを借り物競争で助けていたあたりでも出ています。「他人と付き合うのを諦めてはいるけど、困ってる人を助けるのはやぶさかでない」みたいな感じ。


 そんな、人と仲良くなることを諦めた藤井さんに「仲良くなるかとかよりあなたとバンドやりたい」とストレートを投げ込んだのはね~~~~……。ひとたらしですよはとっち。「あたし嫌な性格やけど」って柵を設けている藤井さんに「いや性格気にしてへんねん。アンタとバンドやりたいんや」と嘘偽りのない眼で乗り越えてくる。なんでこんな相性バツグンの言葉の居合い斬りでズバッと両断できるんだ……。ジャスタライク サムライスウォードじゃん……。

 前に書いた感想記事でも「ふつうの軽音部は挫折にまみれた物語で、はとっちはそれでも立ち上がれる子だからシブいカッコよさがある」という話をしたんですけども、まさに藤井さんは挫折と失意のなかにいる人で、それをはとちゃんが照らして火を付けたのが美しい。


選曲がさあ!!!!!!!!!!

 うわっ声デッカ…急にでかい声出すじゃん……。でもデカい声出るってこんなにスゲエもん読んだらさ…!

 いやあの、もう、歌詞から何から本当にこの状況にマッチしていて美しい……。あまりの美に言葉を失う構図ですよ。a flood of circleの原曲が素晴らしいのは当然として、この曲にハマるようにストーリーテリングしてきたクワハリ先生、そしてはとちゃんからにじみ出る音楽の喜びと楽しさを画にした出内テツオ先生、なんてすごいマンガ作ってるんだと…。

 この曲って鷹見くんと別れた藤井さんの身の上と、そして藤井さんを「私のバンドに来いよ!!」とはとっちが口説き落とすコロシ文句のふたつの読み方ができるんじゃないかと思っていて。




ダーリン 君からしたらこんなのってバカみたいかい

理由なき反抗(The Rebel Age) / a flood of circle

 まず「ダーリン」という歌い出しから否が応でも彼氏と一悶着あって喧嘩別れしてきた藤井さんのここまでを意識させます。「弾き語り聞いてくれ」っつってよくこの曲選んだなはとっち。度胸というかそういうところもすごいな。まあはとっちのことだからそこまで気が回ってないというか純粋に歌いたくて選んだんだろうけど…。

 藤井さんの言動に非があったというか、鷹見くんも何かしら苦しい過去を抱えていそうなところに地雷を踏んでしまった気配もありますが、結果的に鷹見くんはなんだこの子もつまらない奴だなと藤井さんを軽んじたゆえああいう破局を迎えたわけですね。非常に歌い出しとシンクロした身の上です。
 そしてだんだんほとっちが頑張って練習していたことに自分を重ね、ふっと一瞬我に返る。努力したのにうまくいかなかった過去の思い出。だんだんはとっちを直視せずに目をそらしていく藤井さんが象徴的で、ここでも「みんなにはウケへんやろ」と他人の評価軸ばかり気にして自分を預けてしまう悪い癖が出てしまうけども…


 「みんながどうとかじゃねえ!!いまオマエに歌ってんだよ!!!!!」とばかりに強く、強く叫ぶはとっちがもう本当にかっこよくて。「ダーリン 君が笑ってくれるくらいバカでいたいんだ」と、はとっちが綾目ちゃんを笑顔にしたくて励ましているかのように歌詞の聞こえ方が変わってくる。
 こんなん、最高の口説き文句ですよ。こんなに爽快で伊達で粋な女いるかよって。カッコつけられないしライブで肩にセミ乗っけてて鷹見くんとのレスバでも勝てない、そんな不器用で素朴でまっすぐな奴が、ぜんぶ歌にして目と鼻の先でぶつけてきたら惚れないやつなんかいないよ。

 このあとはあえてもう、無粋なのでコマは載せないけど(あんまり期間限定の連載作品のコマをスクショして載せまくるのもネ…)はとっちが最高に楽しそうな顔で歌ってて、涙がこぼれそうになったよ。綾目ちゃんもまっすぐにはとっちを見つめて、「みんなには好かれんくてもかっこいいわ」という自分の考えを持つようになる。ずっと誰それがどうで、ということばかり気にせざるを得なくて雁字搦めになった綾目ちゃんが殻をひとつブチ破れたんですよ。
 最後に転びながらも物語は続くと歌い、ふたりにまばゆいほどに光差すなかで歌唱シーンをシメる。これですよ。鳩野ちひろという人は、まさに転びながら生きてきたそういう人なんだよ………。


これがまだ序章という驚きと喜び

 そんなわけで好き勝手に指が暴れ散らかすままに入力してしまいましたが言いたいことが言えて満足です。たいへんすっきりしました。

 私事ですけど、挫折しても人生は続くっていうテーマは強く共感するところがありますね。自分もあるとき持病を抱えたまま無職のひきこもりやってて人生のどん底にいたときそう思い至った時期があって、「あ、人生ってどんなにしんどくても終わらねえんだな」と気づいてからはボチボチ生活を頑張って就職したりした過去があるので…。あとは奥さんと子供がマレーシアに高飛びしたおじさんの話に勇気づけられたこととかもあるんですけど長い自分語りになるのでそのへんは割愛します。気が向いたらその時の話した日記があるから読んで♡


 ちょっと脱線しましたけど、改めて「ふつうの軽音部」で驚くべきなのはみなさんこれ、序章なんですよ。もうここまでで面白くって心動かして主人公が大波に揉まれに揉まれてきたのにやっとバンドメンバーが揃ったって段階ですからね。マジ!?この面白い漫画が……まだまだ続いてくれる……!?!?そして異常ベーシストがまだまだ様子のおかしい挙動を……!?!?

 はとちゃんたちがどんな喜怒哀楽を見せてくれるのか、そして言動の怪しいベーシストがなにをしでかしてくれるのか非常に楽しみです。
 連載と同時代に生きる我々は、幸運にもまさにこれから神の降臨とはとちゃんの起こす数々の奇蹟を目のあたりにできるというわけやね……(限りなく細めた糸目でニヤつく)




<おわり>




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