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2022年におれが聴いて最高だと思った楽曲群

 そういえば去年はいろいろな曲を聴きました。
 もともと遊んでいるゲームのサウンドトラックやbandcampで音楽を探して聴く、という趣味があるのですが、それだけでなく友人が好んで聴いていて自分も聴き始めたりということもあってかなりいろんなジャンルの曲に触れたかなと思います。
 きょうは去年ハマったそれらを寸評とともに振り返っていきたいです。べつに音楽理論に詳しいとかそういうわけではないので「こたつに入って駄弁ってるな」くらいの温度感で眺めてください。

This Fffire - Frantz Ferdinand

 2022年の曲で一番印象に残った曲は何!?と勢いよく問われたとしたらまず出るのはやっぱりフランツ・フェルディナンドのThis fffireだと思います。

 なんか、去年は急にエッジランナーズが壁をぶち破って出てきておれの感情をボコボコに殴打した挙げ句全部持っていった。見終わったときに感想記事を書きましたが、あれからまだ持っていかれたっきり帰ってこない情緒があります。正月なんでそろそろ実家に顔出してほしいですね。

 エッジランナーズのOPバージョンは独自のエディットになっているんですが、原曲を聞いてみると歌詞がドンピシャ「この炎は制御不能だ!街を燃やし尽くせ!」というデイビッドたちサイバーパンクの刹那的・反抗的な生き方そのものなんですよね。これはゲーム本編でもアラサカをはじめとするナイトシティの腐敗や闇を見るにつけ、強まる思いのひとつでもあります。

 音楽に彩られたアニメとしてはASIAN KUNG-FU GENERATIONへのリスペクトを捧げたぼっち・ざ・ろっくも素晴らしかったですし、毎度毎度なにかの主題歌をやるにつけ「ああちゃんと関連作品読んでるなこの人」と思わせる米津玄師の完璧な作品理解から繰り出されたチェンソーマン・KICK BACKも見事でした。
 しかしもし一位を決めるなら……となると、ゲーム本編中の楽曲をアニメに合わせてうまく使っていく合わせ技という点で、エッジランナーズは類を見ない演出の巧みさだと言わざるを得ません。


Corner Shop - Android52

 フジロックに出演したNight Tempoさんも参加しているNeon City Recordsっていう香港のレーベルが好きなんですけど、そこがたまに何を思ったのか全曲格安セールとかやり始めるのでドカ買いしてしまいました。

 ここは良質なハウスとかLo-Fiとかが多くて、あとは…う~ん権利的に微妙なんですけどシティポップも盛んに出てるとこですね(曲のリミックスってことでここはまあひとつ目を瞑ってください)。
 特に好きなのはAndroid 52さんのエレクトロ・ハウスなんですよ。どれもキレが良くてグルーヴ感が気持ちいいです。もしおすすめするとなるとADORE ADORE ADOREも名盤だと思いますが、最初の一枚としてはTYPE R-510が入りやすいかなと思います。(bandcamp埋め込むとめちゃくちゃデカくなるのなんとかならんかな…)


Baby Pink - Moe Shop

 こちらもNeon City Recordsつながりで。

 このYUC'eのキャピキャピしたKAWAIIアプローチで組み立てられたヴォーカルに向かってなんやねんこの密造酒みてえなパンチのゴリッゴリベースは。アパラチア山脈の生み出した芸術か?連邦法違反だぞ。
 曲自体は四年前の2018年発表なので別に新しいわけではないのですが、聴いててほんとに楽しい曲なので気に入っています。

 昔から思ってるんですがYUC'eと書いて「ユーシエ」と読ませるのは結構無理がある気がしませんかね…?AKLOと書いてエイクロと読ませるふざけたハンドルネームしてるおれが言う事ではないですが……。


ずるくない? - ぷにぷに電機

 お、大人ァ~~……。

 音の漂う空間が上質すぎる。ぷにぷに電機はその声質、歌い方もいいんですけど一緒に組んでるトラックメイカーがとにかく豪華。詳しくないけどKan Sanoさんってこの人もフジロック出てる人じゃなかったっけ…。
 他の楽曲もすごいんですよ。名曲Asagaoを始めとしてマルチネの常連だった三毛猫ホームレスに80 kidzて!別アルバムでも(弐寺プレイヤーならあのオサレなハウスでご存知)Dirty Androidsとか名を連ねてるし!!ヤバい!!!

 ぷにぷに電機の何がいいって声に個性はあるんだけど、それぞれのトラックメイカーの作風とぜんぜん喧嘩しない仕上がりになっていて、それでいて曲に歌わさせられているお仕着せ感もないところ。曲と声、どっちの押しが強いとかがなくてひとつの曲としてちゃんと撹拌されたカクテルになってるんですよ。
 もともとのジャズシンガーらしく物憂げでありながら、曲によってはポップで元気な歌い方もできたりと声の乗りこなし方がすごくうまい。ぜひ聴いてほしいアーティストのひとりですね。


堕天 - Creepy Nuts

 クリーピーナッツは一昨年の年末辺りから聞き始めたんですけどま~~~~~~~~~~~2022年はアンサンブル・プレイで一皮むけたし、彼らへのリスペクトから生まれた「よふかしのうた」に主題歌提供でアンサーを返してドラマが生まれたりといいタイミングで聴き始めたもんだなと思います。ジャストミートでしたね。

 Creepy Nutsの良さに関してはすでに紹介記事を書いておおむね語ったので特に真新しいことを言えるわけではないのですが、最近は「クリエイターへのアツい激励」という観点で見るとより好きになるよなと。
 Creepy Nutsが尊敬していると公言するRHYMESTERも聴き始めたりしたんですが、ザ・グレート・アマチュアリズムを始めとして「あ、この遺伝子はここから引き継がれているんだな」と思ったり。たぶん今でこそHIPHOPもいろいろ何でもありで行こうや、になってきたんだろうけど昔はすごくサグ(不良、ワル)文化が主流で、どっちかっていうと内省的でやりづらい流派の人たちがいたんだろうな~というのを感じますね。

 そういう、「社会に適合する人間じゃない」「日本語ラップは本物じゃない」「おまえらはサグじゃない、HIPHOPじゃない」という"じゃない"に対して「"じゃない"でもいいから、未熟でもいいから自分のスタイルをやり続けて確立してやるんだ!」と意気込んで自分を励ましていく楽曲がCreepy Nutsには多いんですよね。中学十二年生とかかつて天才だった俺たちへとか、トレンチコートマフィアもそう。

 特に菅田将暉を迎えた"サントラ"は、よりその考え方を役者というものにも広げて当てはめることで、クリエイター全体への普遍的な応援歌に昇華された名曲だと思います。本人たちが「すげえ音楽業界ひっくり返す名曲の自信あるんだけどひっくり返らなかったしMVの再生回数が思ったより伸び悩んでる」とネタにしてるところも笑えます。


 あと、どうでもいい蛇足なんですけど電気グルーヴのfallin' Downがかなり堕天の全体イメージと近いので、もしかしてCreepy Nutsはこれをリスペクトしたんじゃないか…?とおれは思ったりしています。


Bunny Bunny Carrot Carrot - Mitsukiyo

 ブルーアーカイブはどれ聴いても名曲しかないんですけどどういうことなんですかね?
 たぶんTwitterとかだとデカパイのバニーさんの絵が連日流れてきたりすることで知られていると思うんですけど、このゲームすげ~~~~良質なフューチャーポップの宝庫なんですよ。
 ちなみにこの曲はそのデカパイバニーさんが出てくるイベントのときの曲です。いいですね。

 ブルーアーカイブは女子生徒たちがチャカぶっ放したりダイナマイト放り投げたりコンビニでライフル弾売ってるイカれた世界観で紡がれるお話なんですけど、どこまでも突き抜けるような喜劇で死人は出ないし、それでいて青春を過ごす学生たちが友情を見出したり自分の考え方を広げてひとつ大人になったりする爽やかなゲームで、やっぱりそれに似合う楽曲が取り揃えられている。
 と言いつつも、その日常に這い寄ってくる不穏な影もあったりして、そういった状況での緊迫感のある演出もきっちり出来ているんですよね。

 話もいいし、キャラもいいし、楽曲もいいしでぜひやってみてほしいゲームではあるんだけど、ソシャゲそんなに抱えきれないよ!なんて人はサントラだけ買って聴いてみてほしい。いまんところVol.1とVol.2が出ています。


愚人曲 - Steven Grove

GOLDEN AGE WILL RETURN AGAIN

 こちらもソーシャルゲームのアークナイツから一曲。
 アークナイツはそもそもが「ロックバンド大好き集団がたまたまゲーム作ってる」と冗談を言われることがあるくらい音楽への造詣が深い開発チームによるソーシャルゲームなので、基本的にどの曲もハズレがない!というか開発会社がなぜか100%持ち株の子会社としてレコード会社設立してんだけどどういう事?????

 アークナイツというゲームは本当に奥が深い世界観設定でここでは語りきれないため、「体が石になってしまう病気が流行っている世界で、一生懸命人助けをする製薬会社のお話」とだけ言っておきます。ちょうどアニメもやっているのでそちらを見てもらうのが早いかもしれません。その前提でこの"愚人曲"について掘り下げていきましょう。

 アークナイツの世界はテラといい、名前は違えど地球に少し似た歴史を辿ってきた各国が存在します。その各国の民族問題や内紛、そして先ほどの体が石になる"鉱石病"の問題と、主人公の「ドクター」とCEOの「アーミヤ」率いるロドス製薬が向き合っていく…という筋書きになっています。
 この愚人曲は、おそらくスペインをモチーフにしているであろう国家、イベリアの船乗りたちの曲。かつては優れた科学力、精強な艦隊をもち植民地を得るなど列強に名を連ねていましたが、海から来た怪物シーボーンとそれを崇めるカルト集団がはびこり港は荒廃し、カルトを取り締まる審問官と市民の軋轢、隣国エーギルから移住してきた者への疑念、相互監視による密告で零落の道をたどる……と、形を変えつつスペイン宗教裁判の要素まで落とし込んだ設定になっています。

The Golden age will return again
Remember when the days were young
Iberia’s future’s bright as the Sun
She whispers when the sails ascend
The Golden age will return again
The Golden age will return again

愚人曲 -Steven Grove

 そのバックボーンを知ってからこの曲を聴いてみると本当にこのゲームが手の込んだものであることがおわかりいただけるかと思います。
 彼らはつまり黄金時代の再起を夢見ているわけですね。おそらく本心から自分たちの国が武力を取り戻し、かつてのような豊かな国になって欲しいと祈る一方、もうどうしようもないくらいグズグズに絡まってしまった現実のイベリアから目を背けてなんとか厳しい日々をやり過ごしていくために実現しない幻想にすがり付いている、というこの国の二面性を内包した曲だと言えるでしょう。

 アークナイツのすごいところはまさにここなんですよ。作中にもうひとつの地球を作り上げ、その世界でこの国はメイン産業はこんなんで地理的にはこういう位置で~社会問題はこんな感じなんだよな~、こんな国だからこういう曲が流行ったり民族歌謡とかもこんな内容になるんだよな~、というものすごく細かい世界観設定が行われてるんですね。
 もうね、これが面白くて面白くておれはアークナイツやってます。もちろんキャラクター同士の因縁や重たい感情のやりとりもあってそっちも大好物なんですが、(イェラグの一件のように)地政学まで考えたそれぞれのお国柄みたいなものまで練り込んであるので、そういうの読んで徐々に明かされていくテラという大地の全容を想像するのが好きです。

 たぶんこういう作り込みはトールキンとかハリーポッターが好きな人には結構ハマるんじゃないだろうかという気はしますね。
 アークナイツっていうとよく重たいストーリーとかが取り沙汰されがちで、それはまさにそうなんですけど、そこに生きる人々の風俗とか考え方がものすごく作り込まれているからこそ血の通った人間像が浮かび上がり、辛いだけじゃなくて、世界と戦って明日の命を勝ち取る人間讃歌にしっかりと肉がついて説得力が生まれてくるんですよね。


……で、何の話してたんだっけ…?


 さて、そんな質の良いアークナイツのサウンドトラックなんですが実は公式が配信ページを作っているので全部無料で聞けちゃいます。……ハイパーグリフ、おまえらやっぱゲームじゃなくて音楽作るのが目的なんじゃないの?

 曲がいっぱいありすぎてどれから聴けばいいかわかんないかもしれないのでちょこっとおすすめしておくと、「危機契約」という定期的に開催されるエンドコンテンツイベントのテーマ曲がどれもこれもバカみたいにカッコいいためこのへんが手っ取り早くアークナイツの楽曲の大トロを味わえると思います。
 ちなみに「オフラインでも聴きたいぞ!」という方にはアマゾンでも音源が買えるようになってるので探してみてください(Wikiの楽曲一覧ページをを貼っておくので、MSRで聴いて気になった曲名をここから探してアマゾンに貼っつけて検索すると買いやすいかも)。


 さて、こうして振り返ってみると2022年はなんとなくDJの真似事を始めたりして音楽との関わり方もちょっと変わった年だったなと思います。
 動画編集なんかをやりだすといろいろな動画や画像を「素材としてどうかな」と見る癖なんかがついたりしますけど、やっぱりクリエイトが関わってくると見方が変わるのは音楽も同じでしたね。
 ずっと通勤の時間に車で聴くのが主だったけど、たとえばBPMがいくつで次の曲につなぐにはどうか、キーは相性が良いか、ジャンルは何なんだとか、そういったことを能動的に考えるようになったのはやはり音をいじくり始めてからだなと。

 今回記事で取り上げたアーティストやゲームタイトルは波に乗っている最中でバンバン新曲を出してくれるので、今年はいったいどんな顔を見せてくれるのかとても楽しみです。

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