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#4 M&A各論:案件探査~発掘

今回から、M&Aの各プロセスについてより詳しくご説明します。(M&Aの全体的な流れはこちらでご確認ください。)

M&Aを検討する場合、まずは①案件探査~発掘のプロセスから始まります。

全社戦略、事業戦略が先

言わずもがなですが、そもそも会社として目指すべき方向、あるべき姿があって、それを実現するための方法として、自力で頑張るのか(これをOrganic Growthと呼びます)、M&Aを活用するのか(これをInorganic Growthと呼びます)の選択があります。先に全社戦略や事業戦略を策定した上で、M&Aが必要となった場合に、具体的な案件探査~発掘を進めることとなります。仮にそのような戦略の議論をなおざりにして、M&Aの検討を先行して進めてしまうと、後でそもそも論に戻って迷走することになります。

常に自分たちでM&A候補を持っておく

戦略の議論の結果、M&Aを活用する、となった場合、具体的な対象企業を探さなければなりません。後述するように、外部からM&Aの持ち込み提案があって、それを受けて対象企業のM&Aを考えるというのではなく、常に自分たちでM&A候補リストを持っておくのが理想的です。そのような候補を実際に探す方法としては、以下が一般的です。

① 社内のニーズを探る: この会社をM&Aしたい、というニーズが社内にある場合、それをヒアリングするのは手っ取り早いです。事業部などは常に市場で戦っている競合他社や新規参入プレーヤーの状況を把握しているので、こんな商品が欲しい、こんな会社が欲しいと思っている場合が多いです。また、実際にM&Aした後にその会社の面倒を見るのは事業部になる場合が多いので、事業部が欲しいという会社を買うと買収後がやり易くなります。ただ、事業部はどうしても自分たちが買ってコントロールできるサイズの会社を希望する傾向があり、その事業部の位置づけを変えてしまうような大きな会社は検討すらしません。なので、そのサイズの案件をやるには、本社部門主導でやる必要があります。
② 業界や主要プレーヤーを調べる: 自社にとって新規事業に該当する領域の場合、社内のニーズは存在しないことが多いので、対象領域の業界や主要プレーヤーを把握する必要があります。具体的には、有償の業界レポートを購入する(海外だとFrost&SullivanやFreedoniaなどが有名ですが、他にも業界ごとにたくさんあります)、その業界の展示会に参加する、などは手っ取り早くて有効です。特に、展示会は参加費が比較的安いですし、参加しなくても出展企業一覧をWebで見れる場合も多いので、効率が良いです。
③ 投資銀行と探す: 更に、M&Aの専門家である投資銀行(または証券会社、監査グループのFASやTASなど)と日常的にコミュニケーションをして、案件を探すことも大切です。自社が大手上場企業であったり業界における主要プレーヤーでなければ、投資銀行とはあまり付き合いはないかもしれませんが、業界やプレーヤーの知見、買収可能性の調査能力、ネットワークなどはその道のプロならではです。ただ、自社に刺さる提案が欲しければ、投資銀行に対し、自社としてどのようなM&A候補を探しているか、何をしたいのかを明確に伝える必要があります。当然、投資銀行はM&Aを成就させて成功報酬を得るというビジネスモデルのため、ひやかしでなく本気で検討していることを伝え続けることは勿論のこと、実際にM&Aをする場合のアドバイザーに案件を提案してくれた投資銀行を起用することは必要です。

受け身も悪くない

上述のように、常に自分たちでM&A候補リストを持っておく(そしてその中からM&Aを行う)のが理想的ですが、一方で、外部からM&Aの持ち込み提案があって、それを受けてから対象企業のM&Aを考えるのも悪くないと思います。というのは、M&Aは結婚とよく似ていて、「こんな人と結婚したい!」と思ったところで、それに合致する人というのは(理想が高かったり、要件がspecificであればあるほど)探すのが難しいし、仮に見つかってもその人が結婚してくれるかは不明です。「結婚相手を探しているこんな人がいるんですが、どうですか?」というお見合い的な方法は、相手がそもそもReadyな分、効率が良いし、自分の好みではなかったけど会ってみると良かった相手というのも存在するものです。そのようなお見合いの機会を得る方法として、以下があります。

① 戦略を対外的に発表すること: 全社戦略や事業戦略を対外的に発表することは非常に重要です。〇〇領域を強化する、そのためにM&Aを活用する、といった「M&Aやります宣言」や、逆に〇〇事業の立て直しに向けて様々なオプションを検討すると発表する(海外企業でStrategic Optionを検討するという発表は、これイコール売却する宣言です)ことで、投資銀行などが活発に提案を持ってきてくれる呼び水になります。
② 投資銀行と仲良くすること: 上述のとおりM&Aのプロである投資銀行と日常的にコミュニケーションをしておくことは大切です。
③ Linkedinに登録すること: 今や恋人も結婚相手もマッチングサイトで見つける時代になりつつありますが、それはM&Aでも同様で、マッチングサイトからの飛び込み提案は目に見えて増えています。そのマッチングサイトとして一番良いのはFacebookでもInstagramでもなく、Linkedinです。Linkedinに英語で登録し、所属企業、経営企画部門にいること、更にはM&Aをやっていることなどを書くと、ほっておいても結構な量の提案がきます。

以上、M&Aの最初のプロセスである、①案件探査~発掘 について、お話ししました。次回は、②NDAの締結及びIMの入手 についてお話しします。




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