「それぞれの名」【詩】
鳥たちの羽ばたきの一つひとつに
それぞれの名前があるとしたら
おれたちの一日いちにちに
それぞれの名前のつかないことが
虚しくなってくるだろう
大空の雲の一片いっぺんに
それぞれの物語があるとしたら
おれたちは高い空を見上げるたび
生まれくるこの涙にさえ
新しい名前のつかないことが
悲しくなってくるだろう
鳥のように
たった一つの羽音にも
耳を澄まして生きられたなら
雲のように
小さな季節の風にさえ
あんなに乗ることができたなら
おれたちは自分自身を細分化させ
真新しい名前たちの集合体として
真新しい世界を
生きられるかもしれない
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