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「春に眠る栞」【詩】

買ったままで
読まれなかった本のような
沈黙のみたした夜に
あたらしい本のページをめくれば
春の匂いがした

ひとりぼっちの満月は
この夜を忘れぬように
はさまれた栞

恋する猫たちの歌が
夜もすがら
きこえてくる
読まれることを待つ本の
健気な沈黙をだきしめて
目をとじれば
春が
ひとりぼっちの僕の空白(margin)を
満たしてゆく

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