「カタチノナイイシ」【詩】
午前二時
きみのスマホが高らかに鳴った。
学生時代の友だちから
新婚旅行で行った南の島で
カタチノナイイシを見つけたとのこと。
[カタチノナイイシ]……
永い眠りを揺りおこされても
きみは深夜であることも忘れ
あたたかな笑いを絶やさない。
まるで空の暗幕を破る
隕石のような明るい笑い。
きみはそれだけ笑ったあとで
夢のなかへと戻ってゆく。
そしてカタチノナイイシを
ぼくに黙って見つけにゆくのだろう。
はるか遠くにある、
名前のない海の森まで……
[カタチノナイイシ]。
[ナマエノナイウミ]。
そのときは
どうかぼくのことを
忘れないで。
この暗い
都会の夜の底に眠る
カタチノナイ一人の男を。
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