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「許さない」(歌詩)

灰色の街の片隅
声を嗄らして生き延びる
お得意の上目遣いで
俺の心を濡らしたね
安い店のカウンターで
華奢な指を重ねた
苦い過去も詩(うた)にかえる
酷い仕打ちさ
君を許さない

大げさなネオン街には
虚しすぎるよ 通り雨
始まりと終わりはいつも
深夜0時の三崎町
交わらない放射線の
先にあるロータリーで
口づけして自嘲気味に
サヨナラ告げた
君を許さない

行きつけの店の壁には
汚いヌードの絵がある
その良さが解らないから
「お前はガキだ」と言われる
大人になどなりたくない
でも若さを恥じらう
中途半端な嘘と背伸び
鼻で嘲笑(わら)った
君を許さない

今日もまた陽は昇る
屍だらけのこの街に
今日もまた幕が開く
屍の集う場末の劇場
今日もまた生きて行く
命を削って詮無いね
今日もまだ生きている
しがらみ、ため息、やるせない想い
……嗚呼


若すぎる肌に溺れて
躰ひとつで恋をした夜なのに
夢の中では
違う誰かに抱かれてた
別れ際に下を向いて
独り言ちた言葉は
白い息に溶けて消えた
意気地なしだよ
君を許さない

悪戯に酔ったフリして
口説いた女(ひと)に翻弄(あそ)ばれて
“好きだよ”と慣れた台詞も
まんざら嘘じゃないのにさ
セピア色の映画を観て
流した涙のわけ
訊ねること出来ずじまい
意気地なしだよ
君は帰らない

今日もまた陽は昇る
屍だらけのこの街に
今日もまた幕が開く
屍の集う場末の劇場
今日もまた生きて行く
命を削って詮無いね
今日もまた生きている
しがらみ、ため息、やるせない想い
……嗚呼


灰色の街の片隅
声を嗄らして生き延びる
お得意の上目遣いも
今じゃ淡い夢のようさ
安い店のカウンターで
あの日ふいに出逢った
苦い過去も忘れられて
終わるのでしょう
君を許さない

君を許さない

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