見出し画像

「雨傘」【詩】

少女はきっと
少年の
濡れたTシャツの
胸で震える子犬の絵を
あわれんだだけ
少女がなにも言わず
差しだした雨傘に
少年は頬を赤く染め
ありがとうと言った
そして傘を受け取ろうとする、
泥まみれの右の手を
Tシャツの胸でぬぐう
子犬の顔がぐにゃりとゆがむ
少女はいまにも
泣きだしそうだった

(秋雨の午後の小さな詩……)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?