「あめざいくの傘」【詩】

大嵐の日のために
あめざいくの傘をつくった
それはきみにとっての
透明なよろこびだ
甘美なおもいでだ

あめざいくの傘はきみのうなじに
まるで恋人のような表情で
もたれれかかり
甘えはじめる
それは大嵐のなかの
まるでうつくしい
無理心中だ

透明であるのがいい
雲のゆくえに詳しくなれるから
硬質であるのがいい
空の煙をかんじられるから

きみの無理心中は
きっと成功するだろう
きみの雪のようなうなじには
恥じらいと恍惚が
血のように滲むだろう

きたるべき
大嵐の日
まるで取り憑りつかれたように
きみは
あめざいくの傘をさす
あのぬるぬるした柄のさきが
きみの無骨な両手にからみつく
そのとき狂気のような大風が
きみと傘とを切り裂いた
あめざいくの傘はたちまち
あわれな骸骨となり
きみの右肩に寄りかかる……

きみの満足げな目には
ひとすじの涙が光った

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