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「歌の在り処」【詩】

ひと夏ぶんの酷暑の染みついた
スチールフェンスに歌がある
蝉の抜け殻かと思ったら
大きな洗濯バサミだったよ
人生とはそういうものかもしれません

目を凝らせば凝らすほど
ぼやけてゆくものに ぼくは
心を奪われていた
悲しみはどこにでも転がっているから
悲しみを歌うことの方がたやすい

きみの胸に咲く喜びを
触れることのできない僕には なおさら
歌を歌うのがむつかしい
ありふれた人生の一瞬を見つめる
ときに嵐に打たれながらも
見つめつづける この世界に
歌はいつも小さなもののなかにあるから

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