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音楽ライブ配信におけるコンプライアンス遵守

◆まえがき

この度の休業要請にて急激に時間ができました、ライブハウスの人です。
報道等でも取り上げられているように、新型コロナウイルスにより恐らく全てのミュージシャン・ライブハウスが窮地に立たされています。
私の働くライブハウス・荻窪ルースターも2020年5月現在、ご多分に漏れず通常営業はできないまま。
とは言えどげんとせんといかん!と思いまして、配信ライブを検討することに。

立ちはだかる壁は主にコンプライアンス面と技術面なのですが、同僚と手分けをして私は前者を担当することになりました。
既にかなり多くの方々が配信ライブをされておりますが、やっと大枠が見えてきたところで、とっ散らかっている情報をまとめてみたいと思います。
(技術面については他にたくさんの方が発信されておりますので割愛させていただきます。ご容赦くださいm(_ _)m)

なお、恐らく同業者全員が手探りで活路を見出そうとしている中で、特定の人物やお店を批判したり陥れる意図は一切ございません。あれもダメ・これもダメと言いたいわけではなく、あくまでも「現在のルールだとこうみたい。もしペナルティ課せられたらどうしよう…?」という、石橋を叩きまくって渡る私のまとめです。
また無資格者であるためご相談に乗ることはできかねます。その点もご容赦くださいm(_ _)m

それでは本題に入っていきます。

◆前提

店で配信するには?というのが起点ですので、ここでは法人有料配信する場合をメインに解説していきます。(投げ銭についてはまだ調査中で、グレーな部分が多いので一旦考えないものとします。)
また機材トラブルなどがあった場合に円滑なお客様対応ができるよう、アーカイブを残すことを前提としています。
上記を踏まえると、著作権/配信サービスの利用規約に抵触していないか の2本柱が重要になりますので項目ごとに解説していきます。

◆著作権について

著作権管理団体は複数ありますが、ひとまずはJASRACの管理楽曲についてどのような扱いになるか確かめていきます。
主な決め手は下記の2点です。詳しく見ていきましょう。

1.JASRACと利用許諾契約を締結しているサービスでの配信
こちらに載っているサービスは、配信者の肩代わりをして著作権料をJASRACに支払ってくれています。
配信者は一定の範囲内に限り、利用料や著作権料を払う必要はありません。
一定の範囲内、というのは以下2に続きます。

2.配信者が個人か法人か/曲目が内国曲(邦楽)か外国曲(洋楽)か
配信者と配信曲の組み合わせにより手続きの要・不要が変わってきます。
JASRACがフローチャートを載せてくれています。

結構何度も問合せしましたが、本っ当にこのチャートの通り。

すべて「はい」で進めば手続きなしでのアップロードが可能ですが、法人で外国曲を扱う場合などはビデオグラム録音の手続きが必要になります。

ビデオグラム録音の手続きをするには、

J-WIDで楽曲を検索

誰が作曲/作詞/編曲などに関わっているか
どこの会社が権利を持っているかなどを確認

権利を持っている会社に金額を問合せて支払い
(支払いはJASRAC経由の場合もあり)

という流れで進めます。
(1曲に対して、複数の会社が権利を持っていることもあるようです。)

………スーパー面倒臭い(笑)
それに手続きもある程度かかると思われますので、遅くとも1ヶ月前くらいにはライブの曲目を決めないといけないのではないでしょうか。ジャズ界隈などは演奏当日に曲目を決めるなんてことも多々ありますから、現実的ではないでしょう。
また、そもそも法人の有料配信は商用利用に当たるのでは?とも思い確認もしましたが、この表の通り進んで「アップロードが可能です。」に辿りつけば手続きせず配信できるとの回答を得ています。
もしどうしても気になる点があればJASRACに問合せを。
何度か問合せましたが丁寧に答えてくれます。
オリジナル最強説です。

◆配信サービスの利用規約を守れるか

上記著作権のことを考慮すると、配信サービスはJASRACと利用許諾契約を締結している中から選ばざるを得ないと言っても過言ではありません。
一通り目を通したのですがアニメやゲームに特化しているものが多く、音楽配信に向いているであろうサービスを3つ厳選してみました。

1.YouTube
「YouTubeで配信してそのURLを他のチケットサイトとかで売ればいいじゃん〜」と思われた方もいらっしゃるでしょう。
ですがyoutube、許可を得ずに商用利用することは禁止されているんです。
「じゃあ、販売は他のSNSにリンクを載せたりチケット販売サイトを使ってYouTubeのURLを個別に送れば良いのでは…?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんがそれもNG。

YouTubeの利用規約にも禁止事項として掲載されています。

“9.本サービスを個人的、非営利的な用途以外でコンテンツを視聴するために利用すること(たとえば、不特定または多数の人のために、本サービスの動画を上映したり、音楽をストリーミングしたりすることはできません)。”
引用:利用規約 - YouTube|2019年12月10日 発効

別サイトを使って迂回しようがダメなんですね〜。
さらに、こんな記載も。

“動画は販売サイトやクラウドファンディング サイトにリンクできます。ただし、リンクできるのは承認済みのサイトに限られるだけでなく、YouTube パートナー プログラムに参加している必要があります。”
引用:販売者サイトとクラウドファンディング サイト - YouTube ヘルプ

収益化の許可を得るには難問が立ちはだかります…!


2.Facebook
FacebookもYouTube同様、収益化には適切なライセンスを取得しなければいけません。

特に、営利目的での使用または私的利用を超えた使用は、利用者が適切なライセンスを取得している場合を除き、禁止されます。
引用:Facebook|音楽ガイドライン


3.ツイキャス(プレミア配信)
ツイキャス内にはプレミア配信という有料配信機能があり、配信自体の販売が許可されていますツイキャス内で精算も完了するので楽&問題ありません。
ツイキャスプレミアの出品者向けヘルプによると3営業日以内に審査が完了するとのこと。

ルースターは法人登録しまして、休業日を挟み5日ほどで審査が完了しました。
お客様の操作性なんかはこれから使ってみていただいて、、、というところなのですが、ルースターは一旦ここを使ってみることにしております。

◆まとめ

上記を踏まえ、ルースターでの配信は

ツイキャスを使い
(著作権:JASRACと利用許諾契約を締結しているのでクリア。)
(利用規約:ツイキャスプレミアでチケット販売可能。)
内国曲を配信
(著作権:JASRACのフローチャートによると手続きなしでクリア。)

ということに相成りました。ひとまずですよ、ひとまず。

では外国曲をやるには?と考えると、アーカイブを残さなければOKですが万が一の時の対応が不安なので消極的。アーカイブ残して個人でやればOK…でもありますが、店から積極的に提案はできないなぁ…というのが現状です。

そんなこんなで漕ぎつけた配信ライブ第一弾。近日開催です!

■5/21(木) ツイキャスプレミア無観客ライブ配信
出演 マツモニカ(hrm) 中島香里(vib) 山野友佳子(pf)
クロマチックハーモニカ、ヴィブラフォン、そしてピアノ。透明感あふれる美しいジャズの音色に包まれてみませんか?
無観客の配信ライブです。
チケットを購入すると生放送でご覧いただけます。
19:00からおよそ1時間 MC中は換気いたします。
一週間はアーカイブで視聴可能です。
チケット:1500円
ご購入はこちらから。

2020_05_21_マツモニカツイキャス配信


またこの度の調査において各公式にあたった他、同業の方にもコンタクトをとらせていただきました。その節はありがとうございました!

ベーシスト程嶋日奈子さんのnote
 実行されたことをリアルタイムに近い形で発信していっておられます。

池袋absoluteblueさんのページ
 ツイキャスを導入されたとのことで、参考にさせていただきました。
 スケジュールからツイキャスの各ライブに飛べます。


いやはや、長くなってしまいました。
今はとにかく全員手探りの時期。そしてグレーなものもたくさん。
ちゃんと公式に問合わせるなどして、なんなら今後、その動きが規約改定等に繋がれば配信も円滑になるのでは?という思いにふけるのでした。

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