見出し画像

【映画感想】十二人の怒れる男

Amazon Prime Videoでたまたま名作映画『十二人の怒れる男』を見ました。

■あらすじ
父親殺しの罪に問われた少年の裁判で、陪審員が評決に達するまで一室で議論する様子を描く。
法廷に提出された証拠や証言は被告人である少年に圧倒的に不利なものであり、陪審員の大半は少年の有罪を確信していた。全陪審員一致で有罪になると思われたところ、ただ一人、陪審員8番だけが少年の無罪を主張する。彼は他の陪審員たちに、固定観念に囚われずに証拠の疑わしい点を一つ一つ再検証することを要求する。
陪審員8番による疑問の喚起と熱意によって、当初は少年の有罪を信じきっていた陪審員たちの心にも徐々に変化が訪れる。

ウィキペディアから引用

名作映画ということは前々から知っていましたし、三谷幸喜の傑作舞台『12人の優しい日本人』のオマージュかつパロディ元であることは知っていました。こちらはすでに映画で視聴済みです。

この作品の一番のテーマは「推定無罪」です。

ある少年が父親殺しの罪に問われて、有罪の場合は死刑を宣告されます。
彼を死刑にするためには、十二人の陪審員が全員一致で「有罪」と判断しなければいけません。

状況証拠や証言は、どう見ても少年が犯人だとしか思えないわけですが、その中で陪審員8番がただひとり「無罪」と言い出して、他の11人と対決していくと言う物語です。

■事件の事実そのものは明かされない

この物語で事件の事実そのものは明かされません。
少年が本当に犯人なのか、あるいは罪を着せられたのかはわかりません。

ただ、この物語の重要なポイントは「本当に少年が殺人を犯したと陪審員が確信できるかどうか」ということです。

つまり、「死刑という人の命を終わらせる決断をする以上は、この人物が罪を犯したという誰もが納得できる事実を立証しなければいけない」わけです。「そこに疑問の余地が残るようであれば、有罪と断定することはできない」ということを、この物語は主張しています。

アメリカの法律では、「一度無罪になった人物を再び同じ罪で問うことができない」となっているため、少年が本当に殺人を犯したのならそれはそれで大変な問題となってしまいます。

ただ、そこはこの物語の本筋ではありません。

■怒れる男たちの議論

タイトルにもなっている「怒れる男」というのは、この有罪か無罪かで白熱した議論によって感情的になっている陪審員たちのことです。

ただ、それも彼らそれぞれ出身地や家庭環境など様々な問題やトラブルを持っています(それとなくほのめかされます)。それゆえに、少年の犯罪のことを公平かつ客観的に見ることができなくもなっています。

思い込みや先入観で少年が犯人だと決めつけてしまっている陪審員もいます。

だから、事件の証拠や証言が疑わしいという事実が出てきても、それを受け入れることができません。

それをこの物語では問題にしてもいるのです。

つまり、「有罪か無罪かを見定めるためには、個人的な感情を一切無視して、客観的な事実のみで判断しなければいけない」と主張しています。

■疑わしきは罰せず

本作はミステリーではありません。
後付けの事実がどんどん出てくるので。
あくまでも法廷劇のようなものです。

ただ、土台となっている「推定無罪」「疑わしきは罰せず」は、現在の日本の法律でも理念としてあるものなので、現代日本でも通用するテーマとなっています。

もしかしたら、物語の陪審員たちは「殺人犯を無罪にしてしまう」という最悪の結果をしてしまったかもしれません。けれども、同時に彼らを納得させるだけの確たる事実や証拠を検察側が提示できなかった責任でもあります。

そうしたことは、今日の日本の裁判でもたびたび起きています。

死刑判決を下した囚人が何十年かして再審の結果、無罪の証拠が出てくるとか、裁判の中で検察側が明確な証拠を出せずに、被告が無罪となるとか。

だから、70年前の映画ではありますが、現代日本でも通じるテーマのために、楽しく見ることができました。

■吹き替え版がオススメ

Amazon Prime Videoでは吹き替え版があって、そちらは音声もクリアなので、白黒映画であることをのぞけば、普通に楽しむことができました。

(最近オッペンハイマーを見たこともあり)時代背景の古くささも感じませんでしたし、とても楽しかったです。

■名作は色あせない

若い頃は白黒映画とか、自分が生まれるよりも前の映画とか古くさく感じて苦手という意識を持っていましたが、大人になってからあらためて古い映画を見ると、やっぱりめちゃくちゃ面白いですね。

ローマの休日、ゴッドファーザー、十二人の怒れる男

どれもめちゃくちゃ面白かったです。
やっぱり食べず嫌いにならずに、名作と呼ばれる作品は見なくちゃダメだなと思いました。

もちろん今の時代の方がより映像や脚本が洗練されていて、本作も「ん?」と思う箇所もなくはなかったですが、それでも見終えた後の満足感は現代映画に負けず劣らずというところですね。

いやー、面白かった。

最後までご覧いただきましてありがとうございました。

■ピナクルお仕事募集&シナリオライター募集

シナリオスタジオ・ピナクルでは、ゲームシナリオ・ノベライズ・ASMR脚本・朗読劇脚本・ゲーム演出など各種脚本や演出などに対応しておりますので、お気軽にご連絡とご相談くださいませ。
これまでは個人では承ることができなかった案件や大型案件もチーム制作となったことで、より幅広く対応できるようになりました。

また、シナリオスタジオ・ピナクルでは、シナリオライターを募集しております。現在人手が足りておりませんので、我こそはと思うライターさんはピナクルのHPの応募フォームからぜひ応募してください。

今後とも何卒よろしくお願いいたします。

■秋月大河個人のお仕事も募集中

現在、秋月大河個人のお仕事も募集しております。
詳しくは以下のサイトをご覧くださいませ。

この記事が参加している募集

#映画感想文

67,900件

よろしければサポートをお願いします。 サポート費は書籍代や資料代に使わせていただいて、より有意義な内容の記事やシナリオを書けるように努めてまいります。