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〈ライアーのおてくにっく〉2. 天と繋がる

パリ・オペラ座・ガルニエ、
その屋根のてっぺんには、
音楽の神アポロンが立っている。
両手にライアーを持ち、
天に掲げている。

ラッパが勝利を意味するのであれば、
ライアーは、
「平安」「心が鎮まること」を意味するだろう。

彼の勇姿は、心の平安の証しを
天の神に示しているようである。

このライアーは、
オペラ座・ガルニエのシンボルでもある。

17世紀、太陽王ルイ14世が、
クラシック・バレエの基礎を創り、
職業としての地位を確立、定着させた。
そしてリュリが中心となり、
フランス・バロックは全盛期を迎えた。

ガルニエの周りを囲む、
黒く塗られた鉄製のフェンスには、
金のライアーが均等に施され、
一層光り輝いて見える。

ライアーという楽器には、
その平安を広く行き渡らせるという、
大切な使命が隠されている。

もし本当にライアーが平安をもたらす、
療法的な楽器だとすれば、
その音色は、どんなだったのだろう?

ルドルフ・シュタイナーの研究グループ、
プラハト氏とゲルトナー氏たちは、
まさにそこに着眼点を置いた。

宗教によって消滅してしまった楽器、
ライアーを復活させることにより、
その不思議な力を持つ、
効果的な「平安」や「癒し」を
もたらす楽器として、
彼らは「音色」と「響き」の美しさを
追求したのだと私は考えている。

何度もライアーを作り、壊し、また作り、
長い試行錯誤の末、
1926年、とうとう現代ライアーが生まれる。

戦争が続く、不穏な時代である。

研究グループの作り上げた、
ライアーの特長は、
弦とその形にあると私は考える。

弦は、スチールを使っており、
残音が非常に長い。
特に低音は頭がモワッとするほど長い。

人の指で、弦を触ることにより、
音の命を生み、育て、死すことをおこなう。 

音が生まれから、消えていくまで、
その音の一生の最後まで見届けるのである。
優しく、暖かく、そして余韻を感じながら。。

音色の美しさの中で、
人生の喜びと残酷さが表裏一体となり、
まるで生きとし生けるものの、
逃れることができない、
宿命の縮図のようである。

楽器の形は、
全体的に丸みがあるものや
多面的な面を持つ形をしている。
箱型のものや開放的な一枚板の楽器もある。

いずれにしても、
バイオリンやピアノやハープ、笛のように、
天を指すような、
ゴシック的な様相はライアーにはない。

私はライアーを初めたばかりの時、
その丸っこい形のせいで、
音が遠くに飛ばず、
楽器の周りをクルクル回ってしまうため、
雑多な羅列音になってしまった。
音の整理に苦労し、時間がかかった。

ライアーは、羽の形や彫刻による、
天に通ずるような様相や表現を
持ち合わせていず、
自分にとって何か物足りなかった。

クルクル回ってしまう音たち。

外部に向かっていく方法を模索しても、
見つからず、なかなか難しかった。

しかし私は少しずつ、
その理由が分かるようになった、
と共に、
療法に非常に向いていると
感じるようになった。

この丸っこい楽器に対して、
私は楽器に頼るのではなく、
自らが、腕や指を使って、
天に通じる道を形づくり、
創造していくことができるのだと知った。

楽器の形、様相、表現を借りないということは、
自らの身体がアンテナになるのだ。
この空間に音色を描き、
創造していく3Dの世界を創っていく。

そしてその創造力は、
自分が自分を癒す力に通じるのである。

ライアーという楽器の存在は、
生きとし生けるものが、
何度も生まれ変わり回っていく、
それを表現しているのだと私は感じている。

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