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抵当権が付いていても大丈夫?

自分が所有している空き家について、市役所から連絡が来ました。
「隣近所からクレームが寄せられているので、何とかしてください」

自分としても、何とかしたいんです。
すぐにでも解体したいんです。
でも、できない…。
なぜって?
なぜなら、抵当権が付いているからです。

空き家でお困りの方の中には、この問題のために先に進むことができないという方もおられるかもしれません。

私たちは、これについても解決してきました。

卵が先か、鶏が先か?

そもそもの始まりは、懇意にしてくださっている市役所の空き家担当者からの相談からでした。

その物件は、近所の中学生や高校生にお化け屋敷と評判になっており、建物の中へ侵入することが多発していました。

そこでタバコを吸ったりすることもあるようで、近隣の方々や自治会の役員さんも火事が起きると困ると不安になっていました。
それで、市役所へ相談がいき、私たちに連絡がきたという訳です。

問題の空き家です

市役所は何とか所有者と連絡を取ることができました。
状況を聞いてみると、所有者は隣の県に住んでおり、遠方のためにその空き家を管理することができない状態でした。

でも、一番の問題は、その空き家の住宅ローン が残っていることでした。
所有者は、自分の物件が近所に迷惑をかけていることは、すでに承知済みでした。
それで、ローン会社に解体することを申し出たのですが、ローン会社からは「返済しなければそれは認められない」と言われ、すっかり解決のためのやる気を失ってしまっていました。

皆さんなら、どうされますか?
・返済しなければ解体できない
・解体しなければ市役所から文句を言われ、近隣に損害を与えかねない

まさに「卵が先か、鶏が先か?」の状態です。


こんな解決方法が?

まだローンを完済していないのに、抵当の目的物がなくなってしまったら、ローン会社だって困ると考えるのが普通です。

でも、本当にそうでしょうか?
問題は、きちんとローンを返済してくれるかということであり、抵当権設定者が返済に困る状況になることをローン会社も望んでいないはずです。

その点を踏まえて、ローン会社に抵当権抹消を認めていただくべく、市役所の協力を得ながら、当団体が所有者の交渉のサポートを行うことになりました。

まずは、所有者に対して、空き家の近隣住民の現在の不安な気持ち、何かトラブルが起きたら、今以上に支払いや慰謝料などの問題が起こりうることを説明しました。
解体費用の持ち出しのみで当面の問題はクリア出来ることを根気良く説明した結果、ご納得いただき、所有者は解体に踏み切ることを決意されました。

次は所有者からローン会社に、今後の返済計画を提出していただくようにしました。
ここでよかったのが、所有者がこれまで返済を滞りなく行ってきた点です。
経済的な信頼関係が土台にありましたので、ローン会社も提出を受け入れてくれました。

所有者に訪問の同行を求められ、ローン会社の担当者にお会いした際、私たちの団体の説明とこれまでの市役所との関係性を話しました。
市役所が何年も近隣住民からの苦情に困っていることもお伝えしました。

ローン会社も、自分たちが抵当権を設定している家が、近所や市役所に迷惑をかけていることを前向きに考慮してくださいました。

その結果、抵当権抹消を承諾してくださり、解体の許可も出してくださいました。

無事、解体されました!


教訓

この案件で私たちが学べたことは、誠実に腹を割って話し合うことの価値です。(話し合ったのは当事者たちでしたが)
また、相対するのではなく、同じ方向性~お互いにとって利点となること~を見ている人と見なすということでした。

相手は敵でも何でもなく、最終的には同じことを目指しているだけです。
これは、空き家問題解決のために市役所や空き家の近隣住民の方々との協力を仰ぐのに、とても役立つ経験でした。