駅近なのに……?
前回は、地方自治体とのコラボにより、エリアを絞って空き家所有者に働きかけるプロジェクトがスタートしたことをお伝えしました。
今回は、その中の1案件をご紹介します。
駅近なのに、不動産屋さんから見放され、ずっと空き家にせざるを得なかった物件の話です。
なぜ見放されたのか?
船橋市の南北を「新京成線」という私鉄が走っています。
終点である津田沼駅に近い「薬園台駅」から徒歩5分圏内にその物件がありました。
40坪以上の広さの土地にその空き家がありました。
普通に考えれば,不動産屋さんが放っておくはずがありません。
ではなぜ‥??
そこは「再建築不可」だったからです。
いわゆる「旗竿地」で、前面道路が4mを満たしませんでした。
厳密に言うと,隣の家の建物の一部が道路に被っていて,そこを削らないと4mを確保できないというものでした。
当団体のメンバーが測量し,どこまで被っているかを図面に起こしてみたのが上記の図面です。
左上の建物が、今回対象となっている空き家です。
その手前の2軒の所有者に「被っている部分を削らせてくれ」と頼まなければ、物事は前に進みませんでした。
上記の写真でお分かりいただけるでしょうか、空き家のすぐ隣のお宅が被っている部分というのは、茶色のトタン板で覆われている「物置」でした。
ですから、空き家所有者が費用を負担してその物置を解体、あるいはサイズダウンしたものを作り直せば、活用に向けて前進できるかもしれないということが分かりました。(とはいえ、そのまたお隣の家の2F部分のわずかな出っ張りも削らせてもらうという難問もあったのですが…)
それで、図面を持ってそのお隣の方に事情を説明しに行きました。
お隣の方も空き家の行く末を心配しておられるでしょうから、きっと話を聞いてくださると期待しながらです。
実際訪問してみると,その方が「売ってくださるのであれば買いたい」と言ってくださり,即売却となりました。
結局、その空き家は解体され、駐車場として再活用されることになりました。
相談者目線が大切
不思議なもので,所有者さんとお隣さんは全く知らない仲ではありませんでした。
なぜなら、所有者さんは空き家の管理をしておられたので、様子を見に来た際にどちらかが声をかければ話はとんとん拍子に進んだのかもしれません。
登記情報も正確でしたから、居場所が分からない人でもありませんでした。
でも,その「一言」がないばかりに,空き家はボロボロになり,所有者さんは業者に依頼して、お金をかけて養生や補修をしていました。
(冒頭の写真で、新しくトタン板を貼っている部分がそうです)
この件から,空き家の所有者とそれを欲しいと思っている人とのマッチングのお手伝いをしてあげる,というのも私たちの役割の1つなのだな,と感じました。
不動産業者さん目線で考えれば,駅近+そこそこの面積だと,解体して新築を建てて,というプランが目がいってしまい,お隣やご近所の方に声をかけるというビジネスチャンスをみすみす見逃していた,ということにもなります。
こんな感じで、空き家解決のための興味深いエピソードをご案内していきます。
次回もお楽しみに!